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K-SOHYA POEM BLOG
私のBLOGは詩歌句の「短詩形」文芸に特化して編集している。 今はもう無くなったが、朝日新聞の大岡信「折々のうた」などの体裁を参考にして少し長めの記事を書いている。自作も多めに採り上げている。
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俳句雑誌 『クプラス』 創刊号を読む・・・・・・・・・・・・・・・木村草弥
クプラス

──新・読書ノート──

     俳句雑誌 『クプラス』 創刊号を読む・・・・・・・・・・・・・・・木村草弥
               
「週刊俳句」に、この雑誌の広告が出ていたので取り寄せてみた。
編集同人は、発行人・高山れおな、山田耕司、上田信治、佐藤文香 であり、同人としては他に 関悦史杉山久子、依光陽子、阪西敦子、古脇語、谷雄介、野口る理、生駒大祐、福田若之 の13名が名を連ねている。

雑誌名の「クプラス」とは「句」プラス ということであろう。俳句運動に何がしかの「プラス」になれば、との、いささか高邁な自負があるように、私には映る。

巻頭に、下記のようなゴチック体の「創刊あいさつ」がある。 ↓

     俳句はもちろん最初から伝統だった。それは古い和歌と
     さらに古い澳詩が培った風雅の夢を季語という器に入れて
     現代まで運んできた鬼っこなのだ。

     俳句は始まりの日も今日も前衛だ。それは飛躍と出会いの
     驚異によって自己や因果律を離れ,多義的でありながら
     統合されて、実在の中に他界を開く。

     徘句はすでに書かれつくしたと言う人がいる。
     俳句はまだ一句も書かれていないと言う人もいる。
     たいていは、そのどちらにも思いいたさずに、一句は日日
     作られつづけ、消えつづける。
     そこに俳句があるから俳句が作られる、その停滞。

     「クプラス」が望むと二ろはただ俳句だけだが、さしあたり
     不足しているもろもろを、俳句のために差し出せれぱ
     と思う。──夢、歴史、ジャーナリズム、遊び。

     俳句を遊ぶこと、俳句に遊ばれること、その多様と熱量の
     向こう岸へこの船で渡る。
     俳句は、現在ここを通過中。


堂々たる「揚言」である。さしあたりは半年刊ということだが、季刊とかが望まれるが、果たして、どうなるか。

第一特集として「いい俳句。」として俳壇にアンケートを出している。何人に出して、返答がいくつか、の記載はない。

第二特集として「番矢と櫂」──これは言うまでもなく、夏石番矢長谷川櫂 のことである。
現在までにWikipediaに項目として出ているものはリンクにしておいたので、参照されたい。文中で赤字になっている部分がリンクになっている。
発行人・高山れおな は「芸術新潮」の編集者ということもあり、雑誌の編集には慣れているらしい。

生駒大祐が「映像を見つめる」─夏石番矢の非至高性 という文章の中で引いた句だが

     千年の留守に瀑布を掛けておく

     智慧桜黄金諸根轟轟悦与

     前立腺ニ日暮ヲ培ヒ永田耕衣ヲ宣揚セリ

     手術中「こんな荒れた目」と言われ

     老母を見舞えば地震後の気力湧く・・・・・・・・・・・夏石番矢

のように、次第にnaturalと思える文体に変化しているという。

一方、長谷川櫂は、福田若之が「楽園世界の構築原理」─長谷川櫂の一貫性 で引いているが

     春の水とは濡れてゐるみづのこと

     花海芋水の明りの中に咲く

     俳諧の国の守りや福笑・・・・・・・・・・・長谷川櫂

のように伝統的な俳句の再現を目指しているのは確かだろう。


私は読売新聞を定期購読しているので、長谷川櫂の「四季」という写真・文による詩歌の欄は毎日見ている。
かつて朝日新聞に大岡信「折々のうた」が連載されていたが、私の、このブログも彼らのスタイルにあやかって編集しているものだと、改めて言っておきたい。

言うまでもなく、俳句には「季語」というものがある。
もっとも「無季」の作品もあることはあるが、この雑誌は発行が三月ということでもあり、掲載される作品は秋、初冬のものが多いので、このブログに引くには季節はずれになるので、
多くは引けないので了承されたい。

巻頭の「特別作品50句」として依光陽子の「柱石」の作品が載っている。
因みに、この人は、1964年生まれ。「クンツァイト」「屋根」所属。1998年第44回角川俳句賞受賞。共著『現代俳句最前線』『俳コレ』という経歴をお持ちである。

