
白菊に対(むか)ひてをればわが心
しづかなりけり夕茜して・・・・・・・・・・・・・・・・・木村草弥
この歌は私の第二歌集『嘉木』(角川書店)に載るものである。
天武天皇14年(685年)に、初めて菊花の宴が催された。
平安時代には、天皇の前で菊を飾った花瓶を置き、群臣に菊酒を賜る儀式が行われた。
古来、「白菊」が正式の菊とされていると言われる。
菊が皇室の紋章として固定するようになったのは、鎌倉時代に後鳥羽上皇が、この紋様を愛好されたのに始まる。
菊花紋を皇室以外で使用するのを禁じたのは、明治2年のことである。
「白菊」は清楚な感じがして、すがすがしいものである。
以下、白菊を詠んだ句を引く。
白菊のあしたゆふべに古色あり・・・・・・・・飯田蛇笏
大輪の白菊の辺がまづ暮れぬ・・・・・・・・加藤楸邨
菊白く死の髪豊かなるかなし・・・・・・・・橋本多佳子
白菊のまさしくかをる月夜かな・・・・・・・・高橋淡路女
菊白し死にゆく人に血を送る・・・・・・・・相馬遷子
白菊とわれ月光の底に冴ゆ・・・・・・・・桂信子
白菊や暗闇にても帯むすぶ・・・・・・・・加藤知世子
白菊に恍惚と藁かかりけり・・・・・・・・金尾梅の門
白菊や未生以前の渚見ゆ・・・・・・・・佐藤鬼房
一輪の白菊に夜の張りつめし・・・・・・・・大嶽青児
白菊を鏡中にして外出がち・・・・・・・・神尾季羊
白菊や中年の膝崩すまじ・・・・・・・・中村苑子
大名のごとき白菊家にあり・・・・・・・・阿部完市
白菊や波郷一葉忌を隣り・・・・・・・・川畑火川
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