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K-SOHYA POEM BLOG
私のBLOGは詩歌句の「短詩形」文芸に特化して編集している。 今はもう無くなったが、朝日新聞の大岡信「折々のうた」などの体裁を参考にして少し長めの記事を書いている。自作も多めに採り上げている。
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地中海大阪支社合同歌集「水路Ⅱ」・・・・・木村草弥
地中海_NEW

       地中海大阪支社合同歌集「水路Ⅱ」・・・・・・・・・・・・木村草弥
                  ・・・・・九曜書林2017/12/30刊・・・・・

「地中海」大阪支社長・牧雄彦氏から、この本が送られてきた。
大阪支社は私が「地中海」に在籍していた頃は何度か歌会に参加して、楽しい交流をさせてもらった懐かしいところである。
牧氏の前の支社長は奥田清和氏が長らく務められた。私がお邪魔していた頃は奥田氏にお世話になった。
今回の本には24人の人が出詠しているが、私の知る人たちの多くが故人になっている。最近では浜田昭則氏などである。
また自分のグループを結成して独立して行かれた人が五人ある、と書かれている。
牧氏の「あとがき」によると、支社創設以来、毎月の歌会を欠かすことなく続け、昭和56年7月に歌会200回を記念して合同歌集「水路」が発刊されている。
今回、歌会600回を迎えたのを機に、ふたたび合同歌集を、との声が上がり「水路Ⅱ」が発行されることになった。

この本は各自24首の歌を発表し、題名の下に短いエッセイを載せるという体裁である。
はじめに奥田清和「孔孟ねむる」を引いておく。

   奥田清和「孔孟ねむる」

   合同歌集『水路』を刊行してすでに三十六年という。
   不易流行─さはさりながらいたずらに馬齢を重ね卒寿も
   過ぎて、日々盲いゆくわが身は頑迷固陋な自己流の歌に
   甘んじて詠み続けている次第。子曰く「寿(いのちなが)ければ則
   ち辱(はじ)多し」のこころか。

みあらかに黄金の鵄舞ひたてりパプアに果てし吾兄の日なれば

獺祭のみだれを寛(ゆる)しまどろむに桃源郷を裂く選挙カー

電磁波の世にあらしめばあかねさす紫野辺にメール打ちしか

収束はいつの日なるや原子炉の未知との遭遇おろおろと夏

津の国の島熊山を越えゆきし万葉人はケイタイ持たず

贈られし栃木の美酒に酔はむかな友のいぶきをよき盃に

桃太郎はたかぐや姫など信じつつ育ち来しなり遠世の翁

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久しぶりに奥田ぶし、にお目にかかった。日本酒好きな奥田先生らしい歌が痛快である。
原子炉やケータイなどに鋭い警句を発している。
エッセイの文章なんかも鋭い。
孔子の「寿(いのちなが)ければ則ち辱(はじ)多し」の引用なども「寿」の字の訓(よ)みかた、極めて鋭い。お見事である。

       牧雄彦「春の空蹴る」

は、いくつかの「挽歌」を載せている。

赤き花乱れ咲きたる国に逝く君の笑顔にこゑのあらなく   (内田禮子さん)

杖ひけど背筋のばして歩みゆくあなたの影が遠ざかるなり   (古市きぬゑさん)

み柩は花また花に埋もれて君がかんばせ白しうつくし   (東原登美枝さん)

たましひの抜けたる顔は君ならず目を開けよそして声かけくれよ   (浜田昭則氏)
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内田さん以外の人は私にも旧知の人たちである。
ビール好きで、競馬も愛した浜田さんの姿が私の脳裏に去来する。

       高尾恭子  灯り

ふたたびは逢わぬ人かと木版画の賀状繰りたり月山は雪

下二段活用おぼえる子ら乗りてそういえば考査の始まる七月

生かされて生きる八月はしきやしキリスト(ラクリマ・クリスティ)の涙グラスに満たす

共謀罪強行採決スカートの裾のほつれを気にしてる間に

つやつやの青首大根ぶった切る戦後七十年の暮れなんとして
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高尾さんは教師である。そして今は「地中海」誌の編集委員をなさっているらしい。
ここに詠まれている時事詠などに鋭い感受性を見る思いがする。ご活躍を祈りたい。

       山本孟  わが戦中戦後

   昭和という年号には西暦で言い換えられないニュアン
   スがある。私の時間と空気を同じくし、戦争と飢餓とい
   う重苦しい生き難い時代を中に挟んでいるからだ。その
   意味で懐かしい昔ではない。それなのに忘れ難い昔であ
   る。・・・・・・・

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と書いて、戦中回顧の歌を連ねている。
私が第五歌集『昭和』を刊行したのと同じ思いかとおもうのである。

       春夏秋冬   神田鈴子

吹きそめし風にさそはれ散るさくら五弁そのままわがてのひらに

墨の香のにほふ部屋ぬち真白なる色紙に二羽の鶴をあそばす

夫逝きて四半世紀の過ぎゆきを振り返るけふ紫陽花に雨

夫の忌に合はせて編みし歌集なり墓前に供ふ二十五回忌

少年の心を持ちたるまま逝きぬ不条理突きて爽やかなりき   (浜田昭則さん)

わが作るケーキに夢を運び来よイヴの夜空にひかるシリウス
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神田さんは昨年歌集を初めて上梓された。しっとりとした佳い歌集だった。そして何とかいう賞も受賞された。
おいしいケーキを作り、生徒を抱える先生でもある。
ここに出された歌は歌集発行後の新作だという。いずれも佳い歌である。
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       植田和子  いのちあふるる

朽ちたる木戸につる草の花咲き乱れ人去りていのちあふるるままに

二坪ほどの西行庵のかまど跡土のくぼみに花は吹きよる

風立ちて光を散らす池の面にかいつぶりの影つと浮き上がる

青虫は小指がほどに育ちたり鵯が来ている動くな動くな
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青虫に注ぐ視線なども温かである。

引く歌が少なくて申し訳ないが、この辺で鑑賞を終わりたい。
久しぶりに皆さんに会ったような気分に浸ったことを書いておきたい。
ご恵送有難うございました。


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