
蜥蜴照り肺ひこひことひかり吸ふ・・・・・・・・・・・・・・山口誓子
ウォーキングしていて、道端の石の上を蜥蜴(とかげ)が横切ったので、急にトカゲのことを書く気になった。
トカゲは色々の種類が居るが、写真のような「青とかげ」が美しい。
掲出の句は、トカゲの呼吸で喉がひこひこと動いている、と観察眼するどく描いている。
私も蜥蜴を詠んだ歌があるが、多くはないので、いま見つけられないので、この句を掲出する。
変温動物なので冬は冬眠する。
春とともに活動をはじめ、7、8月に土を掘って十個ほど産卵するというが、田舎暮らしながら、私は、まだ見たことがない。
爬虫類はどことなく不気味だが、蜥蜴は可愛い感じの小動物である。
その怜悧そうな目や、喉の動きなどは、動きのすばやさとともに印象的である。
蜥蜴を詠んだ句を引いて終わる。
三角の蜥蜴の顔の少し延ぶか・・・・・・・・高浜虚子
歯朶にゐて太古顔なる蜥蜴かな・・・・・・・・野村喜舟
石階の二つの蜥蜴相識らず・・・・・・・・富安風生
さんらんと蜥蜴一匹走るなり・・・・・・・・小島政二郎
父となりしか蜥蜴とともに立ち止る・・・・・・・中村草田男
薬師寺の尻切れとかげ水飲むよ・・・・・・・・西東三鬼
直はしる蜥蜴わが追ふ二三足・・・・・・・・石田波郷
いくすぢも雨が降りをり蜥蜴の尾・・・・・・・・橋本鶏二
交る蜥蜴くるりくるりと音もなし・・・・・・・・加藤楸邨
蜥蜴かなし尾の断面も縞をもつ・・・・・・・・中島斌雄
高熱の青き蜥蜴は沙(すな)に消え・・・・・・・・角川源義
青蜥蜴おのれ照りゐて冷え易し・・・・・・・・野沢節子
青蜥蜴オランダ坂に隠れ終ふ・・・・・・・・殿村莵糸子
蜥蜴楽し青き牛蒡の葉に乗つて・・・・・・・・沢木欣一
人に馴ることなく蜥蜴いつも走す・・・・・・・・山口波津女
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