
草もみぢしてそよぐなる風ばかり
ゑのころ草の原たれもゐず・・・・・・・・・・・・・藤井常世
「エノコロ草」というのは、別名「猫じゃらし」のことである。
その名の通り、この草の穂で子猫などをじゃらすと、とても面白い。
食用の「粟」は、この草を改良したものだという。
青く茂っているときは、こんな様子である。 ↓

古来、この草は俳句にも、よく詠まれてきた。 それを引いておく。
秋の野に花やら実やらゑのこ草・・・・・・・・楚常
よい秋や犬ころ草もころころと・・・・・・・・一茶
ゑのこ草媚びて尾をふるあはれなり・・・・・・・・富安風生
猫ぢやらし触れてけもののごと熱し・・・・・・・・中村草田男
父の背に睡りて垂らすねこじやらし・・・・・・・・加藤楸邨
猫じやらし子にも手触れずなりしかな・・・・・・・・石田波郷
木曾に入る秋は焦茶の猫じやらし・・・・・・・・森澄雄
本日の死者と負傷者ねこじゃらし・・・・・・・・森田智子
岐路に佇ち踊り出でたる猫じゃらし・・・・・・・・高沢晶子
どこへでも蹤いて来る愛狗尾草・・・・・・・・竹中碧水子
行きさきはあの道端のねこじゃらし・・・・・・・・坪内稔典
人恋へば昏るる高さにねこじゃらし・・・・・・・・横田欣子
君が居にねこじやらしまた似つかはし・・・・・・・・田中裕明
子が描く遊山の絵地図ねこじやらし・・・・・・・・上田日差子
叢雨やゑのころ草は濡れてゐず・・・・・・・・小林鱒一
猫じやらし持てばじやらさずにはをれず・・・・・・・・西宮舞
この道を芭蕉と曾良はゑのこぐさ・・・・・・・・板藤くぢら
振り向けば金ゑのころの道なりし・・・・・・・・かとうさきこ
全身で少女スキップねこじゃらし・・・・・・・・永田千代
猫じやらし不意に思い出湧いてくる・・・・・・・・石川幸子
絶滅の狼以後を狗尾草・・・・・・・・神戸秀子
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掲出した歌の作者藤井常世さんは、昨年十月にお亡くなりになった。
リンクにしたWikipedia ↑ が詳しい。 アクセスされたい。
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