    一葉づつ鰡の跳びたる光かな

    赤潮が来た蛸壺を伏せて置け・・・・・・・・・・依光陽子

の二句だけを引いておく。

この雑誌については、まだまだ紹介したいが、スキャナするのも結構手間がかかり、文字化けするので、その修正も大変である。
ここに「目次」を列挙しておく。

創刊あいさつ
特別作品50句・柱石     依光陽子
第一特集・いい俳句
  龍太はなぜ、それを言ってくれないのか    上田信治
  アンケート  「いい俳句」とはなにか
  座談会 「いい俳句」を馬鹿まじめに考える
  「いい俳句」とは俳句の差異化である私だ   関悦史
第二特集・番矢と櫂
  流産した「番矢と櫂の時代」をやっかいな鏡とする   山田耕司
  楽園世界の構築原理─長谷川櫂の一貫性   福田若之
  映像を見つめる─夏石番矢の非至高性   生駒大祐
座談会 消費の正統、キーワードの王国─彼らの俳句はどう読まれ得るか
自動富士と右目富士   高山れおな
作品Ⅰ 悲しくない大蛇でもない口が苦い   福田若之
    春の昼   杉山久子
    ひらひら   阪西敦子
    梨   関悦史
    あなの数   山田耕司
作品Ⅱ あたらしい音楽をおしえて   佐藤文香
    渚/煙   生駒大佑
    父の爆発   谷雄介
    ロンドン秋天   高山れおな
    野兎   上田信治
アキヤマ香さんに聞く  「ぼくらの17─ON!」の作り方
連載
往復書簡 伝書鳩第一回  杉山久子☓佐藤文香
Furuwaki Katariの俳句断章 Ⅰ  後藤比奈夫句集「夕映日記」ノート
インタヴュー ハイジ、ハイジに会いに行く 第一回 鈴木明 「鈴木明 五十句」
謎のおまけコーナー うーふー Ⅰ 野口る理☓関悦史
メンバー自己紹介
編集後記

    シウマイに透けるももいろ春隣

    にはとりもにはとり肉も春の昼・・・・・・・・・・杉山久子「春の昼」より

    牡蠣買うて愛なども告げられてゐる

    仲春や座れば隣席が近し
  
    菫すみれいつも走つてゐるわたし

    春風の真つ赤な嘘として立てり・・・・・・・・・・阪西敦子「ひらひら」より

    セクシーに投票箱は冷えてゐる

    一隅が火事の家にてテレビかな・・・・・・・・・・関悦史「梨」より

    うぐひすやボタンの数にあなの数

    陽炎うて男の臍を見せあうて

    黄身すする許可をたまはり卒業す

    つちふるやそのをちこちに宗兄弟

    ぼた餅のひとつは雀といふことで・・・・・・・・・山田耕司「あなの数」より

「鈴木明 五十句」より ↓
     
     天皇のいちにちが過ぎ八月果つ

     眼球体操たまたまキャベツ畑にて

     末は闇屋と答えし少年いわし雲

     一月のナプキンに描く 癌の位置

     ぽかりと海霧(ガス)割つて記憶の白い灯台

     遠国の音のあつまる鵄尾の空

     曼珠沙華だあれもいないから居たり

     オオカミが兎跳びしてくるなんて

     はんざきをどう詠もうとも見えてこず

     蟇が出てそれらしくなり父の墓

     子供の記憶は正しい憲法記念の日

     渤海や花色もめんの裏見せる

     学徒兵雲の峰より降りてこず

     卵生の皇統れんめん春の曲

     男で死にたい梅雨の羅漢の頭撫で       (高山れおな 選)
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   死について 蛸足配線について

   愛して た この駅のコージーコーナー

   こころを 膝のノートパソコンが照らす・・・・・・・佐藤文香「あたらしい音楽をおしえて」より

   得意げに来ぬ鉄柵にジャケツ掛け

   布掛けし壺を地べたに置く勿れ・・・・・・・・・生駒大祐「渚/煙」より

   父の爆発山脈をみちづれに

   味噌汁の若布に愛を知られけり

   おほぞらへ大地が墜ちてゆく時間

   君生れし日にも株価は上がりけり

   死に際にボタン電池と見つめあふ・・・・・・・・・谷雄介「父の爆発」より

   陽物(ファロス)出て悲の海照らす朝飯まへ

   口吸や生命(ゾーエー)の西風(ゼピュロス)の歌麿の

   灯火親し艶本の馬鹿のつまびらか

   南無雪鼎火に克つ水でする恋よ

   駄句の予感lime treeの匂ふ庭

   落葉踏む韻律の木はありてなし・・・・・・・・・・高山れおな「ロンドン秋天」より

この一連は、昨年秋にロンドンの大英博物館で開かれた「浮世絵春画」展に取材して作られた作品群で、こうして抽出すると判りにくいが、面白い一連である。
題名の下に
  < 大英博物館でShunga: sex and pleasure in Japanese art開催。
  為同展取材、自十月二日至八日在英京、十六句。附けたり一句。  > と書いてある。
句集などに収録される場合には前書きなどが補足されて、彼独特の一風かわった作品群になるだろう。

   月の森白子を焼いてレストラン

   野兎のとても煮られて血のソース

   スケーターワルツいきな り 止まる・・・・・・・・上田信治「野兎」より

   
雑駁な紹介になったが、この辺で終わりたい。 ご健闘を期待する。





           
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