
──高田敏子の詩鑑賞──(3)──再掲載・初出2007/04/11 Doblog──
雑草の花・・・・・・・・・・・・・・・・・・・高田敏子
紫大根の花が咲いていた
半日の外出から帰った夕ぐれの
家の戸口の傍らに
いつの間に
そこに芽をのばしていたのでしょう
少しも気づかずにいて
いま目にする花の紫
昨年もそこに咲いていたと
それさえ忘れていた私に
花は静かな微笑の姿を見せている
そう!
こうした雑草は
待たれることなく
咲き出すのだ
人目についても つかなくても
花を咲かせて
咲くことの出来た自分自身に
静かな微笑をおくっているのだ
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この詩は高田敏子の詩集『こぶしの花』1981年花神社刊に載るもの。
高田敏子の詩は、難解な言葉は何もない。難しい暗喩もない、平易な表現である。それでいて、詩全体から漂う雰囲気に読者は虜になってしまう。
ただ、この詩の題「雑草の花」というのには引っかかるが、それは「雑草」というものはなく、どんな草にも、みんな名前があると思うからである。
事実、作者も詩本文の中では「紫大根」という名前を書いているのだから、題名もそれにしてもらいたかった。
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高田敏子の詩集には1954年の『雪花石膏』1955年の『人体聖堂』にはじまって20冊近くが刊行されている。
ここで、同じ詩集に載る短い詩を一つ紹介する。
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こぶしの花・・・・・・・・・・・・・・・・・高田敏子
あなたの好きな
こぶしの花が咲きました
ご健勝にお過ごしのご様子
およろこびしています
四行の文字
四行のことば
誰に見られても困らない
一枚のはがき
長い年月のむこうに咲く
こぶしの花
見上げる花枝の上に
形よい雲のひとひらが浮いていた
ありがとう
文字にはしないことばを
ひとこと送って
文箱に納める
こぶしの花
ひとひらの雲はそのまま消えずにあって
肩のあたりがふわっと
あたためられている
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