K-SOHYA POEM BLOG
私のBLOGは詩歌句の「短詩形」文芸に特化して編集している。 今はもう無くなったが、朝日新聞の大岡信「折々のうた」などの体裁を参考にして少し長めの記事を書いている。自作も多めに採り上げている。
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下山弘『川柳のエロティジズム』・・・・・木村草弥
下山弘

──新・読書ノート──

     下山弘『川柳のエロティジズム』・・・・・・・・・・・・・・木村草弥
                ・・・・・・・新潮選書1995初版 2006/05/20十三刷・・・・・・・・

少し前にこの著者の本を採り上げた際に、この本のことについて書く約束をしておいた。
この本は新潮選書ということなので、硬く硬く書いてあって面白くないので、別のところでの座談形式のものを引いておく。
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江戸文化と川柳
江戸時代は世界でも珍しい長期泰平の社会、しかも江戸の識字率は世界一、世界一の大都市、庶民の好奇心が旺盛などの社会環境の中から川柳が生まれました。
特に俳句だとか川柳とかいうのは17文字で表現するわけですから、相当の文化程度と知恵がないといけない。

現代社会でも欧米の人間でポエムをつくれるのは特殊な階級の文化人だそうですから、江戸時代に世界一短い詩を庶民が作り楽しむ社会が出来ていたのはすごいことなんですね。
江戸川柳は20万句ほどあるそうですが、その中でお色気川柳というのは1万句近くあるそうです。

専門的にはお色気川柳とは言わないで、破礼句(バレ句)または艶句、艶笑句と言うようです。
今回はいろいろな書籍を読み返し、笑いのネタとして皆さんに笑って頂くためのものを選び、幾つかの項目にまとめました。
私が面白いと思う句には3つの条件があります。

1つは生活風俗を面白く紹介しているもの。「子が出来て川の字なりに寝る夫婦」のような句でほのぼのとした句です。

それからなるほどと感心するような句、「頬白に塗った夜鷹の四十雀」みたいな句です。
この17文字の中に鳥の名前が3つ入っているのにすべて鳥ではない。

それからたくましい想像力でつくられた句、お色気ごとは秘め事ですから本当はこんなところで話すよりこっそり一人で想像しながら味わうといい。
するとなるほどと感心できるという句。例えば「一生奉公 かかとにタコができ」というような句ですね。(笑い)今笑った人はよほど想像力のたくましい人です。
後でこの句は解説します。

江戸艶句拾い集め
●銭と金を詠んだもの
「ほれ薬 〇〇から出るのが いっち効き」
この〇〇になにを当てはめるのが良いか10年ばかり前に老人会でクイズをしたことがあります。
私は旦那の口先で丸め込まれたから「舌または口」ではないかというお婆さんがいました。
別のお婆さんがそれは舌じゃない、マタだよ。股からちらっと出せば男なんていちころだと言い、爆笑になりました。
実際の句はそれほど色っぽいものではなく「佐渡」です。

「ほれ薬 佐渡から出るが いっち効き」
佐渡金山から出た小判こそ一番のほれ薬だという句です。

「江戸者の 生まれそこない 金を貯め」
江戸っ子が宵越の金を持たない事を粋がっている句ですね。

「町人も金のかわりに二本差し」
大名に金を貸していたら取れなくなってしまった。それで名字帯刀を許すということで借金を棒引きされたことですね。

「質屋では 利がくい内で 蚊に食われ」
外で利息に食われ、内で蚊に食われる、冬の間にいらない蚊帳を質に入れた。夏になっても請け出す金が無いという句です。

「間男を とらまえた明日 質をうけ」
江戸時代は姦通は重罪でありまして、女房が間男と一緒になっているところを見つけたら二つに重ねて四つにしてかまわない重罪でした。
ところが切り捨ててしまうと江戸は女不足ですから嫁さんもらえる当てがない。それで妥協で7両2分というお金の解決をしたそうです。
その後相場は下がって5両になったようです。間男から慰謝料をとって、質草を受け出したという句ですね。

