K-SOHYA POEM BLOG
私のBLOGは詩歌句の「短詩形」文芸に特化して編集している。 今はもう無くなったが、朝日新聞の大岡信「折々のうた」などの体裁を参考にして少し長めの記事を書いている。自作も多めに採り上げている。
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貝沼正子─私信「無冠の馬」評 / 三井修─『無冠の馬』 十首抄 / 森きよ子─「無冠の馬」17首抄
mukannouma (2)
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   草弥の詩作品<草の領域>
      poetic, or not poetic,
      that is question. me free !
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      私信と「無冠の馬」評・・・・・・・・・・貝沼正子(「未来山脈」会員)

新緑の砌、木村様にはご健勝のこととお慶び申し上げます。
此の度は歌集『無冠の馬』の御出版おめでとうございます。そして貴重な一冊を私にまでお贈りいただき心より感謝申し上げます。

素敵な装丁とユニークな歌集名に魅かれて一気に拝読致しました。
身近な草花や日々の暮らしが主なのかと思いきや旅行詠、国内はもとより世界各国におよび、行った先々の街や人々の暮らしが丁寧に読まれてして驚きました。
正に帯に書かれた卓越したエロスとインテリジェンスで綴る斬新奇抜な詩的世界でした。
知識や教養はもちろんですが、失礼ながら八十五歳とは思えない体力、行動力に脱帽です。
心に残ったお歌は沢山ありましたが、その中から数首か挙げて小感を述べてみたいと思います。

  *チューリップはらりと散りし一片にゴッホの削ぎし耳を想ひつ

チューリップの散った花弁からゴッホの耳の連想に、どきっとしましたが、鮮やかな比喩が強烈な印象として残りました。

  *十戦十勝かつ英国首位種牡馬─セントサイモンは≪無冠馬≫だつた ─1881年~1908年─

歌集名になった一首と思いますが、私は馬のことはよく知りません。
作者の思い入れの強い一首ということが十戦十勝と英国首位種牡馬でわかりますが、セントサイモンはなぜ無冠馬だったのでしょう。

  *母逝きて巡る忌日に思ひ出づ俯きて咲く片栗の花

お母様の思い出と俯きて咲く片栗の花。お母様に片栗の花のイメージが重なり、控えめで清楚な感じですが、凛とした女人像が浮かんできました。
きっときれいで優しくて女性としての強さを秘めたお母様でいらしたのではと思いました。

  *軽薄な明るさをいつか蔑んだ張りついた汗が乾かない午後

私は歌集の中では「湿気」の項目に登場するお歌に魅かれます。人間を詠んで、どこかシュールで個性の光る歌が好きです。
軽薄な明るさを軽蔑しながらどこか割り切れない、そうとばかりはいかない世の中、張りついた汗が乾かない午後にジレンマが表れている感じがします。

  *些細な嘘が限りなく増殖する午後ぶあつい湿気にどつぷり巻かれ

小さな嘘に尾鰭がついて、とんでもない話になっていたということありますよね。
最初の嘘は作者でしょうか、限りなく増殖するという言葉が生物のようで面白いです。
下句のぶあつい湿気にどつぷり巻かれ、にちよっと捨てばちな気分がよく出ていると思いました。口語発想で詠まれているのも効果的と思いました。

  *些事ひとつなどと言ふまじ煮凝りがぷるんと震ひひれ酒旨し

些事と思っても受け止め方は人それぞれ。 煮凝り、ぷるん、ひれ酒、言葉の選び方が巧みで、気がかりはあっても胸の奥にしまいこみ、ここはひとまず、ひれ酒を楽しむ作者が浮かびます。
私もお酒が好きなので、この感じがいいですね。

  *夢すべて池に沈めて蓮枯るる通天橋背に冬ざるるかな

ダイナミックなお歌ですね。夢と眼前の枯れた蓮の景が見事に詠まれていて味わい深いです。
「去年今年」の項目の歌もそうですが、俳句で言う切れ字をところどころにお使いになって感動や詠嘆を引き出されている。
口語歌を詠んでいる私には、なかなか使えないので見事だなあと思いました。

