
草むらにみせばやふかく生(お)ひにけり
大きな月ののぼるゆふぐれ・・・・・・・・・・・・・・・木村草弥
この歌は私の第二歌集『嘉木』(角川書店)に載るものである。
今日は「紅葉」を採り上げることにする。
写真①は「みせばや」の紅葉である。ミセバヤは別名を「玉の緒」とも言う。この細かい、丸い葉が薄紅色に紅葉する様子は、あでやかなものである。
「ミセバヤ」については2009/10/06に載せたので参照されたい。
いよいよ11月も終わりになって、いろんな木や草が紅葉の季節を迎える。
写真②は「夏椿」の紅葉である。

ナツツバキというのは「沙羅の木」として梅雨の頃に禅寺などの庭で「落花」を観賞する会が行われる木であるが、もみじの季節には、また美しい紅葉が見られるのである。
緑の季節には落花に儚さを感じ、紅葉の季節には、くれないの葉の散るのを見て、人の世の無常に涙する、という寸法である。
「夏椿」については2009/06/20に載せたので参照されたい。
①と②に、平常は余り見ることの少ない草と木の紅葉を出してみた。
いかがだろうか。
写真③は普通の「カエデモミジ」の紅葉である。

「紅葉」は、また「黄葉」「黄落」とも書く。
京都は紅葉の季節は一年中で一番入洛客の多い時期だが、今年は秋が急速らやってきて、冷たい日々があり、紅葉も順調なようである。
以下、紅葉を詠んだ句を引いて終りたい。
山門に赫つと日浮ぶ紅葉かな・・・・・・・・飯田蛇笏
障子しめて四方の紅葉を感じをり・・・・・・・・星野立子
夜の紅葉沼に燃ゆると湯を落す・・・・・・・・角川源義
紅葉に来文士は文を以て讃へ・・・・・・・・阿波野青畝
近づけば紅葉の艶の身に移る・・・・・・・・沢木欣一
紅葉敷く岩道火伏神のみち・・・・・・・・平畑静塔
すさまじき真闇となりぬ紅葉山・・・・・・・・鷲谷七菜子
やや傾ぐイエスの冠も紅葉す・・・・・・・・有馬朗人
恋ともちがふ紅葉の岸をともにして・・・・・・・・飯島晴子
城あれば戦がありぬ蔦紅葉・・・・・・・・有馬朗人
天辺に蔦行きつけず紅葉せり・・・・・・・・福田甲子雄
黄葉はげし乏しき銭を費ひをり・・・・・・・・石田波郷
黄葉樹林に仲間葬りて鴉鳴く・・・・・・・・・金子兜太
へくそかづらと言はず廃園みな黄葉・・・・・・・・福田蓼汀
黄落や或る悲しみの受話器置く・・・・・・・・平畑静塔
黄落の真只中に逢ひえたり・・・・・・・・・小林康治
黄落や臍美しき観世音・・・・・・・・堀古蝶
ゆりの木は地を頌め讃へ黄落す・・・・・・・・山田みづえ
黄落やいつも短きドイツの雨・・・・・・・・大峯あきら
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