
桜草買ひ来このごろ気弱にて・・・・・・・・・・・・・・・・安住敦
サクラソウ科の多年草。
江戸時代、武士の内職として、サクラソウの栽培が流行し300種類もの品種があったという。その品種の一部が小石川植物園などに維持されているらしい。
サクラソウは、日本種のサクラソウと、プリムラと呼ばれる西洋サクラソウがあり、本来は違うものであるが、
今では、どちらをも桜草と一くくりにして呼ばれている。
掲出した画像は西洋サクラソウ──いわゆるプリムラのものである。
掲出した安住敦の句は、丁度この頃なんとなく気鬱で「気弱」だったのであろうか。
自分の心象を詠んでいて秀逸である。
桜草は湿地に群落をなす花で、今では野生のものは絶滅しかかっており、
「田島が原サクラソウ自生地」に自生するものが特別天然記念物として保存されており、有名である。埼玉県の郷土の花になっている。
写真②が、その「ニホンサクラソウ」である。 ただし、これが咲き揃うのは、四月中頃であるから念のため。


ただし、↑ この写真は軽井沢町植物園のもの。町花になっている。
葉の様子もよく判る。
我国は草もさくらを咲きにけり・・・・・・・・小林一茶
の句があるが、山桜の花に似て、清純な可憐な美しさの花である。
桜草は亡妻が株を大切にして来たが、病気中に私の不注意で枯らしてしまい、新しい苗を買ってきて、今に至っている。私の買ってきた株は、色が少し濃い。
桜草ないしはプリムラとして多くの句が詠まれているので、下記に引いて終りたい。
葡萄酒の色にさきけりさくら艸・・・・・・・・永井荷風
桜草灯下に置いて夕餉かな・・・・・・・・富田木歩
咲きみちて庭盛り上る桜草・・・・・・・・山口青邨
そはそはとしてをりし日の桜草・・・・・・・・後藤夜半
わがまへにわが日記且(かつ)桜草・・・・・・・・久保田万太郎
桜草の野に東京の遥かかな・・・・・・・・富安風生
少女の日今はた遠しさくら草・・・・・・・・富安風生
まのあたり天降(あも)りし蝶や桜草・・・・・・・・芝不器男
一杯のコーヒーの銭さくら草・・・・・・・・細見綾子
プリムラやめまひのごとく昼が来て・・・・・・・・岡本眸
カーテンと玻璃とのあひだ桜草・・・・・・・・森田峠
桜草寿貞はそつと死ににけり・・・・・・・・平井照敏
プリムラや母子で開く手芸店・・・・・・・・高橋悦男
下に鍵かくして桜草の鉢・・・・・・・・木内怜子
さくら草入門のけふ男弟子・・・・・・・・古賀まり子
これからのこの世をいろに桜草・・・・・・・・和知喜八
三鉢買って二鉢は子へ桜草・・・・・・・・大牧広
卓上は文字の祭壇桜草・・・・・・・・馬場駿吉
鉄橋を貨車ことことと桜草・・・・・・・・中丸英一
泣くときは見する素顔や桜草・・・・・・・・平賀扶人
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