
あおい朝の湖辺で・・・・・・・・・・・・・・・・苗村和正
あおくけぶった空から
紙鳩のように
冬のひかりがおちてきた
こんな朝の
だれも通らない湖へかたむく道は
むきたての木の実のように固くしめっている
こどもは
そのひかる道を 髪をゆさぶってかけてゆく
きくきくと風をならす
折れ葦の中に ああ めざめている
ちいさな太陽
遠い距離となった
こどもとわたしの間に
駱駝のかたちで垂れさがっている
まぶしい風景の
きれぎれの寒さ
撓みながらうごく
遠い湖の波のうえに
しろくしきりにうごくものはなんだろう
あかあかと
染まって
こどもは まだ はしっている
(北溟社刊『滋賀・京都 詩歌紀行』から)
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この詩に出てくる湖は「琵琶湖」である。
冬の琵琶湖に行く人は、観光客では、めったにないだろう。
枯れ葦も火を放って焼かれて、春の芽だちを促すようにされているだろう。
人も自然も、みな、来ん春の用意をしているのである。
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