K-SOHYA POEM BLOG
私のBLOGは詩歌句の「短詩形」文芸に特化して編集している。 今はもう無くなったが、朝日新聞の大岡信「折々のうた」などの体裁を参考にして少し長めの記事を書いている。自作も多めに採り上げている。
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「水洟や鼻の先だけ暮れ残る」デビュー作が『鼻』であったことを思い出してくれたまえ・・・・木村草弥
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     「水洟(みずばな)や鼻の先だけ暮れ残る」
      デビュー作が『鼻』であったことを思い出してくれたまえ・・・・・・・・・木村草弥


昭和2年7月24日午後1時すぎ、芥川龍之介は伯母の枕元に来て、明日の朝下島さんに渡して下さいと言って、この句<水洟や鼻の先だけ暮れ残る>を書いた短冊を渡した、という。
彼の辞世の句である。

短冊には「自嘲」と前書きしてあったことから、芥川の文業の終末を象徴せしめる凄絶な辞世の句となって了った。

この歌は私の第三歌集『樹々の記憶』(短歌新聞社刊)にコラージュ風の作品「辞世②」に載せたものである。この歌は「口語、自由律、現代かなづかい」を採っている。

chirashi芥川ポスター
二番目の写真は2004年4.24~6.6神奈川近代文学館で開かれた「芥川龍之介展」のポスターである。彼の生涯は1892年から1927年の35年間であった。

三番目の写真は『侏儒の言葉』の復刻版の函である。
931akutagawa1しゅじゅの言葉(函)

芥川龍之介は1892年に東京市京橋区入船町で出生、辰年辰月辰日辰の刻に生まれたというので「龍之介」と命名されたという。東大在学中に同人雑誌「新思潮」に大正5年に発表した『鼻』を漱石が激賞し、文壇で活躍するようになる。王朝もの、近世初期のキリシタン文学、江戸時代の人物、事件、明治の文明開化期など、さまざまな時代の歴史的文献に題材を採り、スタイルや文体を使い分けた、たくさんの短編小説を書いた。
体力の衰えと「ぼんやりした不安」から自殺。その死は大正時代文学の終焉と重なると言える。
彼の死の8年後、親友で文芸春秋社主の菊地寛が、新人文学賞「芥川賞」を設けた。

931akutagawa5羅生門
四番目の写真は『羅生門』だが、先に書いたようにいろいろの時代を題材にした中でも、これは有名な作品。後年、映画化などの際のネタ本となった。
芥川は、晩年『文芸的、余りに文芸的』という評論で「新思潮」の先輩・谷崎潤一郎と対決し「物語の面白さ」を主張する谷崎に対して、「物語の面白さ」が小説の質を決めないと反論し、
これがずっと後の戦後の物語批判的な文壇のメインストリームを予想させる、と言われている。
芥川は「長編」が書けなかった、などと言われるが、それは結果論であって、短編小説作家として、「賞」と相まって新しい新進作家を誕生させる記念碑的な存在である。


akutagawa-tokyo30w我鬼先生
五番目の写真は「樹下の我鬼先生」という自画像である。彼は俳号を「我鬼」と称し、多くの俳句を残している。
 
 人去ってむなしき菊や白き咲く

これは夏目漱石死後一周忌の追慕の句。同じ頃、池崎忠孝あての書簡には

 たそがるる菊の白さや遠き人

 見かえるや麓の村は菊日和


の句が見られるが、これも漱石追慕の句。 以下、すこし龍之介の句を引く。

 稲妻にあやかし舟の帆や見えし

「あやかし」は海に現れる妖怪をいう。謡曲「船弁慶」や西鶴の「武家義理物語」に登場する。俳句にも、こういう昔の物語に因むものが詠まれるのも芥川らしい。

 青蛙おのれもペンキぬりたてか

大正8年3月の「ホトトギス」雑詠のもの。友人がルナール『博物誌』に「とかげ、ペンキ塗りたてにご用心」があると指摘したら即座に、だから「おのれも」としてあると答えたという。

掲出の句 <水洟や鼻の先だけ暮れ残る> は『澄江堂句集』所載。そのイキサツは先に書いた。

 唐棕櫚の下葉にのれる雀かな

大正15年7月の「ホトトギス」に芥川は「発句私見」を書き、「季題」について「発句は必ずしも季題を要しない」としている。こうした論は芭蕉の「発句も四季のみならず、恋、旅、離別等無季の句有たきものなり」に影響されたものと言えよう。

先に掲げた『侏儒の言葉』の中には

 人生はマッチに似てゐる。重大に扱ふには莫迦々々しい。重大に扱はなければ危険である。

という「箴言」が載っている。これは芥川らしい「箴言」で、正と負の両方に1本のマッチを擦ってみせている。彼の説明によれば「論理の核としての思想のきらめく稜線だけを取り出してみせる」という技法に傾倒していた。
ということは、芥川にはもともと箴言的なるものがあり、この箴言の振動力を、どのように小説的技法となじませるかを工夫し続けてきたのだった。こうした箴言だけをアフォリズムとして書き連ねたのが、この本だと言える。

931akutagawa8全集
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私の掲出の歌で「デビュー作」としているのは正確ではない。
処女作は、この3年前に「新思潮」に出ているが、有名になったのは、この『鼻』であるので、ご了承願いたい。
今日7月24日が芥川の「忌日」であるので、日付にこだわって載せた。


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