這ひながら根の消えてをり浜昼顔・・・・・・・・・・・・・・・・高橋沐石
「昼顔」は、およそ野生のもので、よく目にするものとしては「浜昼顔」であろうか。
ヒルガオ科の蔓性多年草で、各地の海岸の砂地に自生する。
砂の中に地下茎が横に走り、地上茎も長く伸びて砂の上を這い、丸くて厚く、光沢のある葉を互生する。
旺盛な繁殖力で、ときに広い面積に群生しているのを見かけることがある。
地域によって異なるが5、6月ごろ葉腋に長い柄を出し、淡い紅色の花を上向きに開く。
この句は、浜昼顔の生態をよく観察したもので、海辺に咲く浜昼顔を過不足なく描写して秀逸である。
私には昼顔や浜昼顔を詠んだ歌はないので、歳時記から句を引いて終わる。
きらきらと浜昼顔が先んじぬ・・・・・・・・中村汀女
浜昼顔咲き揃ひみな揺れちがふ・・・・・・・・山口草堂
浜昼顔風に囁きやすく咲く・・・・・・・・野見山朱鳥
はまひるがほ空が帽子におりてきて・・・・・・・・川崎展宏
浜昼顔タンカー白く過ぎゆける・・・・・・・・滝春一
浜ひるがほ砂が捧ぐる頂きに・・・・・・・・沢木欣一
昼顔のあれは途方に暮るる色・・・・・・・・飯島晴子
海高し浜昼顔に跼む吾に・・・・・・・・森田峠
浜昼顔鳶が落とせし魚光り・・・・・・・宮下翠舟
浜昼顔廃舟錨錆び果てぬ・・・・・・・・小林康治
潮泡の音なく崩れ浜昼顔・・・・・・・・稲垣法城子
天日は浜昼顔に鬱(ふさ)ぎつつ・・・・・・・・中村苑子
浜昼顔島の空港影もたず・・・・・・・・古賀まり子
風筋は浜昼顔を駈け去りし・・・・・・・・加藤三七子
つつつつと浜昼顔の吹かるるよ・・・・・・・・・清崎敏郎
海鳴りや浜昼顔の引けば寄り・・・・・・・・下鉢清子
浜昼顔に坐すやさしさの何処より・・・・・・・・向笠和子
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