K-SOHYA POEM BLOG
私のBLOGは詩歌句の「短詩形」文芸に特化して編集している。 今はもう無くなったが、朝日新聞の大岡信「折々のうた」などの体裁を参考にして少し長めの記事を書いている。自作も多めに採り上げている。
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原義春『猫と小石とディアギレフ』・・・・・木村草弥
福原

──新・読書ノート──(再掲載)

     福原義春『猫と小石とディアギレフ』・・・・・・・・・・・木村草弥
                 ・・・・・・・集英社2004/11/30刊・・・・・・・・

たまたま福原義春のことが目に止まって、アマゾンの古本で買ってみた。
私は、彼を資生堂創業者の孫で、慶応大学を出た「お坊ちゃん」だとばかり思っていたが、会社に入って、かなり
苦労を経験して、今の資生堂を作り上げたらしい。
それに読書家で、精緻な文章を書く優れたエッセイストでもある。 また蘭の育種家としても有名らしい。
先ず、はじめに、私の下手な読み解きではなく、下記の紹介記事を採り上げる。
TKY201304060564福原義春
↑ 福原義春

「松岡正剛の千夜千冊」の1114夜に、この本を採り上げたページがある。
長いので、その一部を引いておく。

今夜はその福原さんについて少々語っておきたい。いや、経営者の福原さんについては、たとえば『福原義春語録』や『多元価値経営の時代』や『文化資本の経営』などを読んでいただきたい。
 もっとも、その経営者としての発言や思想にも、そこにつねにユマニテとリアリテが、また小学校時代の吉田小五郎先生とマックス・デプリーが必ず登場してくることに、気がつかれるとよい。すなわち福原さんは、自分の信条を変えないことと、影響をうけた人物を忘れないということにおいて、まさに自身のなかの光陰を磨き抜いているのである。経営書にもそれがあらわれている。きっと百代の過客とともに福原さんの資生堂は生きているのであろう。

 それで、そういう福原さんの70冊を超える著書や対談集から、では今夜は何をとりあげるかというに、『猫と小石とディアギレフ』にした。
 この本は集英社のPR誌に連載しているものの第2弾で、第1弾の『蘭学事始』の続篇にあたる。続篇とはいっても毎回のエッセイはすべて独立しているので、いつも瀟洒なオードブルを盛り付けてもらっているようなものなのだが、その1本ずつの原稿の量がとてもよく、ぼくには福原さんの発想回路が一番よくあらわれるリテラル・パフォーマンスになっているように感じられたからだ。
 御本人は「こんな散らかった話題を読んでいただける読者はどんな方なのか」と訝っている。けれども、その件についてはすでにわれわれが調査済みのこと、福原さんの御長女が、次のように「散らかった父の本質」をばらしてくれているのだ。「家の中は本に埋もれて生活しているよう」「服だって春夏秋冬すべての服がぶら下がって」「母がいなければ父は出張にも行けない」「庭は植物だらけでジャングルみたい」なのである。
 会長時代の秘書室長もすっかりばらしている。朝の会長室はそこらじゅうに新聞が散らかっていた。
 しかしぼくは、この「散らかった」こそ福原さんの真骨頂だと思っている。多元価値型編集術なのだと思っている。散らかっているということは、そこから何かを選抜するということで、いわば多様性を拡張し、その関係の複雑性にネットワークを発見し、それを数点の結節点から同時に、かつ動的に語りたいということである。
 それが福原さんの、つまりは猫と小石とディアギレフの、資生堂パーラーふう三色アイスクリームなのである。散らかったものがいつしか連動していくということなのだ。

 もうひとつ、この本を選んだ理由がある。ここには福原さんが七転八倒して選び抜いた100冊の本が記録されている。これがすばらい。
 エッセイとしては雑誌「オブラ」でその100冊を選書したときの時ならぬ苦労を綴っていて、たとえば吉田満『戦艦大和ノ最期』、吉村昭の『天狗争乱』、阿刀田高の『ユーモア革命』、猪熊弦一郎の『画家のおもちゃ箱』などを入れられなかったのは痛恨の極みだと反省しているのだが、それはそれ、100冊を選んでみて、「これは自分が編集した人生そのものだ」と書き、「本によって自分の人生が編集されていた」と綴っているところが、片時も「学びあい」を反故にしない福原さんならではの配慮なのだ。つまりは「侘び」なのだ。
 その100冊をここでお目にかけたいけれど、それはぜひとも本書を手にとって見られることを勧めるにとどめよう。ぼくとしては、荘子・マキアヴェリ・モンテーニュの古典、ブラッドベリ・エーコ・シビオクの類推学の傑作3冊、寺田寅彦・西堀栄三郎・今西錦司の御三家、ベンヤミン・山本七平・清水博の独自性、白秋・朔太郎・西脇順三郎の浪漫ぶり、それにカエサルの『ガリア戦記』やガモフ全集や徳川夢声の『話術』を入れたことだけでも胸いっぱいなのだが、加えてぼくの『情報の歴史』とぼくが編集したスマリアンの『タオが笑っている』が100冊入選を果たしたというのだから、これはもう立つ瀬がないほどなのである。
 こんな100冊を選べる企業人は、いや文化人は、いま日本に福原さんたった一人ではあるまいか。第1110夜に、鈴木治雄を継ぐのは福原義春だろうと書いたけれど、その幅やその深さでは福原さんのほうがずっと強靭な文化アスリートだろう。

