
次に落つる椿がわかる一童女・・・・・・・・・・・・・和田耕三郎
この句は面白い。ある童女が「次は、あの椿が落ちるよ」と言えば、不思議に、その花が落ちる、という句であろうか。
この作者のことは何も判らない。
森澄雄編集の「花の大歳時記」という大部の本に載っているもの。
昨日も「椿」を採りあげたが、今日も続いて椿を載せる。
特定の作家ということではなく、出来るだけ多くの作家の句を採りあげて鑑賞する。
腸(はらわた)のよろこんでゐる落椿・・・・・・・・・・・・飯島晴子
あけぼのや陸(くが)の水泡の白椿・・・・・・・・・・・・林翔
椿散るああなまぬるき昼の火事・・・・・・・・・・・・・富沢赤黄男
掃くは惜し掃かぬは憂しや落椿・・・・・・・・・・・・阿波野青畝
落椿ふむ外はなき径かな・・・・・・・・・・・・・富安風生
椿咲く出雲八重垣神の婚・・・・・・・・・・・・角川源義
釘づけにさる神隠てふ椿見・・・・・・・・・・・・石川桂郎
白椿老僧みずみずしく遊ぶ・・・・・・・・・・・・金子兜太
濡れてゐし雨の椿をいま憶ふ・・・・・・・・・・・・橋本鶏二
落椿くだく音して仔馬来ぬ・・・・・・・・・・・・石原八束
椿落つ脈絡何もなかりけり・・・・・・・・・・・・岡本眸
白椿みていて身の裡昏れはじむ・・・・・・・・・・・・杉本雷造
橋すぎて椿ばかりの照りの中・・・・・・・・・・・・平井照敏
牛角力の花道うづめ落椿・・・・・・・・・・・・下田稔
一園の椿五衰に入りにけり・・・・・・・・・・・・石田勝彦
はたと膝打ちたるごとく椿落つ・・・・・・・・・・・・須磨直俊
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飯島晴子、富沢赤黄男の句は前衛的な句で、人によっては好き嫌いがあろうが、面白い句である。
金子兜太の句は前衛的作家でありながら、それとはちょっと違って、諧謔性のある句と言えようか。
橋本鶏二の句は、さっき見た雨に濡れていた椿を、後になって思い出して感慨にふける、という内省的な佳い句である。
あとは皆さん、それぞれに鑑賞して頂きたい。
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