↑ ワルシャワ郊外のジェラソヴァ・ヴォラ村のショパン生家
終りに近きショパンや大根さくさく切る・・・・・・・・・・・・・・・・・・加藤楸邨
先年2010年はショパン生誕200年で記念のイベントなどが多かった。
この楸邨の句も「二物衝撃」の見本のような句で面白い。
「ショパン」の曲と、「大根」とは全く何の関係もない。それを取り合わせてある。
しかも大幅に破調である。7、8、6音になるようであるが、これを削ることは難しい。
この句の場合、大根を切っているのは奥さんで、ショパンの音楽をかけながら料理しているという図であろう。
さて、大根は春の七草の中の「スズシロ」と昔呼ばれていたものの改良種である。
写真①は「青首大根」と呼ばれるもので「耐病総太り」という作りやすい品種で、現在では生産量の95%を占めるまでになっている。
私の家でも栽培しているが、この青首大根を9月はじめに種から蒔いて作る。
3メートルくらいの畝を2筋も作っておけば春までたっぷり食べられる。
写真②は京都の伝統京野菜として品種登録されて生産が奨励されている「聖護院大根」である。
これは甘みがあっておいしい大根である。他にも「守口大根」など各地に伝統野菜がある。
昔は沢庵漬に最適の品種として「宮重大根」というのがあった。
愛知県の原産で、今も作られているようだ。写真③に、それを出しておく。
大根はアブラナ科の一年草で越冬する。春に薹(とう)がたつ。原産地は地中海沿岸と言われ、日本には中国経由で早くに入ってきたという。
大根は水分がたっぷりあり、しかもジアスターゼという消化酵素も含んでいて、体には大変よい野菜である。
私などは、どんな料理にしろ、大根おろしにしろ、大根を食べると大変消化がよいのを実感している。
私の大好きな野菜である。
菊の後大根の外更になし・・・・・・・・松尾芭蕉
という古句があり、まさに的確に大根の性格を言い表わしている。
以下、大根を詠んだ句を引いて終りにしたい。
大根引大根で道を教へけり・・・・・・・・小林一茶
流れゆく大根の葉の早さかな・・・・・・・・高浜虚子
ぬきん出て夕焼けてゐる大根かな・・・・・・・・中田みづほ
畑大根皆肩出して月浴びぬ・・・・・・・・川端茅舎
老いの仕事大根たばね木に掛けて・・・・・・・・西東三鬼
ダンサーに買はるしなしなと大根・・・・・・・・秋元不死男
大根きしみかくて農婦の腰まがる・・・・・・・・米田一穂
死にたれば人来て大根焚きはじむ・・・・・・・・下村槐太
身をのせて桜島大根切りにけり・・・・・・・・朝倉和江
荒縄で洗ふ大根真白きまで・・・・・・・・冨石三保
煮大根を煮かへす孤独地獄なれ・・・・・・・・久保田万太郎
窓が開いてをる大根畑は昼深し・・・・・・・・滝井孝作
大根煮や夕餉の病舎さざめきて・・・・・・・・石田波郷
大根を刻む刃物の音つづく・・・・・・・・・山口誓子
大根洗ふや風来て白をみなぎらす・・・・・・・・大野林火
| ホーム |