
踏まれながら花咲かせたり大葉子(おほばこ)も
やることはやつてゐるではないか・・・・・・・・・・・・・・・・安立スハル
安立さんは私を短歌の道に引き入れてくれた恩人である。宮柊二創立の有力な短歌結社「コスモス」の幹部であられた。
この歌のように歌の作り方も独自の詠み方をする人で自在な心情の持ち主であったが、先年亡くなられた。
オオバコあるいはオンバコともいうが、この歌のように踏まれるような路傍に生える雑草で、花の終わったあとの茎を双方からからませて草相撲をしたものだった。

写真②はオオハゴの穂と花である。
私の第四歌集『嬬恋』(角川書店)に
おんばこの穂を引抜きて草角力(すまふ)したるもむかし夕露しとど・・・・・・・・・・・・・・・木村草弥
という歌があるが、子供の頃は、こうして遊んだものであった。昔の遊びは素朴で単純なものであった。
この草は「車前草」とも書かれる。この命名の由来は往来の踏まれるような所にもかまわず生える強い草であるからだろう。
この草を詠んだ句は多くはないが、それを引いて終わりたい。
車前草に蹄痕ふかし五稜郭・・・・・・・・富安風生
おほばこの花の影あり草の上・・・・・・・・星野立子
湖畔にて車前草の露滂沱たり・・・・・・・・富安風生
近ぢかと路よけあふや車前草鳴る・・・・・・・中村草田男
話しつつおほばこの葉をふんでゆく・・・・・・・・星野立子
車前草に夕つゆ早き森を出し・・・・・・・・室生とみ子
踏まれつつ車前草花を了りけり・・・・・・・・勝又一透
車前草の葉裏くぐりに蛇去りぬ・・・・・・・・青木可笑
車前草の花かかげたり深轍・・・・・・・・高木良多
車前草の花引抜きて草角力・・・・・・・・大崎幸虹
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