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K-SOHYA POEM BLOG
私のBLOGは詩歌句の「短詩形」文芸に特化して編集している。 今はもう無くなったが、朝日新聞の大岡信「折々のうた」などの体裁を参考にして少し長めの記事を書いている。自作も多めに採り上げている。
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京響第592回定期演奏会を聴く・・・・・・・・・・・・・木村草弥
京響①
京響②

──京都市交響楽団を聴く──(3)

     京響第592回定期演奏会を聴く・・・・・・・・・・・・・木村草弥
              ・・・・・於・京都コンサートホール 2015/07/19・・・・

時しも七月二十日は「海の日」記念日ということで、演目も「海」に因むものが選ばれた。 図版を参照されたい。
図版に出したが、読みにくいので「指揮者」の経歴を出しておく。

ジョン・アクセルロッドは現代曲を含む幅広いレパートリー、革新的なプログラミング、そしてその力リスマ性で世界各国のオーケストラから常に共演を望まれている指揮者のひとりである。
ルツェルン交饔楽団・歌劇場の音楽監督兼首席指揮者、フランス国立口ワール管弦楽団音楽監督を歴任、現在はミラノ・ジュゼッぺ・ヴェルディ交響楽団首席指揮者を務めており、2015/16年シーズンからスペイン王立セヴィリア交響楽団芸術監督に就任する。また、2009年から2012年にはウイ一ン-コンツェルトハウスでのORFウィーン放送交響楽団との映画音楽ガラ•コンサート「ハリウッド・イン・ウィーン」の音楽監督も務めた。
これまでにベルリン放送交響楽団、北ドイツ放送交響楽団、ケルン•ギュルツェニッヒ管弦楽団、ライプツィヒ・ゲヴアントハウス管弦楽団、ドレスデン・フィルハーモニー管弦楽団、パリ管弦楽団、フランス国立リヨン管弦楽団、ロンドン・フィルハーモニー管弦楽団、ロイヤルフィルハーモニック、フィルハーモニァ管弦楽団、ローマ・サンタチェチーリア管弦楽団、トリノ RAI国立交響楽団,ロイヤル・ストックホルム管弦楽団,デンマーク国立管弦楽団,オスロ・フィルハーモニー管弦楽団、スウェーデン放送交響楽団、グルベンキアン管弦楽bfl、ウィーン放送交響楽団、ザルツブルク-モーツアルテゥム管弦楽団、シンフォニア・ヴァルソヴィア、さらにワシントン・ナショナル交響楽団、ロサンゼルス・フィルハーモニック、フィラデルフィア管弦楽団、シカゴ交響楽団、NHK交響楽団、京都市交響楽団、上海交響楽団等、これまでに150以上の世界各地のオーケストラを指揮、度々再招聘されている。

オペラ指揮者としても意欲的な活動を展開、ルツェルン歌劇場での数々のプロダクション、ブレゲンツ音楽祭でのクルシェネクの新作『聖ステフアン大聖堂の周りで』に加えて、ロバート・カーセン演出の『キャンディ一ド』でのパリ・シャトレ座、ミラノ ・スカラ座、オリヴイエ・ピィ演出の『トリスタンとィゾルデ』でのアンジェ=ナント歌劇場での成功は特筆される。
とりわけ現代作品の紹介には積極的に取り組み、ミシェル・ファン・デル・アー、カリム・アル=ザンド、マノレク=アンドレ・ダルバヴィ、アヴネル・ドルマン、パスカル・デュサバン、マイケル・ゴードン、ヴォイチェフ・キラール、ガブリエル・プロコフィエフ、ヴオルフガング・リーム、力イヤ•サーリアホ、マルコ・スト口ッパ、ヨルグ・ヴィトマン等の初演を手掛けている。

レコーディングも数多く、グレツキ《悲歌のシンフォニー》、そして最新盤の"Brahms Beloved""(ブラ一ムスの交饔曲全集、クララ・シューマンの歌曲を収録)は特に高い評価を得ている。

アクセルロッドは、1988年ハーヴァード大学を卒業、指揮をレナード・バーンスタインとイリャ・ムーシンに学んだ。
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Program Notes    増田良介(音楽評論家)• Ryosuke MASUDA

海と人間のかかわりは深い。海を描く絵画や物語や音楽は世界中に数え切れないほどある。そして、美しかったり優しかったり恐ろしかったり、海はたくさんの顔を持つ。だから芸術家たちの描く海も多様だ。海軍軍人として海をよく知っていたリムスキー=コルサコフは、《シェエラザード》で、どんな不思議なことも起こりうる遙かな異世界として海を描いた。対照的なのがドビュッシーで、彼は、豊かに表情を変えていく海の色彩と運動に着目し、それをそのものとして精緻に捉える。
そして、プリテンの歌劇《ピーター・グライムズ》に登場する海は、人々の心理と運命を敏感に反映する存在だ。