  *されど君、説かるるはクメールの言ひ分ぞ正義はいつも支配者の側に

全く歴史はその繰り返しですね。勝てば官軍、負ければ賊軍、は時代を越えて国を越えて、どこにでもありますね。
されど君、の初句に作者の強い反論が感じられる納得の一首です。

  *タベルナでゆふべ出会ひし美青年 今日はゲイのカップルでビーチを

まさに現代の世相を詠まれていると思いますが、とくに外国でカタカナ語が多いと文語で詠まれるより口語の方が合うのではないかと感じましたが如何でしょうか。
作者の目を丸くしている表情が浮かび、にやりと笑ってしまいました。

  *けふ一と日誰とも言葉交はさざりき初夏のゆふべを小綬鶏の鳴く
  *哀しみとポテトチップスと比べつつしあはせ計れば鳴る赤ケトル

人生を達観できる境地を、しみじみ詠まれていて言外に深い感動を覚えます。
いろいろなお歌が詠めるのも長く生きていればこそです。
私はまだまだ未熟で、なかなかいい歌が詠めませんが、木村様のお歌をよく読んでお勉強したいと思います。ありがとうございました。

木村様のご健康と益々のご活躍をお祈りいたします。   2015年5月6日      貝沼正子  
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貝沼正子さんは、今は口語自由律の「未来山脈」に居られるが、前は加藤克己の結社「個性」に所属しておられた。 
「個性」は、かなり自由な結社で、自由律や口語など、何でもありのところだった。
私も口語、文語、定型、非定型、自由律、 の区別なく、自由に作歌しているので 、「うまが合う」というのだろうか。
貝沼正子氏には、『燦燦ブルー』(1999年個性叢書)、『セピアの渇き』(2004年未来山脈叢書)、『触覚』(2014年未来山脈叢書)などの歌集がある。

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       木村草弥歌集『無冠の馬』十首抄・・・・・・・・・・三井修(「塔」選者)

   誰に逢はむ思ひにあらず近寄ればミモザの花の黄が初々し

   太陽へ真つすぐ伸びる石蔣の花ひそやかな黄にまた出逢ひたり

   真夜冷ゆるしじまの声のごとくにも蝕まれたる原風景ぞ

   陽にやけし岩のおもてが足裏に熱き苦行の岩山のぼる

   足裏と頭ささふる枕にみる渦巻模様は太陽のシンボル

   封道沿ひはぶだう畑つづき木組みの家が点在する可愛い村を縫ってゆく

   ワン村の人口五二三人九月最初の週末に音楽祭を開く

   休息のホテルの昼に同行のU氏離婚の秘め事洩らす

   水牛に水浴びさせる少年の総身に水滴したたりやまず

   照射位置を示す腰間の+の字三七回済みたればアルコールで消す

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      「無冠の馬」17首抄・・・・・・・・・森きよ子(「地中海」会員)

   八ツ手の花ひそと咲く白昼凩や ネルソン・ホリシャシャ・マンデラ氏逝く

   午年生まれ ましてや無冠のわれながら馬齢を重ね八十五となる

   「死に場所は故郷が理想」主治医言ふ、われら同意す帰心矢のごとく

   三椏の花はつかなる黄に会ふは紙漉きの村に春くればゆゑ

   桜散る頃に死にたる母ちと妻、お供にと母が連れたまひけむ

   一斉に翔びたつ白さにこぶし咲き岬より青い夜が来てゐる

   沈丁の香の強ければ雨ならむ過去は過去なり今を生きなむ

   ひと冬の眠りから覚めたか剪定した葡萄の樹液のしたたり止まぬ

   チューリップはらりと散りし一片にゴッホの削ぎし耳を想ひつ

   はたと膝打ちたるごとく椿落つ三輪の百千の椿の山は

   菜の花が黄に濃きゆふべたはやすく人死につづきせつなくなりぬ

   筆づかひの途切れにも似て一ところ火勢の強き火床が見ゆる

   寒椿耐ゆる美徳を亡母訓ひぬ耀ふ花のはつか匂ひて

   晩年は仏の重太郎と呼ばれしが若い時には激情家たりし

   春めきて木津川の水ぬるみつつ宙天たかく雲雀があがる

   巨いなるドームのごとく横たはるストラスブール駅朝もやの中

   高みより見放くれば周りみなボジョレ・ワイン畑が果てなくつづく



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