
──藤原光顕の歌──(20)
藤原光顕の歌「西日の納戸」12首・・・・・・・・・・・・・木村草弥
・・・・・・・・・「たかまる通信」No.99/2015/07/01所載・・・・・・・・・・・
西日の納戸 藤原光顕
庭ほどの御所の杜消えて半世紀 母が祈ってくれた祠まだあるはず
タブロイド2頁の朝日新聞を知っているか 極小の活字が輝いていた
少年倶楽部子供の科学家の光活字ならなんでもよかった昭和二十年
本当に宇宙人はいたんだ七十年前枯れ萱原に紛れていった半透明
五億年先のどこかの星人の見ている夢 でもつじつまは合う
故里は西日の納戸 古い箪笥 あと先もない時間の溜まり
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まず戦争であった 北風の田んぼでは戦争ごっこを強いられた
戦いの訓練として苛め合う 叩かれたり殴られたりの弱虫だった
殴られるのは痛かった非国民と罵られるよりも痛かった
殺す自由は殺される自由と読んでしまう 臆病者でスミマセン
戦いたがっている声も無視できません私が最髙責任者です
もう一度敗戦の悲惨舐めたいのか 泣いてすぐまた忘れられるか
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藤原光顕さん主宰の季刊誌「たかまる通信」が、いよいよ次号で100号を迎えることになった。
神戸市の西部・高丸に住んでおられたので「高丸通信」として発足したのだが、ご子息の住まいする京都市西郊に同居されることになり、誌の名前を「たかまる」にされた。
今号の作品は、故里の風景へのノスタルジーから、戦争末期の新聞、雑誌「少年倶楽部」などの思い出に繋がってゆく。
そして、戦争中の「叩かれたり殴られたり」の理不尽な記憶。
いま「戦いたがっている声」が声高に叫ばれる。
今回の一連は「比喩」表現になっているので、慎重に味わっていただきたい。
特別作品として載っている、関広範「従軍短歌」10首も素通りできない。 ひとつだけ引いておく。
*もろこしの畑を貫く弾の音いくたび聴きて逝きし兵らよ
贈呈有難うございました。 時候がら、御身ご自愛を。
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