「金よりも 水がほしいと 隠居言い」
水というのは男性の精力のことを言いました。水が枯れるというのは女性に全部吸い取られてしまって腎虚になるというわけです。金よりも精力がほしいということですね。

●武士を詠んだもの
「浪人は 長いものから 食い始め」
浪人は生活が苦しいですから、なにかを質に入れなくてはならない。まず槍や薙刀、次いで大刀を質入れるというわけです。

「町人で 質屋をでるは ひどいこと」
両刀をたばさんで質屋に行ったけれど、両方とも質草に取られてお金に買えて、丸腰で町人と同じになってくるという句ですね。

「大名に 生まれぬ徳で 夫婦旅」
大名になりますと参勤交代で2年間は奥さんを江戸において帰らなくてはならない。
旅行なんて出来ない、大名でなくて良かったという句ですがひがみも少しありそうですね。

「人は武士 なぜ町人に なってくる」
「花は桜木、人は武士」といって武士は一番偉いとされていたんですが、吉原では武士だというととたんに毛嫌いされる。
それで町人のなりをして吉原に行くけれどすぐ見破られてやっぱりもてなかったそうです。

「役人の 骨っぽいのは ちょきに乗せ」 ちょき舟というのは吉原に行くときに乗る細くてスピードの出る舟です。
役人の言うことをきかんやつは吉原で接待してやれ、今に変わらぬ役人接待の句ですね。

「奥方ははめる 妾は にぎるなり」
これはエッチな句みたいに聞こえますがまじめな句なんです。教養として音曲をたしなむ場合に大名の奥方は琴を演奏するので手には琴の爪をはめるわけです。
お妾さんとなるとせいぜい三味線で、こうなると棹をにぎるか撥をにぎる、ですから奥方は琴を演奏し、お妾さんは三味線を演奏しますよという意味です。

●大家さんを詠んだもの
「店中の 尻で大家は 餅をつき」
長屋は共同トイレになっています。惣後架といいました。江戸の下肥はいいもの食べているので非常に効き目があり、近在の百姓間で奪い合いになった。
幕府は下肥の値段を釣り上げてはいかんという通達を何回も出しているそうです。
大人の尻一人前で幾ら子供の尻一人前で幾らということで、年の暮れには前金を納めて農家が契約していったのです。
その相場が大人の尻ひとつで米一斗、餅にしたら10臼分になります。大家はその肥やし代で年の暮れの餅を店子に配ったという句です。

「家主に土産 帰って くそをたれ」
家主はくみ取り料がいい稼ぎになるわけですから。家主に「うちの長屋で糞してやらねーぞ」なんて嫌みの冗談も言ったようです。

●鶺鴒(せきれい)を詠んだ句
「かようあそばせと せきれい びくつかせ」
「ああなるほどと イザナギのみことのり」
「せきれいは いちど教えて あきれ果て」
鶺鴒というのはぴょんぴょんお尻をはねるようなしぐさをします。
イザナギの命とイザナミの命が子供を作るために合体したがその後どうしてよいか分からなかった。
そうしたらそこに鶺鴒がやってきてじっとしてちゃ駄目ですよ。こうしなさいと言ってお尻をびくつかせた。
そうしたらいざなぎの命がああそうかとおっしゃって、それで子供を作ることが出来たという神話に基づいた句ですね。
ところが鶺鴒が教えた以上に人間は色々な形を工夫し更にあきれる程に励んだという意味ですね。せきれいは合体方法の師匠なのです。

「知っているに せきれい 馬鹿なやつ」
という、神様はそんなこと知っていたんだという句もあります。

●独り者を詠んだ句
「ひとり者 おおきなじゃまを 一本持ち」
「暴れるせがれ ひきかかえ 内へいれ」
どのくらい邪魔になるかは女性の方にはなかなか分からないだろうと思いますけれど、男性には邪魔でしょうがない時代がありました。

