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K-SOHYA POEM BLOG
私のBLOGは詩歌句の「短詩形」文芸に特化して編集している。 今はもう無くなったが、朝日新聞の大岡信「折々のうた」などの体裁を参考にして少し長めの記事を書いている。自作も多めに採り上げている。
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C・ライアン&C・ジェダ、山本規雄訳『性の進化論』・・・・・・・・・木村草弥
性の進化論

──新・読書ノート──

       C・ライアン&C・ジェダ、山本規雄訳『性の進化論』・・・・・・・・・木村草弥
             ─女性のオルガスムスは、なぜ霊長類にだけ発達したのか?─
                   ・・・・・・・・・・作品社2014/07/12刊・・・・・・・・・・・・

私の書評の代わりに、アマゾンに寄せられたレビューを引いておく。
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人間のセクシャル進化論から「結婚観」を問う意欲作
投稿者 Teru Sun トップ1000レビュアー 投稿日 2014/9/6

ヒト属をふくむ霊長類のさまざまな種において、メスがオルガスム(オーガズム)を経験するのは、たいてい乱婚・乱交(複数オス複数メス配偶システム)を行なう種だということが学術的調査の証拠から分かっているという。霊長類のメスは交尾時にある音声を発することが霊長類学者の調査で明らかになっている。この音声は「交尾コール」と呼ばれていて交尾の直前・最中・直後に発するそうだ。より乱婚的な種のメスほど、大きく複雑な音声を発する傾向があるそうだ。

マイクを背負ってジャングルに分け入り調査することができない私たちでも「交尾コール」を身近に聞くことは可能だ。霊長類ヒト属のメスがサル属とは、また違った“交尾時に独特な音声”を発するのを聞く機会があるからだ。ヒトのメスの発する音声も部族や文化・言語によって異なっていることだろう。

先史時代、身の回りにサーベルタイガーや獰猛な肉食獣が生息している森林地帯で狩猟採集生活していた私たちの祖先のメスは声を出せば肉食獣に捕捉される可能性が高くなるにもかかわらず、なぜ交尾時に叫んでしまうように進化してきたのか。著者は率直にユーモアも込めてこう書いている。

『「みんな、こっちにいらっしゃいよ」という誘いなのであり、そうやって精子競争に駆り立てて』乱交により遺伝的に適合するオスの精子を受精するためなのだそうだ。メスの声で昂揚したオスが順々に列をなして交尾を行っていく、メスひとりを奪い合うことはせず全てのオスが交尾をしたいメスと交尾をしていくという。すべてのオスが交尾できるので奪い合う必要がなくなる。

メスの子宮は一番先に射精したオスの精子が受精確率が高いわけではなく、異なる免疫を持つ遺伝的に適合する精子が生きやすい子宮・膣内環境を女性器は整えるように進化してきたというメカニズムがあるのだそうだ。ほんの僅かな危険よりもより良い遺伝子を残すための策なのだと。本書の内容で紹介されている性科学の知見では、ヒトのペニスは先に射精された精液を掻き出すような形に進化してきて独特な形状をしているのだそうだ。また近年の研究ではヒトの精子数が減少をしているのは乱交を行なわなくなったことが原因だともいわれているそうだ!

ヒトと同じように繁殖期以外でも交尾を頻繁に行なうことで知られている霊長類ボノボのメスは他の霊能類チンパンジーやヒヒのように外生殖器が赤く大きく腫れ上がるような生理現象をしないように進化し隠蔽されてきている。いつメスが受胎可能なのかをオスには分からない。

ヒトのメスもボノボと同様で身体的な変化は見られない。しかしボノボやチンパンジーと異なり排卵期には、無意識に多量の香水や赤い口紅を塗り、肌の露出量が多いローライズジーンズなどを身に付ける傾向があるという。たしかに日本国内でも妊婦や子育て中の女性が真っ赤な口紅や肌の露出が多い服を着ている姿を見る機会が少ない。

また男性のことも語られている。男性は20代をさかい体内のテストステロン値がゆっくりと減少していくことが知られていてテストステロン値の減少で鬱、心臓発作、痴呆につながる確率が高まり全体的な死亡率も88〜250%も跳ね上がるそうだ。

しかし、それを抑制させる直接的な手段として紹介されているのが、妻以外の「魅力的な女性とほんの少しおしゃべりをすること」。こんな話を堂々と書かれている本書は女性読者の反感を買ってしまいそうだが…。それだけで数分のうちに中年男性のテストステロン値が14%上昇することをある研究者が突き止めたらしい。新しい女性にワクワクドキドキするといったものだろう。なぜ妻以外の新しい女性と会話しただけでテストステロン値が上昇するのか。

