
■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■
草弥の詩作品<草の領域>
poetic, or not poetic,
that is question. me free !
■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■
『無冠の馬』私信と抽出歌・・・・・・・・・・・・・藤原光顕(たかまる通信)
(前略)・・・・・一言でいえば、これまでの練りに練られた木村短歌とは、いささか異なる印象を受けました。
自在というか融通無碍というか、そうか、こんな詠い方があったのかという感じでした。
帯文の「斬新奇抜な詩的世界」そのまま納得させられました。・・・・・(後略)
歌集『無冠の馬』より
一斉に翔びたつ白さにこぶし咲き岬より青い夜が来てゐる
誰に逢はむ思ひにあらず近寄ればミモザの花の黄が初々し
子を産みて母となる子よ山茶花の蕾の紅の膨らみ初めつ
八ツ手の花ひそと咲く白昼凩や ネルソン・ホリシャシャ・マンデラ氏逝く
田舎より街に暮すが長しと言ひ友は土色の絵の具をひねる
なだらかなる姿態よこたへ仏陀はも今し涅槃の境に至るか
われもまた商人の裔、商人の矜恃もふかく肯ひにけり
クメールの統べし五百年の栄華の跡ひそと佇む然れども峨々と
王と王妃の沐浴せる池スラスラン七つの蛇神のテラスありたり
『王道』を読みしも昔はるばると女の砦に来たれる我か
素はだかに濁れる水に飛び込みてはしやぎゐる児らに未来のあれな
間なくして用済みとなる器官なれ愛しきかなや我が前立腺
マンスリーマンション三階、病室より持ち帰り洗ふ妻の下着を
妻に効く抗癌剤なしのご託宣、異郷の空に夕光赤く
「一切の治療は止めて、死んでもいい」娘に訴へしは死の三日前
とことはに幽明を分くる現し身と思へば悲し ま寂しく悲し
さまざまの過去を抱きて来し人ら菜の花の黄に鈴鳴らしゆく
-----------------------------------------------------------------------------
私信と抽出歌・・・・・・・・・・三崎澪(ハハキギ主宰・読売新聞京都版歌壇選者)
(前略)・・・・・あとがきも何も持たない誠に自在なる集にて、ちらちらと頁を繰ってみました。・・・・・(後略)
三椏の花はつかなる黄に会ふは紙漉きの村に春くればゆゑ
誰に逢はむ思ひにあらず近寄ればミモザの花の黄が初々し
大文字消えゆくときに背後にはくらぐらと比叡の山容ありぬ
些事ひとつなどと言ふまじ煮凝りがぷるんと震ひひれ酒旨し
--------------------------------------------------------------------------
抽出歌・・・・・・・・・・・・宮章子(口語自由律「潮」編集部)
白鳥の帰る頃かもこぶし咲き白き刹那を野づらに咲ふ
沈丁の香の強ければ雨ならむ過去は過去なり今を生きなむ
チューリップはらりと散りし一片にゴッホの削ぎし耳を想ひつ
太陽へ真つすぐ伸びる石蕗の花ひそやかな黄にまた出逢ひたり
| ホーム |