「涙ぐむ せがれ故郷を 思い出し」
「おのが手を 女房にする ひとり者」
「帆柱を 寝かすに五人 頼むなり」
他人を頼むのでなく、自分の5本指に頼んで温和しくさせるという意味です。

●仲人・見合い
「十分一とるに おろかな 舌はなし」
「仲人は 小姑ひとり 殺すなり」 仲人は持参金の一割を貰ったそうです。ですから仲人は口上手に話をまとめました。
娘も全部片付いてなどとうまい事言うが、実はひねた煩いのがいるのに。

「瓜実を 見せて南瓜と とりかえる」
見合いではうりざね顔の美人の妹を見せておいて結婚してみたらかぼちゃのような姉だったという句ですね。

「こわいこと 美女で一箱 持参なり」 縁遠い娘には持参金をつけてもというのはいつの時代にもある。
しかし美人なら持参金なんてなくても引く手あまたのはずなのに持参金つきとはこれはなにか怖いことが陰にあるんではないかという意味ですね。

「百両は なくなり顔は 残ってる」
持参金や持参の嫁入り道具は離婚に際しては、返さなければいけなかったのです。持参金が目当てで不美人と結婚、金は使ってしまったから別れられない。

●新 婚
「槍ででも 突かれるように 嫁案じ」
「いまするか いまするかと怖くて恥ずかしい」
新婦の気持ちですね。

「嫁の屁は 五臓六腑を かけめぐり」
結婚式ではおならなんかするわけにいかないから、苦しんでおさえている姿です。

「宵よりも 今朝かぶりたき 綿帽子」 
明くる朝の恥ずかしさ。

●お客、お馬
このお客とは女性に一ヶ月に一回くるお客様のことです。馬も同じ意味です。

「婚礼の 明日から客に 婿困り」
結婚して暴れん坊を嫁さんがなだめてくれると思ったら、早速婚礼の翌日からお客様がきてしまった。困った困ったというところでしょうか。

「突き出した 槍先 馬にへきへきし」
「お馬だと 乗った亭主を はねつける」
この辺は槍と馬で武将のイメージで女性にやってきたお客を詠んでいます。

「門口で医者と親子が待っている」
かなり露骨なので言い難いのですが、医者というのは薬指、親というのは親指、子供は小指。
それらは門口で待っていて中指と人さし指が女性のいいところへ入れてもらえますという意味です。

●味わう
「みなひとの 愛ずるは 五味の他の味」
五味というのは、甘い、しょっぱい、辛い、すっぱい、苦いですが、人がみんな愛するのはその五味じゃないもうちょっと他の味だという意味ですね。

「めしよりは すきなものだが 腹がへり」
「松たけは酒、蛤は湯で 風味」
「女房は 湯にゆき 亭主は酒をのむ」
露骨に云いますと「湯ぼぼ、酒まら」と言いまして、お風呂上りの女性と少々お酒を飲んだ男性が一番具合がいいということになっていたようです。しかし

「酒まらも ほどがあるよと 女房じれ」
へべれけに酔ってしまってはどうしようもないですね。そして
「そのあとは 夫婦湯もさめ 酒もさめ」

●新 年
「二日の夜 夢ばかりでは ござるまい」
正月二日の夜は初夢の日ですが、姫はじめの日でもあります。

「曲乗りは まず遠慮する 姫はじめ」
新年ですからあまり神様の罰が当たるような体位はやめておきましょうということでしょうか。

「元日にするは よほどの 好きなやつ」
「女房と 乗り合いにする 宝船」
「宝船 皺になるほど 女房こぎ」
枕の下に宝船の絵を入れて眠ると良い初夢が見られるのですが、眠る前にその枕で上では姫始めをするわけです。