本書では多くの中年男性が浮気によって生じたホルモンの変化を、本当の「恋愛」と勘違いして家族も結婚も人生も台無しにしてしまう軽率な決心をしてしまう事実に触れ、その行動は得策ではないと警鐘も忘れていない。それではなぜ、と著者は問う。

なぜヒトのメスにも乱交をする他の霊長類の種と同じように「交尾コール」があり、なぜヒトのオスが一人のパートナー(妻)で満足できず、魅力的な新しいメスに惹かれ紳士的な外面とは裏腹に「交尾をしたい」と思ってしまうのか。著名な政治家、スポーツ選手だけでなくオスの多くが名誉や地位を失いかねないを危険を顧みずに浮気や不倫をしてしまうのか。一人のパートナー以外のメスとおしゃべりするだけでテストステロン値が上昇し生きる活力などが湧くように進化してきたのかと…。

本書からの聞きかじりを長々とほんの少し書いただけだが、ヒトのセクシャルな身体・精神の進化構造から「一夫一妻」が“スタンダード”ではない証拠が著者の丁寧でユーモアたっぷりな筆意で数々と介されている。なぜそこまでというほうど豊富に。

「進化論を議論する学術界」では、“ヒトは「一夫一妻」がスタンダードである”ことが「通説(スタンダード ナラティヴ)」なのだそうだ。通説とは学術的に多勢な“仮説”のことで絶対的に正しいわけではない。だがしかしダーウィンの影響力が強い進化論で強く支持されている仮説を世界の多くの学術界の重鎮が支持している。

その「仮説」に疑問を呈する内容が本書のさわりで語られているが、「いにしえの祖先(ホモ エレクトゥス)は戦いに勝ち残った一頭の「アルファ[最優位の個体]オス」がメスのハレムを形成するゴリラ型の配偶システムから数百万年前に脱し、ほとんどのオスがメスと性交する機会を持てるシステムへと移行した。この転換を示す化石資料に異を唱える専門家はほんのわずかである」と皮肉まじりに書いている。

批判の矛先は進化論の祖チャールズ ダーウィンをはじめジグムント フロイト、スティーブン ピンカー、リチャード ドーキンスなど進化論(進化心理学・進化生物学など)を論じる学術界では大御所と評して過言ではない人物たちばかりだ。そんな大御所たちに真っ向からユーモアたっぷりに挑む内容は思いのほか読みやすく好奇心を満足させてくれる。

本書では中国の少数民族ナシ族などの事例は紹介されていて日本国内の性風習・民俗学での事例が紹介されてはいないが、近年(昭和初め頃)まで農村部では盆踊り、神社や寺院の祭礼、縁日などの日、その夜などに性的開放をする風習が日本国内にもあったことが知られている。また神社の巫女は参拝に来る男性の希望者すべてと「まぐわい」を行なっていたとも書かれている。

簡単にいえば宗教的な神を前にしたハレの日の「まぐわい」で、猥褻(わいせつ)だと昭和初期、日米戦争前まで警察に取り締まられ禁止されるまでは行なわれていたようだ。村(ムラ)の男女がすべての者と「まぐわう」ための男女共有という風習があったり、成人の儀式のために若い男女が同じ小屋に何日間も共同生活しながら乱交する風習もあり、ナシ族と同じように娘が気に入った男性を取っ替え引っ替え部屋に招くということや、旅人に妻を貸すという「一夜妻」という風習があったところもあるそうだ。詳しくは『盆踊り 乱交の民俗学』や『遊女と天皇』を参照のこと。

ではなぜ、そういった風習が日本だけでなく世界各地に残っていたのか。村・部族・部族間の団結力や人と人の絆を深めるためのシステムだと著者は語る。その論拠としてヒトと同じようにセックスをコミュニケーションの一部にするボノボの社会構造を説明に使う。

ボノボのメスは自分が属するグループ内のすべてのオスと交尾をすると他のグループにまで出向きそこのオスと交尾をすることがあるというのだ。すべての男女がセックスを行なったグループを作るという、何とも先鋭的な方法だ。こんなボノボの社会では「オレの女」や「ワタシの彼」は存在しない。性交相手を独り占めすることが「さもしい」ことだという風習がある民族もいるそうだ。すべての男女がセックスを通じた兄弟姉妹・父娘のような関係になってしまうというわけだ。

私たちは宗教的・社会的・文化的なマインドコントロールによって「結婚」を唯一の人間的な男女間の絆だというふうに信じこまされてきた。そして進化論にも証拠の有り無し関係なく、そうした信念が注ぎ込まれている。この全世界に無理やり信じ込ませてきたのは国家や宗教によって行なわれている。著者は一夫一妻という結婚システムが、本当に人間的なものなのか分からないとした上で未来的なオープンマリッジなどの可能性にまで言及している。捉え方は人それぞれだとしても考察するに値する内容だった。あまりに素晴らしい内容だったのでまとまりがない書評になってしまい申し訳ないです。
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