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K-SOHYA POEM BLOG
私のBLOGは詩歌句の「短詩形」文芸に特化して編集している。 今はもう無くなったが、朝日新聞の大岡信「折々のうた」などの体裁を参考にして少し長めの記事を書いている。自作も多めに採り上げている。
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山田兼士『ボードレール・小散文詩 パリの憂愁』・・・木村草弥
山田_NEW

──山田兼士の詩と詩論──(15)

      山田兼士『ボードレール小散文詩パリの憂愁』・・・・・・・・・・・木村草弥
                 ・・・・・思潮社2018/09/30刊・・・・・・・

敬愛する山田兼士先生が長年取り組んで来られた、この翻訳の本が完成し恵贈されてきた。
ネット上のサイトに保存して来られたものの完成形が、この本になっている。
今日「散文詩」というジャンルは定着したと言えるだろう。
私なども拙い散文詩まがいのものを書いたりしている。
西欧だけでなく、中国でいえば「漢詩」として起承転結や平仄で、日本も「詩」と言えば「韻文」として発足した。
西欧詩の場合は、フランス語でいうと「韻文 vers」(リズムと脚韻を伴う様式)のような形を取った。
日本語の場合には言語の特性上、頭韻や脚韻の効果が少ないというので、5 7 5 7 7のような「音数律」でリズムを踏むという詩歌の形式が発達してきた。
俳句、和歌、短歌しかりである。
そういう「形式」から離れて「散文 prose」で書かれる時代の要請があった、ということだろう。
近代から現代になると社会生活も複雑化して、いわば生活が「散文化」してきて、それは文学にも反映して「韻文」の枠に収まりきらないようになった。
ここに散文詩の発生するに至る社会的条件があった、と言えるだろう。

ボードレールは、この散文詩という形式の「提起」によって、文学史の上で、一つの、大きな「エポック」を画した人である。
このボードレールに、山田先生は長年にわたり取り組んでこられたのである。


もとより私は素人の一介の詩歌の製作者に過ぎないので大きなことは言えない。
ここに本書を恵贈されたので、ささやかながら紹介したいと思う。

この本の原題は「Le Spleen de Paris」というが、私の若い頃に目にした翻訳の題名は「憂鬱」であったが、先生は、これは正確ではないとおっしゃる。
「田園の憂鬱」というような文学作品があったり、した。
「Spleen」は「憂愁」という漢語が適当で、憂鬱=メランコリーは不適当、とされる。これは、まっとうな指摘である。
この本は五十篇の散文詩から成るが、一つひとつの作品の後に一段落とした級数の活字で「解説」が付けられる、という画期的な編集方法が採られている。
巻末の解説をつけるというのではなく、こうして一つひとつ掲げてもらうと読みやすく便利である。
スキャナが利かないので短い作品だけを書き写しておく。

 8 犬と香水壜

「──ぼくの美しい犬、善良な犬、可愛いわんちゃん、さあおいで、街で一番の香水屋で買ってきた上等の香水を嗅ぎにおいで。」
 すると犬は、この哀れな生き物たちにとって笑いや微笑に当たる仕種なのだろう、尻尾を振りながら、こちらにやって来て、栓を抜いた壜の上に、そのしめった鼻先を不思議そうに押し付けるのだが、それから、ぞっとしたように突然あとじさりし、私に向かって、非難するように吠えたてるのだ。
「ああ! なさけない犬め、ぼくはおまえに糞のかたまりでもやっていたなら、おまえは大喜びしてそれを嗅ぎ、たぶん貪り食っただろう。それほどまでに、ぼくの哀しい生活の不甲斐ない伴侶であるおまえというやつは、公衆というものに似ていて、微妙な芳香には憤慨するばかりだから与えてはならないし、念入りに選んだ汚物を与えなければならないのだ。」

詩人の民衆蔑視を露骨に表明した作品。微妙な芳香を感得できずにかえってこれに憤慨し、汚物を喜んで受け入れたがる愚かな民衆。  ・・・・・・
詩集巻末の「50 善良な犬たち」とベルギー滞在中に書かれた最晩年の十四行詩「ベルギー人と月」が、詩人最後の自己像であることを考え併せると、本作がこの位置に配されたことの意味は大きい。つまり、巻頭から間もない作品と巻末作品が「問い/答え」の対話(対位法)を構成しているのである。


掲出した画像でも読み取れるかと思うが、この本の「帯」に、編集者が書いた文章が、この本の「要約」として的確である、と言えるだろう。
ここに、ささやかな紹介の文を書いて、先生の長年の労作に報いたい、と思う次第である。
ご苦労さまでした。
ご恵贈に感謝して筆を置く。       (完)


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