
白桃の箱の隙間の先週の
山梨新聞広げてみたり・・・・・・・・・・東京都・飯坂友紀子
この歌は、角川書店月刊誌「短歌」平成二十五年十二月号の題詠「隙間」に小畑庸子さんの選で載るものである。
箱詰めの「隙間」の詰め物として入っている「山梨新聞」を広げて読んでいるというもの。
何となく情景が目に浮かぶようではないか。 さりげないが、佳い歌である。
いま検索してみたが「山梨新聞」というのは存在しないようである。「山梨日日新聞」「山梨新報社」というのはあるが、ほかは全国紙の山梨版である。
だから、この歌に詠まれるのは固有名詞ではなく、「山梨の新聞」ということであろう。
この題詠で載る他の歌を引いておく。
ルルルルル夢の隙間を潜り抜け私に還るおはよう私・・・・・・・三重県・伊藤里奈
ガラス戸とアミ戸のはざまで思案する蛾はモンシロの仲間らしいよ・・・・・・・兵庫県・北野中
正直に生きるかときにもどかしいヘアーウィッグと頭皮の隙間・・・・・・・神奈川県・安由衣子
本を抜く棚の隙間に文士見え昭和の幻影鎌倉古書店・・・・・・・石川県・三宅立美
手で顔を覆ったくせにすぐ指を開いてつくる隙間がいいね・・・・・・・岡山県・小橋辰矢
障子戸の格子の隙間を動かずにわたしに手を擦る冬蠅がいる・・・・・・・北海道・葛西全
君はずるいいつだって風をしたがえて私のすきまにするりと入る・・・・・・・大阪府・蒼井杏
コンビニの冷蔵棚のペットボトル富士山の水隙間なく並ぶ・・・・・・・愛知県・湯朝俊道
午後五時の微妙に混んだ地下鉄で見つけた隙間〇・八人分・・・・・・・神奈川県・浜本准
歴史書の隙間に夏の風はさみ三二一頁めくる・・・・・・・神奈川県・永沢優岸
算盤の余分な珠を弾いてしまう狭すぎるんだよ珠の隙間が・・・・・・・徳島県・戸山二三男
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