 さて、一見、散らかっているかのような猫と小石とディアギレフの関係である。
 福原さんはかつては犬派で、いまは猫派になっている。犬派のときの最後は前の犬が死んで、スーパーマーケットで「犬あげます」の告知を見て葉山まで貰いにいった犬のココとの関係だった(福原さんは鎌倉在住中)。ココは14歳で大往生し、それに代わるように黒の野良猫が3匹の子猫を運んできた。これで福原さんは犬派から猫派によんどころなく転向した。
 転向して、どうして犬や猫に人間は心をくだくのかと考えた。とくに犬や猫を通して「慰藉」とは何かを考えた。しかし、福原さんは実は犬派でも猫派でもあってそのどちらに加担するでなく、また人も知る植物派のなかの、とりわけての蘭派であって(だから『蘭学事始』だった)、さらに申せば人派のなかの人派なのである。福原さん自身はエッセイのなかでそのことに合点する。

 福原さんが人派であることはわれわれから見ても、よく納得できる。たとえば求龍堂の「サクセスフルエイジング対談」シリーズだ。
 これは石津謙介・淀川長治・下河辺淳から渡辺貞夫・朝倉摂・フローレンス西村におよぶ、いまのところ20人以上の人士と"聞き手対談"しているものなのだが、毎度、唸るほどの含味があって、人が人に話してかかわるユマニテとリアリテの度合い、すなわちメトリック(測度)というものが柔らかい複合レンズを通した光のごとく伝わるようになっている。
 こういうことは犬猫相手にはできない。しかも「慰藉」もある。いや「慰藉」を引き出せる話にしていくところが、福原さんの人派ぶりなのだ。
 もうひとつの人派たるゆえんは、その推理小説好きによくあらわれている。だいたい小栗虫太郎もカルル・チャペックも『三毛猫ホームズ』も好きなのに、一人だけ作中探偵を選べといわれるとロバート・ファン・フーリックのディー判事を選びたいというのが、とてもあやしい。"歴史変人"好みの人派なのである。シノワズリーというならさすがの中野美代子さんも敵わないだろうフーリックに、ぴたりと照準をあてる福原さんは、ぼくから見ると、福原さんこそが見えない人脈を探求しつづけている名うての探偵でしたね、と言いたくなるところなのだ。

 本書のエッセイで、最も意外な展開を綴っているのが「マルタ島訪問記」である。ちょっとした会合のためにマルタ島に行くことになったのだが、その話をしたところマガジンハウスの手塚宏一さんから「石ころ」を拾ってきてほしいと頼まれた。
 福原さんはパンフレットを見てマルタ島がとても美しいところらしいと知って行ったのだが、いざ着いてみるとどこが美しいのか、史跡が何を語りかけてくるのか、どうもいまひとつピンとこない。「石ころ」もこれといったものに出会えない。が、そのうちそうした殺風景にもなんとなく好感をもてるようになってきたところで帰国した。
 ある日、福沢諭吉の『西洋事情』を見ていたら、福沢が西欧使節団でヨーロッパをまわったときにマルタ島に寄っていたことを知った。福原さんは慶応幼稚舎からの根っからの慶応派で、福沢となると放ってはおけない人なのである。それで福沢も降り立ったマルタ島が気になってさらに調べていると、カラヴァッジョがローマで殺人事件をおこしてマルタに逃亡していた。そこでデズモンド・スアードの『カラヴァッジョ』を読んだ。そうしたらカラヴァッジョがマルタ騎士団になるつもりもあったということがわかった。そこからマルタ騎士団の歴史に深入りした。
 そんな話になっているのだが、小石とは、こういうふうに福原さんがイメージの歴史をちょっとした小石を片手に時空の光陰を旅することなのである。その小石がさらにあるときぴょんと跳ねて、しばらくするとセルゲイ・ディアギレフにも及んだと思われたい。
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私が何かを書き加える必要など何もない。もともと松岡正剛の文章は長いので、すべて入っているのである。

同時に、こんな本も一緒に買った。

福原_0001
 ↑ 『福縁伝授』──集英社2011/02/28刊

この本は先に挙げた本の続編のエッセイ集である。 今は㈱資生堂の名誉会長として全般に目を光らせるとともに、文化メセナや財界活動をなさっている。

Wikipediaの記事を引いておく。 ↓

福原 義春(ふくはら よしはる、1931年3月14日 - )は日本の実業家。資生堂名誉会長。

人物
資生堂創業者・福原有信の孫。有信の五男・信義の長男として東京に生まれる。1953年、慶應義塾大学経済学部卒業後、資生堂入社。1978年取締役外国部長、1987年社長、1997年会長を経て、2001年より現職。

