
──季節の一句鑑賞──季節の鍋2態──
■京言葉もて寄鍋の世話をする・・・・・・・・・・・・・・・・奥田可児
冬の団欒の食べ物としては「鍋」ものがいい。
今日は「寄せ鍋」と「鍋焼きうどん」を採り上げる。
「寄せ鍋」に入れるものは何でもよいのである。
魚、貝、鶏肉、野菜などを味付けした汁で煮て食べてもよいし、「水炊き」にしたものを「ポン酢」とおろし大根で食べても、おいしい。
地域によっては「たのしみ鍋」とも呼ばれたらしい。季節のいろいろな材料をとりまぜて煮て食べる鍋料理である。
海鮮の材料が多いものは「沖なべ」「沖すき」などと称する。

又例の寄せ鍋にてもいたすべし・・・・・・・・高浜虚子
寄鍋やたそがれ頃の雪もよひ・・・・・・・・杉田久女
寄鍋や剥き蛤のふくむつゆ・・・・・・・・関谷嘶風
寄鍋の湯気やはらかし家長たり・・・・・・・・戸川稲村
寄鍋や酒は二級をよしとする・・・・・・・・吉井夏生
よせ鍋や松葉模様のちりれんげ・・・・・・・・塩川星嵐
沸々と寄鍋のもの動き合ふ・・・・・・・・浅井意外
寄せ鍋や酔へば口つく国訛・・・・・・・・森野敏子
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■鍋焼や芝居で泣いて来たばかり・・・・・・・・・・・・・・三宅絹子
「鍋焼き」は本来、土鍋に鶏肉や魚を入れ、野菜を加えて醤油で味付けして煮て食べるもの。
「土手焼き」というのは土鍋に味噌を塗り、魚、せりなどを入れて煮ると味噌が焦げて香りとなり、また汁と溶けて、よい味になる。
この頃では「鍋焼きうどん」の方を専ら指すようになった。
饂飩(うどん)に、かまぼこ、ねぎ、ほうれん草、鶏肉などを加えて、汁をたくさんにして土鍋で煮る。真ん中に生卵をひとつ落したりする。

写真④は「豆乳鍋焼きうどん」である。
水の代りに「豆乳」を使うところがミソで、豆乳特有の甘みがあり、大豆なので極めて健康的である。
鍋焼の火をとろくして語るかな・・・・・・・・尾崎紅葉
鍋焼ときめて暖簾をくぐり入る・・・・・・・・西山泊雲
酒よりも鍋焼を欲り老い兆す・・・・・・・・滝春一
なべ焼食べて子は子の家に戻るべし・・・・・・・・安住敦
鍋焼を吹いて食べさす子守婆・・・・・・・・滝沢伊代次
ねもごろに鍋焼饂飩あましけり・・・・・・・・村上麓人
鍋焼の屋台に細き煙出し・・・・・・・・・富永ひさし
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