本日指揮をするジョン•アクセルロッドは京響に3度目の登場となるが、毎回筋の通ったプログラムを組んでくれるマエストロだ。初登場は2009年、ラヴェルやリムスキー=コルサコフなどの「スペイン」にちなんだプログラムだった。2回目は2013年、ベートーヴェンとワーグナ一の重厚なドイツ•プログラムを聴かせてくれた。大好評だった2度の演奏会に続く今回は、三人の大作曲家が描いた「海」がテーマだ。まさに海を越えて世界中を飛び回るアクセルロッド、極めつけの名曲3曲でどのような演奏を聴かせてくれるだろうか。

■プリテン:歌劇「ビータ一・グライムズJから「4つの海の間奏曲J op.33a
20世紀イギリスを代表する作曲家べンジャミン・プリテン(1913 — 1976)は多くの分野に作品を残したが、本領と言うべき分野は全15曲に及ぶオペラだ。ヴェルディやワーグナ一のオペラはどうも馴染めないという人がいたら、ぜひ一度、20世紀のオペラを試してみてほしい。ブリテンのほかヤナーチェク、ベルク、R・シュトラウスといった作曲家たちのオペラは、19世紀の名作オペラよりも近代演劇近く、我々の心をつかむリアリティのある物語が多い。ブリテンの最も有名な才ペラ、1944年から45年にかけて作曲されたくビータ一'グライムズ〉はまさにその典型だ。
イギリス東海岸の小さな村に住む漁師ピーターは、偏屈で粗暴な性格で、村の人々との付き合いもほとんどなく、 孤独に暮らしている。あるとき、ピーターのもとにいた徒弟が、二人連続で事故死してしまう。村人たちから虐待と殺人を疑われたピー夕一は錯乱状態になり、居場所のない村を出て、夜明け前の暗い海に一人漕ぎ出す…。このオペラは、そんな暗鬱な物語だ。ごく普通の村人たちの集合的な悪意(日本的に言えば「村八分」)によって破滅に追い込まれるビータ一の物語には,我々が観ても他人事とは思えない生々しさがある。
オペラは、プロローグと全3幕からなり、それぞれの幕は各2場に分かれている。
つまり、全部で7つの場面があり、それらの間にはオーケストラだけによる間奏曲が置かれている。ブリテンは、その6つの間奏曲から4曲を選び、《4つの海の間奏曲》として出版した。「海に依って生きる人々の絶えざる闘争に対する私の認識」を表現しようとしたというこのオペラにおいて、海はもう一人の重要な登場人物とも言える存在感がある。
これらの間奏曲は、海のさまざまな表情を描くと同時に、人々の心理や運命を映し出し、物語にいっそうの深みを与えている。

1 - 「夜明け」レント・エ・トランクィロ
第1幕への間奏曲。夜明けの静かな海を描く。かもめの声が波と対話する。

2 - 「日曜の朝」アレグロ・スピリトゥォーソ
第2幕への間奏曲。明るい光の中、教会の鐘が鳴り、人々が教会へ向かう。

3- 「月の光」アンダンテ・コモド・エ・ルパート
第3幕への間奏曲。静かな夜の海を月光が照らす。

4- 「嵐」プレスト・コン・フォーコ
第1幕第2場への間奏曲。荒れ狂う嵐の海を描く。

初演:1945年6月13日チェルトナム作曲者指揮 ロンドン•フィルハーモニー管弦楽団
編成:フルート2 (両者ピッコロ持ち替え),オーボエ2、クラリネット2 (第2は小クラリ
ネット持ち替え)、ファゴット2、コントラファゴット、ホルン4、トランペット3、
トロンボーン3、テューバ、ティンパニ、タムタム、チューブラーベル、木琴、シン
バル、大太鼓.小太鼓,タンブリン、ハーブ、弦五部

■ドビュッシー:交響詩「海」
クロード・ドビュッシー (1862〜1918)は、一作ごとに過去の自分を乗り越えなければ意味がないと考えていた作曲家だ。1903年夏に着手され、1905年3月5日に完成した《海》は、千変万化する海の色彩や運動を、大胆な響きと自由な形式によって描き出した傑
作で、いわゆる印象主義的な音楽の代表作と見なされている。
デュラン(楽譜出版社)宛の手紙(1907年)でドビュッシーは「音楽とは、その本質からして、厳格で伝铳的な形式の内«で流れることのできるようなものではないと、ますます感じています。それは、色彩と、リズム化された時間とから構成されているのです」と書いた。この「色彩と、リズム化された時間とからなる音楽」という考え方は、く海〉に最もよく当てはまるように思われる。
ところで、そのデュラン社から出版された《海》の楽譜の表紙には、北斎の版画『神奈川沖浪裏』の大きな波がデザインとして使われた。これについて、同社の経営者ジャック・デュランは、ドビュッシーの死後、次のように回想している。「…私はまた、大きな波を描いた北索の版画がこの書斎に飾られていたことを思い出す。
ドビュッシーはこの波に特別に魅了されていた。《海》を作曲する際、この波が霊感を与えたので、彼は我々に、楽譜の表紙にこの絵を使うよう求めた」具体的にどのように、そしてどの程度の影響があったかは不明だが、北斎の大胆な海の捉え方が、ドビュッシーにヒントを与え、あるいは少なくとも勇気づけたということはあったかもしれない。

