
夾竹桃東京砂漠灼けはじむ・・・・・・・・・・・・・・千代田葛彦
夾竹桃は夏の花である。私の子供の頃には夾竹桃なんていう木は、そんなには生えていなかったが、今やあちこちに盛っている。
キョウチクトウは葉が狭く、花が桃に似ているという漢名をそのまま転用している。
夾竹桃は原産地はインドだが、江戸時代に中国から渡来して、当初は仏縁の木として寺院に植えられたが、後に一般に植栽されるようになった。
花は6月頃から咲きはじめ9月一杯咲きつづける。
とにかく炎暑が好きな木であり、強健な木なので公害にも強く、高速道路や工場地帯の隔離壁の作用をする木として多用されている。
花の色は紅色、赤色、白色などさまざまである。

炎天下に咲く花というのは限られており、夾竹桃は夏の花として欠かすことの出来ない花となった。
日本人には八月の原爆記念日、敗戦記念日など炎暑の時期に重い、辛い記憶の日々がめぐって来るが、それらの折々の風景として夾竹桃が強く脳裏に焼きつくのである。
生命力の強さに励まされるという人も居る。ただ毒を持っているので敬遠される向きもある。
明治維新の後の「西南戦役」の際に兵士が、この木で箸を作って十数人が死亡したということが伝えられている。
私の歌にも夾竹桃を詠んだものはあるが、今回は遠慮して、歳時記に載る俳句を引いて終わる。
句に詠まれるのも多く、俳人には好まれる花のようだ。
夾竹桃戦車は青き油こぼす・・・・・・・・中村草田男
夾竹桃旅は南へばかりかな・・・・・・・・福永耕二
夾竹桃花のをはりの海荒るる・・・・・・・・桂信子
夾竹桃昼は衰へ睡りけり・・・・・・・・草間時彦
白は目に涼し夾竹桃さへも・・・・・・・・稲畑汀子
うらごゑのどこからかして夾竹桃・・・・・・・・高島茂
歯を抜きてちから抜けたり夾竹桃・・・・・・・・角川照子
夾竹桃河は疲れを溜めて流れ・・・・・・・・有働亨
夾竹桃燃ゆる揺れざま終戦日・・・・・・・・松崎鉄之介
夾竹桃しんかんたるに人をにくむ・・・・・・・・加藤楸邨
夾竹桃奈良のほとけの雀いろ・・・・・・・・角川春樹
夾竹桃造船の音ぶつかり来・・・・・・・・矢島渚男
夾竹桃直線の道空港へ・・・・・・・・宮川杵名男
鬱勃たる夾竹桃の夜明けかな・・・・・・・・平井照敏
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