
指先をいつもより濃きくれなゐに
染めてひとりの午後を楽しむ・・・・・・・・・・・・鈴木むつみ
この歌は角川書店・月刊誌「短歌」2013年2月号に載る「指」という題詠に採用されたものの一つである。
一人暮らしの女の人の心情を、よく表現している。
今しも春めいてきて、心も浮き立つ季節の到来と言える。
掲出歌とは違う趣の歌群だが、いくつか引いて終わりたい。
節高き指は女の勲章と自ら思ひ主婦の座守る・・・・・・・・西村麗子
幼子の指絵のために取り置かむ冬の朝の硝子の曇り・・・・・・・梶田有紀子
さ、よ、う、な、ら、指の先から逃がしつつひとは手を振るまた会うために・・・・・・木原ねこ
指先を想像させる優美さよ腕を失くしたミロのビーナス・・・・・・波多野浩子
常務派と専務派とあり遊戯にはあらぬこの指とまれの誘ひ・・・・・・山崎公俊
指貫をゆつくり外し夕食のメニュー考へてゐるらし妻は・・・・・・・・加藤英治
うろこ雲遠く遠くへ押しやりて秋風のなか指笛を吹く・・・・・・・・・・木立徹
絵本読む幼の指のつと止まるつかえし文字は一つとばせよ・・・・・・・・中村佐世子
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