

──月刊「茶の間」連載──(9)
月刊「茶の間」連載「木村草弥の四季のうた」第九回・・・・・・・・・・木村草弥
ひととせの寒暖雨晴の巡り経て茶の実(さね)熟す白露の季に
厳しい暑さを越えて、ようやく秋めいて来た。
「白露」というのは暦でいう二十四節気の秋を告げる節目で、九月上旬にやって来る。
茶の実というのは、昨年秋に咲いた花が、この歌にあるように一年間をかけて実になる。
これがツバキ科の植物である茶の特徴なのである。
この実が熟すと今年の茶の花が咲き初める。真っ白の香り高い清楚な花だ。
私が茶業に携わるから言うのではなく、誰からも愛される花である。
たはやすく茶の花咲くにあらざらめ酷暑凌(しの)ぎて金色の蘂(しべ)
短歌を詠む場合には、雅な体裁を表すために、こんな凝った表現をする。
「たはやすく」とは「たやすくは」という言葉の言い換えだと受け取ってもらいたい。
ここに言うように、茶の花というのは、白い花に金色の雄しべが映え、気品のある美しい花である。
しかも夏の酷暑の季節を凌いで、凛々しく清楚に咲くのだ。
私は第一歌集『茶の四季』のカバーに、この花の写真を採用した。
仏壇に供ふる花の絶えたりと母は茶花の露けきを挿す
季節の変わり目には、生花にする花が一時的に無くなることがある。
そんなときに母の臨機応変の才能が発揮され、畑から切ってきた茶の花で代用するのであった。
露けしや畑起しせむと分け入れば茶の木の葉末に濡れそぼちたり
この季節は「白露」という節気の言葉にも見られるように、茶の木には、朝になると、しとどに露がつく。
身につける衣服も、たちまち濡れてしまう。そういう状況をこの歌は詠っている。
このようにして秋は次第に深まってゆくのである。
そして、お茶の味が一層おいしく感じられる、好季節となる。
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ここに「秋めいて」と書いたが、もうすぐ「処暑」だというのに、今年は暑くて、ここ二日ほど猛暑日で、この「くそ暑さ」は何だろう。
冷房の部屋を出たり入ったりで体調が悪い。なんだか風邪ぎみである。
老人は風邪には注意しないといけない。肺炎に移行するからである。
ぼやいても仕方がない。 せめて「涼しい」歌でも詠んで、乗り切りたい。
皆さまも、ご自愛を。
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