
葭切のさからひ鳴ける驟雨かな・・・・・・・・・・・・渡辺水巴
葭切はウグイス科の小鳥でオオヨシキリとコヨシキリがいるが、普通、オオヨシキリの方を言う。
5月に南方から飛来し、主に葭原などの直立する高い草に棲む。
「行々子」とも書くが、これはギョギョシ、ギョッ、ギョッという鳴声から来るものである。
葭の茎に横止まりする。茎を裂いて髄に居る虫を食べるために、この名前がついたという。
初夏から秋まで日本に居て、冬は東南アジアに渡ってゆく。
掲出の写真では昨年の古い葦の茎に止まっているので姿がはっきり見えているが、子育て、営巣の頃は葉が茂って彼らの声はすれども、姿は見えないのが普通である。
新緑の葭に止まって啼く時の写真を出しておく。

念のために書いておくと「葦」と「葭」とは同じ草で呼び方が違うだけである。
古来、俳句には多く詠まれてきたので、それを引いて終わる。
能なしの眠ぶたし我を行々子・・・・・・・・松尾芭蕉
行々子大河はしんと流れけり・・・・・・・・小林一茶
行々子どこが葛西の行き留まり・・・・・・・・小林一茶
トロッコの過ぎて静やよし雀・・・・・・・・高浜虚子
葭切のをちの鋭(と)声や朝ぐもり・・・・・・・・水原秋桜子
揚げ泥の香もふるさとよ行々子・・・・・・・・・木下夕爾
月やさし葭切葭に寝しづまり・・・・・・・・松本たかし
葭雀二人にされてゐたりけり・・・・・・・・石田波郷
葭切や蔵書のみなる教師の死・・・・・・・・大野林火
葭切も眠れぬ声か月明し・・・・・・・・相生垣瓜人
葭切の鳴き曇らしてゆく空よ・・・・・・・・波多野爽波
葭切や未来永劫ここは沼・・・・・・・・三橋鷹女
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