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K-SOHYA POEM BLOG
私のBLOGは詩歌句の「短詩形」文芸に特化して編集している。 今はもう無くなったが、朝日新聞の大岡信「折々のうた」などの体裁を参考にして少し長めの記事を書いている。自作も多めに採り上げている。
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河瀬直美監督・樹木希林主演・映画『あん』を観る・・・・・・・・・・・・木村草弥
あん①
あん②
あん③
あん④

──映画鑑賞──

     河瀬直美監督・樹木希林主演・映画『あん』を観る・・・・・・・・・・・・・木村草弥

樹木希林主演の映画を観るのは『わが母の記』以来、久しぶりである。イオンシネマ高の原で観た。
冒頭から黄色い電車がしきりに走る場面があり、見たことのある車両だなと思っていたら西武電車の車両だった。
ほぼ全編が東村山市内で撮影されたらしい。
ロケ地となった国立ハンセン病療養所「多磨全生園」のシーン。
撮影場所となった園内や西武線久米川駅前の桜並木、空堀川の河原などである。

主演は樹木希林、どら焼き屋を演じる永瀬正敏、店を訪れる女子中学生・内田伽羅などである。

ストーリーは、
「萌の朱雀」で史上最年少でカンヌ国際映画祭新人監督賞を受賞、「殯の森」ではカンヌ国際映画祭グランプリを受賞した河瀬直美監督が、2014年に旭日小綬章を受章した名女優・樹木希林を主演に迎え、ドリアン助川の同名小説の映画化。
あることがキッカケで刑務所暮しを経験し、どら焼き屋の雇われ店長として日々を過ごしていた千太郎。
ある日、店で働くことを懇願する老女、徳江が現れ、彼女が作る粒あんの美味しさが評判を呼んで店は繁盛していく。
しかし、徳江がかつてハンセン病を患っていたという噂が流れたことで客足が遠のいてしまい、千太郎は徳江を辞めさせなければならなくなる。
おとなしく店を去った徳江だったが、彼女のことが気にかかる千太郎は、徳江と心を通わせていた近所の女子中学生ワカナとともに、徳江の足跡をたどる。
千太郎役に永瀬正敏、ワカナ役には樹木の孫娘である内田伽羅が扮した。



動画の引用で申し訳ないが、ストーリーを知ってもらいたいためである。

<あんを炊いているときのわたしは
 いつも、小豆の言葉に、耳をすましていました。
 それは、小豆が見てきた雨の日や晴れの日を、想像することです。
 どんな風に吹かれて小豆がここまでやってきたのか、
 旅の話を聞いてあげること。
 そう、聞くんです>

映画の中での、徳江のセリフである。

原作はドリアン助川の『あん』(ポプラ文庫)で、この本が出て、樹木希林と河瀬直美に一冊づつ贈呈して映画化を望み、ここに実現したのだという。

買ってきた「あん」オフィシャルブックの中で、監督・河瀬直美が、こう書いている。  ↓

    慈しみあう世界の扉へ     河瀬直美

桜は死をイメ ージする花だ。
あんなにも狂喜的に乱れ咲き、あんなにも潔く散り急ぐ花もほかにはないだろう。
だから人は、その人生を託すように桜を愛でるのか……。

そんな満開の「桜」の木の下で出会った二人。千太郎と徳江。
彼らの生きてきた時代やその人生は明らかに違うが、それぞれの魂がさまよっている場所は限りよく近い。
社会はいつも人の希望を叶えるとは退らない。
時に希望を奪う場所でもある。

前半三分の一あたりで徳江がかハンセン氏病患者であるということが明かされてからのこの物語は、
一気に深みを増し、人間の本質的なありようを克明に描きはじめる。
わたしは、この人生の宿命のようなものを、「あん」という物語にのせて映像で表現することに出逢えた悦びを、今、かみしめている。
複雑な時代背景をべースに人間の悟りを得る、高らかなものであればと思う。

またこの物語において「壁」の存在は特別な意味を持つ。
その「壁」は、彼らの人生を確実に思盧深くする。
千太郞が味わった壁は、自らのあやまちによって。
対して、徳江のそれは、否応もなくそうさせられてしまった時間の、それも膨大な人生のほとんどに影響する。
すべてを否定され、人格を奪われ、子を産むことも許されなかった時代。そんな中で、徳江が悟った世界──。
彼女の感じる「幸せ」のありようは、私たち現代社会を生きる人間に多くを学ばせる。
この時代に誕生されるべくして誕生する物語。
それは、人間の尊厳を奪われてもなお「生きよう」とした人の物語である。

桜の咲く時期に出逢ったふたりが、季節を一巡してまた桜の時期に魂と魂で出逢うこの物語は、「ものの声を聴く」という行為から結実してゆく。
千太郎の告白と徳江の告白。それらは知らないふりをしていればやり過ごせること、やり過ごしてきたことを、再度、つなぎなおす作業でもある。
そうしてやがて、自分たちは「人間である」とうその一点にしがみつき、誇りを持って「生きる」ということの真実がたち現れるのだ。

閉ざされた「壁」の存在を超えた心でつながりあえる作品として、この世に誕生されるべき「あん」という映画。
人は幾度の挫折を釆り越えて、その高みに行くことができるのだろう。
もの言わぬものと向き合い、もの言わずともそれらが変化しはじめるとき、その交歓を描く作品になればと思う。
人生の後悔。自暴自棄。この世で自分はまったく役にたっていないのではないかという焦燥感。
それでも、いやそれだからこそ持ち続ける、かけがいのない未来への想い──。

わたしが観なければ、夜空にあらわれた満月も存在しないのと同じだ。
ただそこに在るだけではない。わたしがいるから、それが存在する。

お互いがお互いをそう想いあい慈しみあう世界への扉が、ここにある。
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深刻だが、佳い映画だった。
樹木希林はガンに侵され、闘病中の身であるという。 ご自愛を祈りたい。

河瀬直美 永瀬正敏 樹木希林 内田伽羅 の皆さんの詳しくは、 ← このリンク先で。




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