
老いらくの肩にぞ触るる枝先の
しだれてこの世の花と咲くなり・・・・・・・・・・・・・・木村草弥
この歌は私の第四歌集『嬬恋』((角川書店)に載るものである。
この歌の前後に
樹の洞に千年の闇いだくらむ三春の桜は滝の飛沫に
一もとの桜の老木植ゑられてここが墓処(はかど)と花吹雪せる
やすやすと齢加ふるにもあらず釈迦十弟子に桜しだれて・・・・・・・・・・・・・・木村草弥
という歌が載っている。
いずれも桜の「明」の部分ではなく、「暗」の部分を詠んでいる。
6冊も歌集を出すと、「桜」を詠った歌もかなりあるものである。
歌集を紐解いて、先日来、集中して桜にまつわる歌を載せてみたが、まだまだあるけれども、一応このくらいで打ち切りにしたい。
というのは、桜も、ほぼ散り尽くしてしまったからである。
桜が終ると世間では、フレッシュマンたちの入社式、入学式のシーズンも終る頃である。
若人たちには頑張ってもらいたい。老い人からのエールである。
私の初めての女孫も大学を出て、某社に就職していたが、昨年結婚して家を出た。
終るにあたって、「花」=「さくら」を詠んだ句を引いておく。
花万朶さゆらぎもなく蔵すもの・・・・・・・・山口青邨
チチポポと鼓打たうよ花月夜・・・・・・・・松本たかし
丹波山城ふた国わかつ花の塚・・・・・・・・角川源義
椀に浮く花びら柚子も花の頃・・・・・・・・後藤比奈夫
花の山ふもとに八十八の母・・・・・・・・沢木欣一
花万朶をみなごもこゑひそめをり・・・・・・・・森澄雄
永劫の途中に生きて花を見る・・・・・・・・和田悟朗
吹き上げて谷の花くる吉野建・・・・・・・・飴山実
京の塚近江の塚や花行脚・・・・・・・・角川照子
白粥は花明りとぞ啜りけり・・・・・・・・山上樹実雄
花の木や只木に戻る諸木中・・・・・・・・高橋睦郎
獄を出て花の吉野をこころざす・・・・・・・・角川春樹
桃山も伏見も匂へ花明り・・・・・・・・筑紫磐井
鍵ひとつ掛けて余生の花の旅・・・・・・・・徳留末雄
帯ひくく結びて花に遊びけり・・・・・・・・塚原岬
母ひとりいかにいかにと花万朶・・・・・・・・佐藤宣子
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