東京都写真美術館館長、企業メセナ協議会会長(前理事長)、日仏経済人クラブ日本側議長、日伊ビジネスグループ日本側議長、世界らん展日本大賞組織委員会会長など公職多数。銀座通連合会前会長、日本広告主協会前会長なども務めた。近々では、公益法人制度改革に関する有識者会議座長をつとめる。慶應義塾評議員。

趣味は洋ランの栽培、写真など。主な受章は、旭日重光章、フランス共和国レジオンドヌール勲章グラン・トフィシエ章など。レジオンドヌール帯勲者会日本支部会長も務める。角川財団学芸賞選考委員。

著書
企業は文化のパトロンとなり得るか 求龍堂 1990.12
100の蘭 文化出版局 1991.12
多元価値経営の時代 東洋経済新報社 1992.6 (トップが語る21世紀)
文化は熱狂 対談集 潮出版社 1995.3
生きることは学ぶこと 風に聞き時に学ぶ ごま書房 1997.4 のちパンドラ新書
「無用」の人材、「有用」な人材 “老荘"に学ぶ転換期を生きぬく知恵 祥伝社 1997.10
部下がついてくる人 体験で語るリーダーシップ 日本経済新聞社 1998.10 のち文庫 
蘭学事始 集英社 1998.12
金の舌銀の味 この人この味このお店 マガジンハウス 1999.2
日々是「好食」 マガジンハウス c2000
メセナの動きメセナの心 求龍堂 2000.8
会社人間、社会に生きる 中公新書 2001.2
福原義春の講演 変化の時代と人間の力 慶應義塾大学出版会 2001.11 のちウェッジ文庫(副題を正題に)
101の蘭 文化出版局 2004.2
猫と小石とディアギレフ 集英社 2004.11
「自分らしい仕事」があなたを変える! 仕事にちょっと悩んだとき読むヒント 青春出版社 2005.12
ぼくの複線人生 岩波書店 2007.3
だから人は本を読む 東洋経済新報社 2009.9
私は変わった変わるように努力したのだ 求龍堂 2010.6
季節を生きる 毎日新聞社 2010.11
ステイヤンゴロジーで人生は輝く! マガジンハウス 2010.12
100人で語る美術館の未来 慶應義塾大学出版会 2011.2
「福縁伝授」聞いてもらいたい独り言 集英社 2011.2
本よむ幸せ 求龍堂 2013.2

共編著
森毅・福原義春らくらく対談 ええ加減が仕事の極意 明日香出版社 1993.12
森毅・福原義春いきいき対談 柔らかい生き方をしよう 明日香出版社 1994.2
〈福原義春サクセスフルエイジング対談シリーズ〉求龍堂
自然と生きる、自然に生きる フローレンス西村 1996.11
10歳の輝き、100歳の青春 加藤タキ 1996.11
美しい暮らし、変わりゆく私 真行寺君枝 1996.11
時代の風を吹かせ、自らが楽しむ 石津謙介 1997.1
旅に生きる、時間の職人 永六輔 1997.3
100着の衣装に、100通りの人生を ワダエミ 1997.3
出会いに生きる、八十七歳の青春 森岡まさ子 1997.7
僕は映画の伝道師 淀川長治 1997.7
壊すこと、創ること 山本耀司 1997.11
動物が好き、人間が好き 増井光子 1997.11
「美しい暮らし」を探す旅人 浜美枝 1998.12
「不良少女」からコスモポリタンに 金美齢 1998.12
舞台美術は一瞬の輝き 朝倉摂 1998.3
アマゾンに学ぶ、「我ら地球家族」 山口吉彦 1998.3
至福の時は「オペラ人」 佐藤しのぶ 1998.5
ともに学ぶ、ともに遊ぶ 小池千枝 1998.8
花と語り、虫と遊ぶ 熊田千佳慕 1998.8
静かな男の大きな仕事 下河辺淳 1999.4
グッドスマイルグッドライフ 渡辺貞夫 1999.4
私は、高齢時代のプロデューサー 佐橋慶女 1999.4
書字が教えてくれる 石川九楊 2000.4
触れることが脳を育む、人を育む 大島清 2000.3
老いとは何か 多田富雄 2001.2
「超」思考法 自分の頭で考えろ 加藤諦三,濤川栄太共著 扶桑社 1997.7
文化経済学 池上惇,植木浩共編 有斐閣ブックス 1998.11
文化資本の経営 これからの時代、企業と経営者が考えなければならないこと 文化資本研究会共著 ダイヤモンド社 1999.10
対話 私たちが大切にしてきたこと ルチアーノ・ベネトン ダイヤモンド社 2002.2
解はひとつではない グローバリゼーションを超えて 樺山紘一共編 慶應義塾大学出版会 2004
市民活動論 持続可能で創造的な社会に向けて 後藤和子共編 有斐閣 2005.4
企業経営 ロングインタビュー 稲盛和夫 読売ぶっくれっと 2005.6


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