

寒林の栗鼠が落ちこむ空ま青・・・・・・・・・・・・・・龍居五琅
私は「裸木」という言葉が好きなのだが、この言葉の季語が無い。 たから、仕方なく「寒林」というのを引いておく。
裸木(はだかぎ)の蕭条と立つ冬の木よ われは知るなり夏木の蒼(あを)を・・・・・・・・・木村草弥
この歌は私の第四歌集『嬬恋』(角川書店)に載るものである。
葉を落として粛然と立つ冬の木にも、緑の葉を茂らせた、華やかな夏木の季(とき)があるのである。
「冬の木よ、わたしはそれをよく知っているよ」という呼びかけである。冬木の姿を通して夏木を思い描いている歌である。
『栞草』に「夏木立は茂りたるをいひ、冬木立は葉の脱落したるさまなどいふべし」と書かれている。まさに簡潔にして要を得た言葉と言える。
俳句の季語としては「冬木」「寒木」「冬木立」「枯木」「寒林」などがあるが、この頃では「寒林」が多用されるという。
「枯木」という言葉は、葉を落としただけの冬木の表現としては適切ではない。文字通り「枯れた」木と紛らわしいからである。
掲出した私の歌のように冬木から夏木を連想するという意味では「枯木」は使いたくない。
いま「寒林」という季語を紹介したので、それを詠んだ句を引きたい。
寒林の日すぢ争ふ羽虫かな・・・・・・・・杉田久女
寒林の一樹といへど重ならず・・・・・・・・大野林火
寒林を三人行くは群るる如し・・・・・・・・石田波郷
寒林やとつくに言葉消えやすく・・・・・・・・石橋秀野
寒林に日も吊されてゐたりしよ・・・・・・・・木下夕爾
寒林の栗鼠が落ちこむ空ま青・・・・・・・・龍居五琅
冬森を管楽器ゆく蕩児のごと・・・・・・・・金子兜太
寒林に待つは若者眉根濃し・・・・・・・・星野麦丘人
寒林の奥にありたる西の空・・・・・・・・鷲谷七菜子
寒林の起ち上る夕日かな・・・・・・・・北野登
寒林に海の匂ひがよぎりけり・・・・・・・・青木たけし
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南国では、本州との季節差を利用して鑑賞用の菊の栽培が盛んである。
菊は「短日性」の植物なので陽が短くなると咲き出すので、人工的に光線をあてて咲くのを遅くする。こういうのを「電照菊」という。
夜間に電気が点々と点っている風景は、温もりがあっていいものである。 そんな「かりゆし58」の音楽の動画を出しておく。 ↓
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