●練る
練ると言う言葉がありまして、これは女性が遠くに出歩くとあそこの具合が良くなるということを意味しております。

「近道を 嫁は帰って 叱られる」
遠くまで嫁さん出かけさぞかし練れるはずと旦那が期待していたら、近道を帰ってきたというのでがっかりという話です。もっと困るのは

「女房は 籠で帰って 叱られる」
「粟餅ほどに ねれたが みやげなり」
目黒不動尊の名物は粟餅だったのです。そこに出かけ粟餅を土産に買ってくる。旦那には粟餅ほどに練れたのを土産にし、今夜のお楽しみという訳です。

「機織は 遠道よりも よくねれる」
機を織るときは足を一回ごとに踏むわけですから良く練れるのですね。

●お伊勢まいり
お伊勢参りは江戸時代大変盛んでした。庶民が長い距離を安心して旅行を楽しめる国は世界でもあまりなかったそうです。
本当に安心して女性だけででも旅行が出来たのです。幕府が手形を発行する許可制でしたが、信仰で御参りするといえば大抵許可されたそうです。

お伊勢参りのほかにも大山詣で、富士山詣でが関東では盛んでした。お参りも大事ですが、男どもは途中の遊びが半分目的だったのです。
大勢の講で積み立てて、毎年代表が数名で行くということをやっていたようです。
お伊勢さんに行くとだいたい京都も回って40日から50日くらい費やしたそうです。

「抜けぬぞと 女房をおどし 伊勢に立ち」
お伊勢参りの留守に女房が浮気をすると神様の罰が当たって抜けなくなると言われていました。それでもなおかつ悪いやつがいます。

「伊勢の留守 初手一番の おっかなさ」
本当に抜けなくなったらどうしようかとビクビクものです。

「品川に いるに陰膳 三日据え」
江戸時代の旅行は命がけですから家にいる奥さんは気が気じゃない。陰膳を据えて無事を祈っています。
ところが旦那のほうはまず日本橋を発ったら品川で一泊、神奈川で二泊目、三泊目あたりは藤沢と、本当は藤沢あたりに行っていなければいけないのに品川でまだ遊んでる。
奥さんは知らないで陰膳すえているのにということです。

「陰膳を 飼い犬が喰う ふとどきさ」
飼い犬と言うのは、番頭さんでしょう。これは陰膳を食べただけでなくて奥さんも頂戴しているに違いないと言う句ですね。

「名物はつけ 飯盛りは 喰い隠し」
名物の安倍川餅や桑名の焼き蛤を食べた時は手帳に書いておくが、飯盛り女、宿場宿場の女郎さんをいただいたことは隠してありますということです。

●おめでた
「落ちそうな 腹は搦め手から 攻める」
妊娠したときは違った方法を選ぶという意味と城攻めをかけたものでしょうね。

「産むときは もうこれきりと 思えども」
これは男には分からない女性の産みの苦しみでしょうが、また妊娠するのは何故でしょう。

「恥ずかしさ 尻っぺた中 あざだらけ」
尻のアザとは蒙古斑のことですがいわくがあるのです。昔は一年に6回眠っちゃいけないという日がありました。
庚申の日は体内にいる三尸(さんし)の虫が天に告げ口をする日であり、告げ口されると早死にすると言われていました。

これを防ぐため皆が集まり、徹夜で庚申講が行われました。その時に寝てはいけない。ましていいことをしては尚いけない。
その日に妊娠すると生まれる子供は盗人になる。尻にあざが出来ると言われていました。
生まれた子を見たら尻にあざがあり、あの日を恥ずかしがるということですね。

●夜遊びと夫婦喧嘩
「月落ち 烏啼いて 女房はらをたて」
これは中国の有名な矯風夜泊の詩「月落ち 烏啼いて霜天に満つ」を取り入れたものです。
真夜中になっても旦那が帰ってこないから女房が腹を立てているということです。

