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K-SOHYA POEM BLOG
私のBLOGは詩歌句の「短詩形」文芸に特化して編集している。 今はもう無くなったが、朝日新聞の大岡信「折々のうた」などの体裁を参考にして少し長めの記事を書いている。自作も多めに採り上げている。
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月夜茸ひかるを思ひねむりをり星への合図われもなすべく  ・・・・・・・・・・・・・村島典子
(初出・Doblog2008/11/26)
遊子

──村島典子の歌──(1)

  月夜茸ひかるを思ひねむりをり
   星への合図われもなすべく・・・・・・・・・・村島典子


村島典子(むらしま・みちこ)さんとは、私の歌集を贈呈するようになって以来の間柄であるから、もう十数年のお付き合いということになる。
大津市にお住まいで、前登志夫の「ヤママユ」門下の才(ざえ)豊かな人である。
近時、胸椎を骨折されるなど身辺に大事が起こり、「ヤママユ」も退会されたという。
そこへ今年春になってからの前登志夫の死であるから、さぞや、ご心痛のこととお見受けする。
今回、私の詩集『免疫系』を贈呈したお返しとして2006年夏に出された歌集『遊子』(柊書房刊)を恵贈された。

「遊子」とは「旅人」の謂いである。
カバー装は自筆の水彩画を版にしたものという。
掲出の歌は、『遊子』に載るものである。
なお村島さんには今までに『夕暮のみづ』 『時間(とき)の果実』 『タブラ・ラサ』の三冊の歌集があり、今回のものは第四歌集ということになる。

以下、私の好きな歌を抽出する。

人形を背にくくりつけ遊びゐしわがをのこごが妻を娶りぬ

草冠かむりし風の行列の白南風ならむ野をよこぎれる

草千里の牛にまじりて草を食む性愛ひとつ宥むるごとく

氷点下の朝(あした)の野辺に草木はつつましく立つ野の神は見よ

子を得たる女といふをしみじみとつくづくとわれは見届けにける

裏返しあをき斑あるを喜びぬちひさき人は紋章をもつ

子別れはきのふのごとし坂のへにひらひらひらと振りし手のひら

雨の樹のとなりに光の木が生ひてさくらよ千年まへの午後です

リハビリ室に骨を数へてゐたるかな頸胸腰仙尾なる椎骨

ああ折れて繊き背骨は夕凪のひとつ帆柱そらの入江に

ゆつくりとわれ癒ゆる日のゆふぐれを流るる秋あかねの赤い川

われに一歳零歳の孫あるを否否と言ひ諾諾と思ふ

蕪、大根白くまどかな形象を眺めてをりぬ夕ぐれながく

転生を信じてをらずさりながら五月の木々ははらからのごと

にがうりの腹に孕める赤き種子昼餉に食めばいのち熟るるよ

はや左腎切除されたる夫の身のその空洞の春のおぼろ夜

「きんの」とふことば昨日の謂なれば懐かしきかな大和の言葉

みづうみは黒を湛へてしづもれりこの沈黙のはての新年

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掲出歌の才気煥発な「比喩」表現の豊かな詩才は非凡なものである。
今宵も晩秋の森に月夜茸は蛍光を発していることだろう。
また引いたような佳い歌群を鑑賞させていただき、快く、満ち足りた気分である。深く感謝する。

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