K-SOHYA POEM BLOG
私のBLOGは詩歌句の「短詩形」文芸に特化して編集している。 今はもう無くなったが、朝日新聞の大岡信「折々のうた」などの体裁を参考にして少し長めの記事を書いている。自作も多めに採り上げている。
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喪中欠礼の葉書数葉脇に置き生ける人らに賀状書き継ぐ・・・・・・・・・・米満英男
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──季節の歌鑑賞──年頭の歌風景いくつか

     ■喪中欠礼の葉書数葉脇に置き
           生ける人らに賀状書き継ぐ・・・・・・・・・・米満英男


米満氏は私の兄事する歌人であった。昭和三年生まれ。先年亡くなられた。
亡くなられたときにブログに記事を書いた。
この歌は角川書店「短歌年鑑」の過年度(2008年)の「自選作品集」に載るもので、
「賀状欠礼」と題する5首のうちのものである。
前後に載る歌を引くと

   ・しんかんと大根抜かれし畑の穴満月の下いよよ冥(くら)かり・・・・・・・・・米満英男
   ・朝夕に向かふ食卓この狭く温き平面を日常と呼ぶ
   ・目頭が目尻を詰(なじ)り言ふことにお前すこしはその尻拭へ
   ・この歳まで生くればついで百歳まで生くるべしなんて はい冗談冗談

とあり、何とも洒脱なものである。以下、引用は同じところから。

  ■新(にひ)年のふるさとの山明けそめて
    はろばろとおもふ <春はあけぼの>・・・・・・・・・・・・・・・志野暁子

  ■波の穂に止(とど)まれるかにかもめ飛び
    沖ほの暗し冬の日本海・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・金子正男

  ■無尽数の雪片意思をもつごとく
    海に降り陸(くが)に降り人間(じんかん)に降る・・・・・・・・橋本喜典

前後に載る歌を引く。

   ・この年の初の買物ずつしりと上下二冊の『道元禅師』・・・・・・・・・・・橋本喜典
   ・白き葉を紅がつつめる寒椿眼を遣るたびにわれをみつむる
   ・初出勤の朝戴きしチョーク箱いづれはわれの柩に入れよ
   ・少(わか)き日の疑問の奥に在りしもの解らねばいまだ老いに到らず

この人は早稲田高校の校長をされた人である。

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     ■ふるふると宇宙に地球が浮いてゐる
          サッカーボールのやうな淋しさ・・・・・・・・・・・・・・由良琢郎


地球は、まさに宇宙に宙づりに浮いているのであるが、それを「サッカーボール」のような「淋しさ」と捉えたところが凄いと思う。
いつも言うことだが、詩というのは陰影を深めるためには「比喩」表現に尽きる。
そういう観点から見ても、この歌は詩として自立し得ているだろう。

「凄い」と言えば、この歌の前に載る作品を引く。

   ・このごろのわれの自在は一瞬に物忘れする凄さもち初む・・・・・・・・・・・・・・・由良琢郎
   ・夜半覚めてふとかなしめり抽出しに余分の時計刻(とき)きざみつぐ

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     ■いつの日か惚け行くらむ素焼の皿に
          盛らるる夢のはんなりとあり・・・・・・・・・・・・・・・山中加寿


ここに引く何人かの人の歌群は、いずれも「老い」の寂寥を湛えていて、それぞれの様相の違いはありながら、いずれも秀逸である。
この山中さんの歌は「素焼きの皿に盛られる夢」という表現が、何とも「詩的」である。
この後につづく歌には

   ・箒持つをりに嗚咽の始まりぬ梅雨のさなかに南瓜はな持つ・・・・・・・山中加寿

この歌は、2008年春四月に亡くなった師・前登志夫の死を思っての「嗚咽」であろう。

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 ↑ モンブラン万年筆

     ■パイロットインクをずっと使ってた
         あなたに遭えたころのブルーよ・・・・・・・・・・・・・・・上野久雄


上野久雄氏は2008年秋9月17日に亡くなった。
この一連は死の前に投稿されていたものである。
上野氏は昭和二年生まれ。短歌結社「未来」創刊以来の同人で、「みぎわ」という自分の歌誌を創刊して才能ある歌人を育てられた。
私なども若い頃は万年筆のインクはパイロットの「ブルーブラック」のインク壺を愛用していた。ご冥福を祈りたい。
この歌は、「未来」の主宰者だった近藤芳美の若い頃の「相聞歌」そっくりの趣を湛えている。

この歌の前後につづく一連を引いて、終りたい。

   ・一切れのロールケーキを食いて立つ死はたしか四時過ぎであるから・・・・・・・上野久雄
   ・午後からは編集会に行くのだと晴れた球場の空に手を振る
   ・稀にしてああ病感のなき目覚め味噌汁の具に今朝はしじみを
   ・西空に集まっている雲たちや一番知っているのは俺さ


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