「うちにない ものでもなしと 女房いい」 なんで夜遊びなんて行くの。うちにあるじゃないの。ということです。

「亭主から ものを言い出す 朝帰り」
奥さんはそっぽ向いてる。なんとかご機嫌を取りたい亭主の気持ちですね。

「喧嘩には 勝ったが 亭主 飯を炊き」
「手がさわり 足がさわって 仲なおり」

●夫婦の仲
「寝られない 晩だと女房 謎をかけ」 「あっためて くんなと足を ぶっからみ」「あっためて くんなは しろと 言うのなり」
「卵酒 ならばと女房 火を起し」
昔は夜中に火を起すのは結構大変です。でも卵酒を効かそうと思って奥さんは作ってくれたということです。「卵酒 女房の思うほど きかず」

●街 娼
「君は京 嫁は大阪に 江戸は鷹」
このままでは分からない句です。京都では街娼を辻君と言った。大阪では惣嫁(そうか)といいました。
惣というのはみんなで共同のと言う意味です。江戸は夜鷹と言ったのです。

「頬白に 塗った夜鷹の 四十雀(しじゅうから)」
さっき言いましたがこの17文字のなかに3つ鳥が出てきます。四十雀は40過ぎてから客取りするなんてというニュアンスが入っています。
江戸時代は20歳すぎたら年増、30すぎると大年増といった時代です。将軍の夜伽なんかも30過ぎたら下がったそうですね。

「材木に 巣をかけて待つ 女郎ぐも」
「古着屋と 二十四文と 入れかわり」
この夜鷹の料金は二十四文だったようです。ソバが十六文だったのですから安いですね。
吉原の手前に日本堤という場所があってそこに昼間はずっと古着屋が並んだそうです。
夜になると古着屋はいっせいに居なくなって夜鷹が網をはる場所になったのです。

「舟饅頭 ちょちょっと細い 波が打ち」
舟を根城にするやや値段が高い舟饅頭と呼ばれた女たちもいたのです。だいたいは旦那が客を引いてきて、女房に舟で客をとらせたのです。

「提重(さげじゅう)は 重たくなると 又おろし」> 重箱を提げて物を売り歩く、中にお餅とか饅頭とか入っていて売り歩いている女たちです。
それで声をかけられて家へ上がり、自分のお饅頭で相手をする。
重たくなるのは重箱が重いのではなくておなかが重くなるということで、妊娠したら子供を堕しましたという意味ですね。
春を売る女には色々な種類の名前があったようです。
遊女、飯盛り女、宿場女郎、湯女(ゆな)、けころ、歌比丘尼、舟饅頭、提重、家鴨、夜鷹、こういう呼び名で江戸には何千人もこういう女たちがいたそうです。

●芳町・お釜
「女でも 男でもよし 町といい」
芳町といえば江戸時代は男色、お釜のメッカでした。

「故郷を 弘法大師 けちをつけ」 故郷は自分の生まれたところ、女体です。仏教は女人禁制、妻帯禁止です。それを弘法大師の責任にした句です。
それで坊さんはどうしたかというと吉原に行くときは袈裟、衣を脱いでお医者さんに変装して行く。ところが芳町に行くのは男相手なので平気です。

「芳町は 和尚をおぶい 後家を抱き」 男色は戦国時代は多かったのです。信長と森蘭丸がそうです。
男娼は和尚さんには後ろを提供し、後家さんには前のものでお相手をしました。

「用だたぬ釜 御殿から 買いに来る」 年取ったお釜は男から相手にされなくなる。
年取ったお釜になると、今度は後家さんを相手にするとか奥女中を相手にするということだったようです。

「芳町の あす張り型の 大味さ」 御殿から来て芳町で本物を堪能し、翌日張り型を使ったら、やはり味が落ちたということです。

●水牛・張り型
「熱燗で 局酔えるが ごとくなり」
「ひだるさを 湯漬けでしのぐ 奥勤め」

これはお酒の話やお茶漬けの話ではありません。水牛で出来た張り型、これは中が空洞でお湯を入れて温めて使うのだそうですが、それを意味しているものです。

「華奢な手で 握っては見る 湯の加減」
「待ちきれず 冷で水牛 使ってる」
「むつまじく 角つきあいの 奥女中」
「一生奉公 かかとに胼胝(たこ)ができ」
奥女中の奉公、足に張り型を結わえ付けて長らく励んでいると胼胝ができたということ。まあよくぞここまで想像したと驚きです。
男ですよね。男の想像力のたくましさ。ありえないようなことを想像して遊んでいますね。

