
縷紅草(るこうさう)みれば過ぎ来し半生に
からむ情(こころ)の傷つきやすき・・・・・・・・・・・・・・木村草弥
この歌は私の第四歌集『嬬恋』(角川書店)に載せたもので、
この歌の前に
父母ありし日々にからめる縷紅草ひともと残る崩(くえ)垣の辺に
という歌が載っている。
2003年10月に開いてもらった私の出版記念会で、光本恵子氏が、この歌について喋っていただいた。これについてはリンクにしたWeb上の『嬬恋』の「出版記念会」のところで、お読みいただける。
その時、光本さんは「ルコウソウ」が消えかかっている草、のように仰言ったが、今回、これを入力するに当ってWebを検索してみたら、ルコウソウというのは熱帯アメリカの原産で、今ではさまざまの改良種が出て園芸店でも蔓草として人気らしい、という。
写真②も、そういう色とりどりの改良種という。

ルコウソウは、ひるがお科の一年草で、日本では6月から夏から秋にかけて次々に咲きつぐ。本来は五角形の真紅または白の筒型の花であるが、丸葉ルコウソウというのがあり、それと本来のルコウソウとの交配で「はごろもルコウソウ」という新しい品種が、アメリカのオハイオ州で作られたという。この花は大げさな花ではなく、また今どきの住宅事情からもフェンスにからませたりして丁度時代に合うのだろう。
写真③以下、いろいろの色のルコウソウの写真を載せておく。


掲出した私の歌2首は、光本さんが仰言ってくださったように(消えかかっている花、というのは別にして)私の心のうちをルコウソウにからめて表現したもので、的確に言い当てて下さったと感謝している。
以下、俳句に詠まれた作品を引いておく。
縷紅草のびては過去にこだはらず・・・・・・・・中村秋一
縷紅草垣にはづれて吹かれ居り・・・・・・・・津田清子
縷紅草のくれなゐともる昼の闇・・・・・・・・小金井欽二
軽みとは哀しみのこと縷紅草・・・・・・・・瀧春一
垣越すと揃ふ縷紅の花の向き・・・・・・・・堀葦男
羚羊のごとき少女や縷紅草・・・・・・・・古賀まり子
雀らの影ちらちらと縷紅草・・・・・・・・村沢夏風
草市のをとこの提げる縷紅草・・・・・・・・吉田鴻二
縷紅草文(あや)目にからむ情の罠・・・・・・・・田口一穂
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