
埴輪の目ほんのり笑ふ
土こねし古墳時代の庶民が笑ふ・・・・・・・・・・・・群馬県・熊沢峻
この歌は、角川書店「短歌」十月号の題詠「土」に載るものである。
この歌に照応するものとして、当該画像を引いてみたが、いかがだろうか。
どこの場所からの出土品か知らない。
かなり壊れた状態で出土したらしく、欠けた部分を復元した跡が、なまなましい。
ここには、中西洋子氏選による作品が載っているので、そのうちの、いくつかを引いておく。
手を合はせ祈りしままによみがへる土偶が月の光を宿す・・・・・青森県・木立徹
凍てし土に転びて泣きしわが顔の涙も洟も凍りし大陸・・・・・埼玉県・中門和子
黒土の下層に眠る関東ローム天地返しにさむる万年・・・・・神奈川県・滝沢章
ふるさとの共同墓地の墓じまい土葬の祖母の土を拾いき・・・・・神奈川県・大和嘉章
土の匂ひやがて濃くなる気配あり東南東から雨雲ちかづく・・・・・千葉県・渡辺真佐子
病院のベッドで雨をながめてる氷雨村雨時雨土砂降り・・・・・茨城県・小野瀬寿
緑陰の土のしめりにふり返る夏の夕ぐれ 訪問者はだれ・・・・・茨城県・吉川英治
ひんやりと湿った土に胸をあて蜥蜴のように眠りたき昼・・・・・京都府・山口直美
耕せば畝に蜥蜴のはね上がる目鼻をもたぬ土神様よ・・・・・大阪府・北井美月
南天は小さな白き花散らす泥土に未知の星図ひろげて・・・・・秋田県・長尾洋子
白土の茶碗の欠片累々と久々利荒川豊蔵の庭・・・・・岐阜県・三田村広隆
田には田の一枚一枚名がありき亡母は土の違ひを知りき・・・・・和歌山県・植村美穂子
知らぬ間に更地になった一画の土は初めて夏の風知る・・・・・福岡県・原口萬幸
白蓮の散りたるのちも香りつつ腐れつつ土に還らんとする・・・・・北海道・土肥原悦子
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