K-SOHYA POEM BLOG
私のBLOGは詩歌句の「短詩形」文芸に特化して編集している。 今はもう無くなったが、朝日新聞の大岡信「折々のうた」などの体裁を参考にして少し長めの記事を書いている。自作も多めに採り上げている。
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かなしみのきわまるときしさまざまの物象顕ちて寒の虹ある・・・・坪野哲久
990930a虹
  
      かなしみのきわまるときしさまざまの
             物象顕(た)ちて寒の虹ある・・・・・・・・・・・・・・・・・坪野哲久


俳句の場合の季語としては「虹」は夏季のものとされる。
日本での気象条件からすると、高温多湿の夏に虹が多いのは当然である。
冬に虹を詠む場合には、季節の言葉をつけて「寒の虹」のようにして季語とする。

この坪野哲久の「寒の虹」の歌は、そういう点から見ても面白い。
雨と太陽光線とがあって虹が立つのが普通だが、哲久は「物象顕ちて寒の虹」が立つと詠っている。
これは上の句に「かなしみのきわまるとき」と書いているように、作者の心が空に立たせた幻の虹かとさえ思わせる。
「きわまるときし」の「し」は強調の助詞である。
このように上の句と下の句とが相まって、歌に独特の孤高性と浪漫性をもたらしている。『碧巌』所載。

加藤楸邨の句に

 Thou too Brutus ! 今も冬虹消えやすく

というのがあるのを思いだした。冬の虹というのは、そういう消えやすい「はかない」ものである。
坪野哲久の歌の「かなしみのきわまるとき」という把握の仕方と相通じるものがあるかと思う。
坪野哲久については前にも一度採り上げたことがあるが、昭和初期にプロレタリア短歌運動で活躍、昭和5年、第一歌集『九月一日』を刊行したが発禁処分を受ける。
昭和46年『碧巌』で読売文学賞受賞。石川県生まれ。昭和63年没。
哲久の歌は心象を詠いあげたものが多い。叙景だけの歌というものはない。
「物象」などという「漢語」の使い方が独特である。仏教用語も多用する。
以下、少し哲久の季節の歌を引いて終わりにする。

 母のくににかへり来しかなや炎々と冬涛圧(お)して太陽没(しづ)む

 母よ母よ息ふとぶととはきたまへ夜天は炎えて雪零(ふら)すなり

 天地(あめつち)にしまける雪かあはれかもははのほそ息絶えだえつづく

 牡丹雪ふりいでしかば母のいのち絶えなむとして燃えつぎにけり

 寒潮にひそめる巌(いはほ)生きをりとせぼねを彎(ま)げてわが見飽かなく

 死にゆくは醜悪(しうを)を超えてきびしけれ百花(びやくげ)を撒かん人の子われは

 もろもろのなげきわかつと子を生みき子の貌(かほ)いたしふる霜の花

 冬星のとがり青める光もてひとりうたげすいのちとげしめ

 冬なればあぐらのなかに子を入れて灰書きすなり灰の仮名書き

 曇天の海荒るるさまをゆめにみき没細部なる曇天あはれ
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はじめから8首までの歌は、ふるさと石川県に臨終の母を看取った時の歌であろうか。
時あたかも冬の時期であったようで、能登の怒涛の寄せる海の景物と相まって、母に寄せる心象を盛った歌群である。
歌集『百花』『桜』『留花門』から引いた。
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今日は、阪神大震災が起きてから二十二年である。
朝から追悼一色である。 打撃から、未だに立ち直れない人も多い。

その朝、私は京都南部の自宅で激しい揺れに見舞われたが、震源から外れていたので建物が壊れるなどの被害はなかった。
丁度、私はイタリアのシチリア島の旅に出かけていて、その前日に帰ったばかりで、厳しい「時差ボケ」で明け方まで眠れず、ようやくウトウトとしたところだった。
妻や子供たちは、友人、知人たちの救援にリュックをかついで出かけるなど大騒動だった。
交通機関も、阪急電鉄で言うと、「西宮北口」までしか行けなかった。 後はみな徒歩である。
「ボランティア」という言葉が日本に定着したのも、この時からである。
私は多くの「紀行文」を書いてきたが、この時の旅は、出鼻をくじかれて、今に至るまで執筆できていない。書く気になれなかったのである。

記念日に当り、一筆書き添えるものである。 合掌。





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