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K-SOHYA POEM BLOG
私のBLOGは詩歌句の「短詩形」文芸に特化して編集している。 今はもう無くなったが、朝日新聞の大岡信「折々のうた」などの体裁を参考にして少し長めの記事を書いている。自作も多めに採り上げている。
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夏ごろも白きレースを脱ぎすてしうつくしき蛇を見まくほりすも  ・・・・・・・・・・・・村島典子
(初出・Doblog2008/12/24)
ひも

──村島典子の歌──(2)

   記 憶・・・・・・・・・・・・村島典子

島唄はラジオをあふれみんなみの海人(あま)の子どもを連れくるわれに

青銅の耳環いで来し夏見といふ未だ見ぬ丘近江にありぬ

炎なす百日紅の花かいくぐり埋蔵文化センターに入る

出土品置かれてあれど人はゐず地中のごとし八月の部屋

七年まへ契りしことの黎明の地表にいくつもの蝉の穴

骨折られ雨の路上に横たふはクローンならぬかビニール傘の

いくたびも轢かれしのちに透明のビニール傘は姿を解かる

 (写真家石山都さんとヒロシマを見てのち七首)

映像のなかとし言へど被爆せしワンピース六十四年目の夏

終戦は時間をとどむ誰もゐず凍れる夏のヒロシマの空

川七つ寄りゐる街に落されし 原爆 七つの川も燃えけむ

沈黙はつめたく烈し昭和二十年八月六日八時十五分

炎熱に落下せし首仏桑花地上に首は花を咲かしむ

生命の記憶とは何 水中をあるく 水面を首がゆきすぐ

映像にみし被爆者のワンピース水中にわれ纏へるこどし

ああ晩夏の夕暮なれど電線にテツペンカケタカと鳥は鳴くなり

みづうみを塞ぐ巨大な黒雲はまなく来らむわが街の上に

雷鳴のとどろくなかを帰りきぬ小さきくるま甲虫のごとし

車ごと驟雨に打たるこの夏はいくたび天の忿怒に触れむ

容赦なく雨に打たるるさま思ふけさ脱ぎ捨てし人のぬけがら

身じろがず雨に打たるる濡れそぼつ老人ふたりの洗濯物は

幻のひとと言ふべし「古代から来た未来人」ヲリクチシノブ──(中沢新一著書)

もう夢はなにもかも変、外套のうちより繋ぐ亡き人の手と

外套にくるまれあれど亡き人の指は冷たし死にびとの指

山道に金水引草を摘みたるはちひさな蛇の抜けがらのそば

尾の先まで見事に脱ぎありし衣(きぬ)顔ちかづけてつぶさに見たり

夏ごろも白きレースを脱ぎすてしうつくしき蛇を見まくほりすも

卵胎生とふ生態ふしぎ人間がたまごより生れしといふ神話

秋の野は匂ひたちたり紫の葛花あまた隠されてゐむ

するするとつめたき音を曳きながら水辺をい行く秋と思へり

昨夜(きぞ)見たりし夢を運びて来りけり精神科七番扉のまへに

入口は出口なるべし診察室の扉の中は真つ青な空

(歌誌「晶」64号2008.11所載)
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村島典子さん所属の歌誌「晶」64号をいただいたので、転載しておく。
この号の「あとがき」に村島さんは、こう書く。

<よく夢を見る。ほとんどがたわい無いものだが、わたしの夢によく登場するのは「蛇」。フロイトの言う、無意識の領域で抑圧されたリビドーと考えることもできるが、わたしの場合、記憶と関っているかもしれない。
秋、開け放たれた座敷に寝かされていた、生後間もない赤ん坊のわたしの枕元に、蝮の死骸が二匹置かれていたという。これは、夢ではなく実話として、幾度となく母に聞かされたこと。おそらく、猫が運んできたものであろうと、母もわたしも考えていたのだが、いつの間にか頭のなかに、霊異譚としてインプットされてしまったらしい。
「赤ん坊は人間ではなく蛇だったのではないか」。
見る夢は、いつも奇妙で、卵が木に一杯生っていたり、卵を生んでいる夢であったり、川を泳いでいる自分のまわりに蛇がうじゃうじゃいたり、前後左右蛇の中を歩いていたり、とにかくそれらの夢の後味はとても爽快とは言えないもの。けれども、どこか懐かしく、実際に池を泳いでわたっていく蛇を見たときなど、急に切なくなったものである。
記憶、それは単に、刷り込まれた母の話からではなく、折口信夫のいう「のすたるぢいの間歇遺伝(あたゐずむ)」として、現れたものではないかと、近ごろ考えたりする。
ゆるやかな雲の流れ/許された時間が ひととき/僕たちに立ち止まる/それぞれ速度のちがう身体をもつ僕たち/妻よ すれ違ってゆく<時>を/僕らは 持った/そして 一瞬のうちに/そして たぶん永遠に/光の風味──。(木村草弥 「パロール」から)
数日前届けられた、詩集『免疫系』の言葉に、蛇であっただろう日が甦る。>

村島典子さんについては11/26付け(再録・2009/04/27)に歌を載せてあるので参照されたい。

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