
檀の実爆ぜて色濃くなりにけり・・・・・・・・・・・・・・・・小泉良子
私の第四歌集『嬬恋』(角川書店)にも「檀」を詠った歌がある。
真実とはいかなる象(かたち)なすものか檀(まゆみ)のまろき実くれなゐ深く・・・・・・・・・・・木村草弥
檀(まゆみ)の実は晩秋にかけて熟す。
『和漢三才図会』に「生るは青く、熟すれば淡赤、裂ければ内に紅子三四粒あり。その葉、秋に至りて紅なり」とある。
↓ 写真②は「まゆみ」の春の開花の様子である。

↓ 写真③は、秋になって実が割れて中身が露出したところ。

実の色が美しいだけでなく、葉の紅葉が美しい、という。
「真弓」とも書くが、これは昔、この木から弓を作ったことに由来する。
秋くればくれなゐ深く色づきて檀の喬木山をいろどる・・・・・・・・・・・・・・・・・・・木村草弥
この歌は先に掲出した歌につづくものである。
寒い土地ほど、この檀の紅葉は美しい、と信州の友人は言う。紅葉の写真を出しておく。↓

以下、檀の実を詠った句を引いて終る。
旅にをり旅の日和の檀の実・・・・・・・・森澄雄
檀の実遠景は日のとどかざる・・・・・・・・鷲谷七菜子
大工老いたり檀の実ばかり見て・・・・・・・・六角文夫
まゆみの実寄りくるものをいとほしむ・・・・・・・・きくちつねこ
奉納の神楽に高き檀の実・・・・・・・・・横山仁子
檀の実ひそかに裂けし月夜かな・・・・・・・・菅原鬨也
檀の実圧し来る如く天蒼し・・・・・・・・望月たかし
檀の実まぶしき母に随へり・・・・・・・・岸田稚魚
真弓の実華やぐ裏に湖さわぐ・・・・・・・・杉山岳陽
檀の実割れて山脈ひかり出す・・・・・・・・福田甲子雄
泣きべそのままの笑顔よ檀の実・・・・・・・・浜田正把
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