K-SOHYA POEM BLOG
私のBLOGは詩歌句の「短詩形」文芸に特化して編集している。 今はもう無くなったが、朝日新聞の大岡信「折々のうた」などの体裁を参考にして少し長めの記事を書いている。自作も多めに採り上げている。
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揉みあがる新茶の温み掌にとれば溢るる想ひ思慕のごとしも・・・・・・・・・・・木村草弥
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   揉みあがる新茶の温み掌(て)にとれば
     溢るる想ひ思慕のごとしも・・・・・・・・・・・木村草弥


この歌は私の第二歌集『嘉木』(角川書店)に載るものである。
半生を茶とともに過ごしてきた者として、今やたけなわの「新茶」シーズンを黙過することは出来ないので、今日は新茶のことを採り上げる。
写真①は茶の木の新芽である。
これは単なる植物の新芽というのではなく、飲料にする「茶」の元であるから、ここまで来るのに肥料をやったり害虫防除のために苦心したりと一年間の苦労が、
この新芽に凝縮しているのである。だから、掲出した歌のような「想い」になるわけである。
私の方の茶園は「玉露」「碾茶(抹茶原料の茶)」という高級な茶製造に特化してやってきたので、茶のうちで大半を占める「煎茶」製造とは違っているが、
製茶の過程そのものは一緒である。

watch-4茶の芽

写真②の上の方に黒い帯状のものが見えるが、これは「覆下園」といって高級茶を製造するために日光を遮断するものであり、
昔は「葦簾」の上に「菰」を敷き、稲藁をばら撒いていたが、今では化学繊維のクレモナという布を敷くように変っている。
この「日光遮断」というのは経験的な知恵として昔からやられてきたことなのだが、近年の研究で、こうすることによって茶の旨みである「テアニン」というアミノ酸系の化合物の含有が上がることが判ってきたのである。
こういう労働集約的な茶栽培は手間がかかる上に「玉露」というようなものは、世の中がせちがらくなって飲まれなくなり、今や茶の消費の主流は「煎茶」それも中級品以下のものに集中してしまった。その上にペットボトルに入った「緑茶ドリンク」の時代になってしまった。

watch-3茶園

写真③は大規模な煎茶園である。茶園の中に電柱のように立っているのは晩霜を防ぐための「防霜扇」というものである。
これは新茶時期に襲う晩霜を防ぐもので、その原理は冷気は地上の低いところにたまるが、地上5メートルくらいのところの空気は暖かいので、
その空気を地表に吹き付けて霜を防ごう、というものである。
詳しくはWikipedia─防霜ファンを参照されたい。

この頃では茶園栽培も機械化によって人手を省き、栽培面積を広げてコストを下げようとする規模拡大が進んでいる。
写真④のように茶園を跨ぐような「乗用型摘採機」が取り入れられてきた。

kabuse11乗用型摘採機

写真⑤に示すように、もっと大型の乗用型摘採機も導入されてきた。

p1_001_05乗用摘採機

世界的に茶というと「紅茶」のことだが、ロシアも紅茶を生産するが、ここはソ連の時代から茶栽培も大型の摘採機械を使ってきた。
そのような趨勢が、日本でも緑茶生産に取り入れられてきたと言える。
いわゆる「トラクター」と称するものの一種である。
このくらいの機械になると乗用車などよりも遥かに高価なものだが、農作物の中では茶の価格は比較的に安定しているので、十分にペイすると思われる。

茶専門店にとって、先に書いたペットボトルの茶の普及が一番のガンなのである。
このペットボトルなどの「緑茶ドリンク」の流通は、茶専門店とは完全に別の販売ルートになっており、
自販機やスーパー、コンビニにメーカーから直接に流れるので、これが普及すればするほど茶専門店は苦境に陥る。
「緑茶ドリンク」が出回りはじめて、もう十数年になるが、私は同じ歌集『嘉木』の中で「緑茶ドリンク」の題で詠んでおいたのでWebのHPでご覧いただける。

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       緑茶ドリンク・・・・・・・・・・・・・木村草弥

  「おーい、お茶」缶ドリンクがごろりんと自販機の穴から出づる便利さ

  温めても冷たくしてもおいしおす緑茶ドリンクは春夏秋冬

  茶流彩々・爽健美茶・十六茶お茶専門店はあがつたりどす

  ビタミンC添加したれば酸化防止できると知りて茶ドリンク奔流

  ビタミンC添加の清涼感ありて若者は好む緑茶ドリンク

  勝敗は自動販売機の数で決まるルートセールスの車疾駆す

  流通の様変りして「茶葉」ならぬ「液体の茶」に苦しめられつ


のような歌を詠んでおいた。
この趨勢は年とともに強まり、今や緑茶ドリンクは日本茶流通の半分近くを占めるに至っている。
原料は、いずれも同じ茶葉であり、生産段階でドリンクパッカーが原料を多量に買い付けしようとするので、原料の奪い合いになり、ここでも専門店側は不利である。
茶業界にも、いろいろ悩みはあるのである。


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