K-SOHYA POEM BLOG
私のBLOGは詩歌句の「短詩形」文芸に特化して編集している。 今はもう無くなったが、朝日新聞の大岡信「折々のうた」などの体裁を参考にして少し長めの記事を書いている。自作も多めに採り上げている。
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しんしんと雪ふりし夜にその指のあな冷たよと言ひて寄りしか・・・・・・・・・・・・斎藤茂吉
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──冬の愛欲5態──

     ■しんしんと雪ふりし夜にその指の
        あな冷(つめ)たよと言ひて寄りしか・・・・・・・・・・・・斎藤茂吉


斎藤茂吉の妻は輝子というが、輝子は斎藤精神病院の跡取り娘で、茂吉は養子である。
北杜夫などの子供をもうけているが、輝子の恋愛事件などがあって一時別居生活などをしていた。
これらのことは「アララギ」の弟子たちの伝記などで詳しく伝えられている。
この歌がいつ頃のものかなども同定されているが、いま私の手元にはないので詳しくは書けない。
今の時代となっては女性からの反発もあるが、昔は遊郭なども公認であるから「女買い」は男性の常識であって、男どもは独り身の場合は、そういうところで性の発散をしていたのである。
赤線廃止は昭和20何年かのことである。
茂吉が、そんな赤線地帯に入り浸っていたのも実証されていることで、茂吉は日記を克明に付けることでも有名で、彼自身の手でもいろいろ書かれているらしい。

この歌の対象が誰であるかの詮索は別にして「ああ、冷たい指をしているね」なんとか言いながら、女の指を暖め、愛撫しながら、愛欲の渦に入ってゆく、という情景が、よく詠まれている。

     ■火を産まんためいましがた触れあえる
         雌雄にて雪のなか遠ざかる・・・・・・・・・・・・・・・・・岡井隆


この歌の作者・岡井隆は、ひところ前衛歌人の一翼を塚本邦雄と共に担った人である。
が、私生活では度々離婚騒動を起こしている人で、最近では、二十数年前に妻子と別れて自分の年齢とは半分も年下の30代なかばの画家の人と結婚したことで有名である。
この歌は若い頃の歌集『土地よ、痛みを負え』(昭和36年刊)に載るものである。
いきなり読んで誰の心にもすんなり入ってくる、という歌ではない。
二人の性的接触が精神的側面と不可分のものとして捉えられているため、歌の中で「比喩」の占める比重が、ひときわ大きくなっているからである。
「火を産まんため」とは、まさに激しい性の焔を意味すると同時に、精神的な意味での、ある創造的な焔をも意味しているだろう。
しかも作者は肉体的・官能的側面に、むしろ固執しており、そこから「雌雄」という語も出てくる。
内から突き上げる官能の衝動への賛美の念が根底にあるのだ。

     ■目瞑(つむ)りてひたぶるにありきほひつつ
        憑(たの)みし汝(なれ)はすでに人の妻・・・・・・・・・・・・宮柊二


この人も北原白秋門下にあって、のち白秋亡きあと独立して短歌結社「コスモス」を興して大きな組織に育てあげた人である。
この歌も若い頃のことを詠ったものである。はじめの恋人との交流を詠っている。
その君は、今や他人の妻となってしまった、という歌である。
「ひたぶるにあり」「きほひつつ」というくだりに、若い恋人どうしのひたむきな愛欲が詠まれている。

     ■夢のなかといへども髪をふりみだし
        人を追ひゐきながく忘れず・・・・・・・・・・・・・・・大西民子


この歌も有名な歌であり、彼女の場合は、夫が彼女を捨てて他の女に走った。
彼女は彼のことが忘れられず、数々の歌を詠っているが、この歌は、その中のひとつ。
彼女は奈良女子高等師範の出身で、卒業後東京近郊で教師をしていた。
木俣修門下の重鎮として大きな結社を支えていた。
木俣修も北原白秋門下であった。白秋亡きあと結社「形成」を主宰していた。

     ■わがためにひたぶるなりし女ありき
         髪うつくしく夜にはみだれき・・・・・・・・・・・・・・岡野弘彦


この人も現代歌壇を担っているひとりである。国学院大学で釈迢空(折口信夫)の門下として晩年の彼に身近に仕えた人である。
この人には、こういう女人のことを詠った歌が多い。齢90を超えた歳になっても、若い乙女との愛欲にまつわる幻影的な歌を作っている。
「夜にはみだれき」というくだりなどは、かなり際どい表現と言えるだろう。

ここに挙げた人たちは、現代歌人として著名な人たちであるが、文人らしく、赤裸々とも思える表現で「愛欲」を詠んでいる。
これこそ文学の徒として必須の態度であろう。


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