1- 「海の夜明けから真昼まで」非常に遅く〜少しずつ活気づき
神秘的な暗い海に日が昇り、やがて壮麗な真昼のクライマックスに至る。

2- 「波の戯れ」アレグロ〜生き生きと
小さな音域を往復する動機が次々に姿を変え、尽きることのない波の変容が描かれる。

3- 「風と海との対話」生き生きと、そして、騒然と〜わずかに遅く
時には静かに、時には激しく、風と海との相互作用が繰り返され、激しいクライマックスを築く。

初演:1905年10月15日パリ力ミーユ・シュヴィヤール指揮ラムルー管弦楽団
編成:ピッコロ、フルート2、オーボエ2、イングリッシュホルン、クラリネット2、ファ
ゴット3、コントラファゴット、ホルン4、トランペット3、コルネット2、トロン
ボーン3,テューパ、ティンパニ,大太鼓、トライアングル、シンバル、タムタム、
グロッケンシュビール、ハープ2、弦五部

■リムスキー=コルサコフ:交響組曲「シェエラザードJ op.35
ニコライ・リムスキー=コルサコフ(1844 ~ 1908)が1888年に完成した交響組曲≪シェエラザード≫は、『千一夜物語(アラビアン•ナイト)』の心躍る世界を描いている。といってもこの曲は、特定の物語を説明的に描写する音楽というわけではない。作曲者が4つの楽章に付けた標題も,便宜的に使われ続けてはいるが、実は最終的に撤回されているのだ。
とはいえ、作曲者の語り口は実に巧みだ。r千一夜物語』では、暴君シヤーリヤール王に対して、聡明な王妃シヱェラザードが毎晚いろいろな物語を聞かせる。
全曲の冒頭に出てくる威圧的な旋律が王で、それに続くヴアイオリン•ソロの楚々とした主題がシヱェラザードだ。二人の主題は全曲を通じて随所に顔を出すが、これは、物語の「地の文」にあたると考えればわかりやすいだろう。しかし、ただそのまま顔を出すのではなく、テンポや強弱が変わったり、出てくる場所も物語の最初だったり途中だったりと、実に表情豊かなのだ。このころリムスキー=コルサコフは《小ロシア幻想曲》、序曲〈ロシアの復活祭>、(スペイン奇想曲〉と、独奏ヴァイオリンが活躍する管弦楽曲を多く書いているが、《シェエラザ一ド》での独奏ヴァイオリンの扱いの巧みさは格別だ。
もう一つ重要なのが、華麗なオーケストレーシヨンだ。リムスキー=コルサコフは、クラシック音楽の歴史の中でも屈指のオーケストレーションの名手だった。
彼がいなければ、ストラヴインスキーの三大バレエもレスピーギのローマ三部作も生まれなかっただろう。
《シェェラザード》は、彼のオーケストレーシヨン技術の精髄というべき傑作だ。一つの旋律が、楽器の組み合わせだけを変えて繰り返され、多彩な表惰を見せる様子は、何度聴いても驚嘆させられる。

1- 「海とシンドパッドの船」ラルゴ・エ・マエストーソ〜アレグロ・ ノン・トロッポ
不機嫌そうな王も、シェエラザードが語り始めると、すぐに物語に引き込まれる。
そこに広がるのはシンドバッドの冒険する大海原だ。

2- 「カランダール王子の物語」レント〜アンダンティーノ
ファゴットの吹く東洋舞曲風の主題と、王の主題に似たもう一つの主題が、表情を変えながら繰り返される。

3- 「若い王子と王女」アンダンティーノ・クヮジ・アレグレット
優しさに満ちた甘美な弦の主題と、やや速く明るい舞曲主題が交代に現れ、のどかな物語が語られる。

4- 「バグダッドの祭り。海。船は靑銅の騎士のある岩で難破。終曲」アレグロ.モルト
心はやる王に促されてシェエラザードが語る物語は、息もつかせぬドラマティックなものだ。物語が余韻を残して終わり、静かに現れる王の主題からは、残虐さも消えている。

初演:1888年10月22日 サンクトペテルブルク 作曲者指揮マリインスキー劇場管弦楽団
編成:ピッコロ、フルート2、オーボエ2 (第2はイングリッシュホルン持ち替え),クラリ
ネット2、ファゴット2、ホルン4、トランペット2、トロンボ一ン3、チューバ
ティンバニ、タンブリン,大太鼓、小太鼓、シンバル、トライアングル、夕ムタム、
ハープ、弦五部
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貰ってきたパンフレットの増田良介が書いているように、リムスキー・コルサコフの見事なオーケストレーションに尽きる、と言っていいだろう。
バイオリン、チェロ、オーボエ、トランペット、ドラム、ハープなどの「ソロ」の演奏も見事だった。
十九世紀の華麗なオーケストラに酔ったマチネーだった。 現代音楽もいいが、この時代のオーケストレーシヨンの確かさを再確認した。
祇園祭の前祭が済んで、時しも梅雨が明けるという、蒸し暑い午後であった。





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