「鼈甲(べっこう)は いずれ毛のある 所へさし」
鼈甲で作った張り型もあったのでしょう。かんざしや櫛に多く使われています。

●提 灯
提灯と言うのは暴れん坊ではなくなった男の一物を指しました。力が無くなった老人の持ち物です。
「提灯を さげて宝の 山を下り」
せっかくの宝の山だけれど提灯じゃ役に立たず、すごすご下りるところです。

「尼寺の大工 提灯 唐辛子」
尼寺には尼さんしかいないのであまり元気な若い大工が行っては困るわけです。それで年取ってお役に立たない提灯大工が行くのです。唐辛子はまだ細い子供のそれですね。

「三つのうち 目も歯もよくて 哀れなり」
男の老化はどこから来るか。歯・目・マラと言いますね。その3つのうち歯も目もいいんだけれどもうひとつが駄目で哀れなもんだということです。

「目はめがね 歯は入れ歯にて 間に合えど」
下の句があったような気がしますね。

「世にかえマラのなきぞ 悲しき」 でしたかね。
「とぼされもせぬ 提灯を隠居下げ」
とぼすというのは、火を点すということと、セックスをするという意味とあります。

「美しい 手で提灯の 皺をのばし」
力のない提灯も美しい手にかかるとしゃんとするという訳です。

「提灯の 骨接ぎをする 生たまご」
期待するほどに効かないと言う川柳も先ほどありましたけれどね。

●この世・あの世
「出たあなと 入るあなとは 大違い」
入るあなとは墓ですね。出たあなは生まれ出たところですね。

「借金の 穴を娘の 穴で埋め」

露骨すぎてムードも何も無いですね。あまりにも露骨すぎるのは味がないですね。

「出た穴は好きだが 入る穴は いや」
「穴を出て 穴に入るまで 穴の世話」
「人間の 穴から穴が 五十年」
「馬鹿なこと わずかな穴に 首ったけ」
穴だけでよくぞまあと感じますが、これらは前の句を参考に作ったのもあるのでしょう。
「死に水を とるは減らした 女房なり」
先ほど出ました精力の水、それを減らしてしまった女房が死に水をとっているということです。
早死にした男性の死因を川柳作者は腎虚(精力消耗病)にしたがります。
「金持ちの 人魂行きつ もどりつし」
これはこの世に残した財産が気になって往生できない金持ちのはなしです。

「日本から 極楽わずか 五十間」
ここの極楽とはあの世の極楽ではなくて現世の男の極楽、吉原のことです。日本堤から五十間あるくと吉原がまっていますという意味です。

「この仏様も お好きと 土手で言い」
昔、精進落としと言ってお葬式の後に吉原へ出かけたそうです。悪所通いを精進落しから覚えることもあったそうです。
あの仏様も好きだったからこれで成仏できるよなんて言いながら遊びに出かけるところの情景ですね。

「幽霊になると 平家も 源氏なり」
あの世では源氏、平家共にみんな白装束になるということです。
あの世の句が出たところで私の話も幕です。

少しはお色気川柳を楽しんで頂けたでしょうか。
私は川柳を知って頂く目的ではなく、皆さんに笑いのネタを提供し、笑って頂くのが目的でお話をしたつもりです。
私は近年出版された本から面白そうな句を選別してお話をしました。広く川柳を知りたい方にはご不満だったことでしょう。

 ↓ この本は更に資料的な体裁なので、本文には触れずにおく。 了承されたい。
下山弘

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