
──三井修の本──(5)
三井修『うたの揚力』・・・・・・・・・・・・・木村草弥
・・・・砂子屋書房2017/07/21刊・・・・・・・
私がいつもお世話になっている三井修氏の本である。
この本は、巻頭の「はじめに」という個所に書かれているように、砂子屋書房のホームページで「日々のクオリア」という一首評のページに2016年の一年間連載されたものである。
隔日執筆というハードな作業の成果である。
今は、こういうのが流行っていて、例えば「ふらんす堂」のものなどがある。ここは毎日執筆である。ここからもう何冊もの名著が誕生している。
採り上げられた作品は現代歌人の出来るだけ最近の歌集から引かれた。
2016/01/04の巻頭の歌は昭和20年3月の東京大空襲の歌
逆立った髪の先から燃えてゆく裸になった白いろうそく 福島泰樹
2016/12/30の巻末の歌は
時刻表は褪せて西日に読めざりき岬の鼻に待つ風のバス 永田和宏
記事の終わりには三首の歌を載せるという体裁である。
無人駅となりて久しきホームには破れ目破れ目にをみなへし咲く
日のあるうちに帰りきたればどうかしたのかと問ふ さうなのか
いつの間に携帯の電池が切れてゐたそんな感じだ私が死ぬのは
三井氏は今は短歌結社「塔」の選者をされている。そんな関係から前主宰の永田和宏の歌で、この本を閉められたのも、けだし的確なことだと思う。
もっと多くの紹介をしなければならないのだが、ほんのさわりだけ引いたことをお詫びしたい。
有難うございました。
| ホーム |