FC2ブログ
K-SOHYA POEM BLOG
私のBLOGは詩歌句の「短詩形」文芸に特化して編集している。 今はもう無くなったが、朝日新聞の大岡信「折々のうた」などの体裁を参考にして少し長めの記事を書いている。自作も多めに採り上げている。
201811<<12345678910111213141516171819202122232425262728293031>>201901
島すなみ詩集『移動の記憶』・・・木村草弥
島_NEW

──新・読書ノート──

      島すなみ詩集『移動の記憶』・・・・・・・・・・・・・木村草弥
              ・・・・・澪標2018/05/01刊・・・・・・・

奥付に載る島すなみ氏の略歴は、こんなものである。
1047年 長崎県(現・西海市)に生まれる
2014年 詩集『ホーム・スイート・ホーム』 (編集工房ノア)

「あとがき」によると、2015年春から2018年春にかけて、大阪文学学校に通いながら書いた詩を集めたもの、だという。

「1968年 佐世保港」という作品がある。
 それは、作者が「無数の離散・移動経験とつなげながら、わたしの今を確認する」作業の継続のためである、いう。
前詩集からの「再録」というのは「針を孕む女たち」という韓国の「従軍慰安婦」の戦場への移動を主題としているという。
ここに改めて引くことはしないが、そのように作者は社会的な事象に敏感なのである。
大阪文学学校の文芸誌「樹林」でも、反戦詩の特集を組んだりしたらしい。
これは、今の若い女性にはない「社会性」として尊重したいものである。
この本を通じて作者が訴えることは、図版でも読むことができると思うが、カバーの「帯」にチューターの高田文月氏が要約していることに尽きると思う。
つまり「移動」というキーワードである。
このことを把握すると、この詩集を読むことが容易であろう。

       おみやげ

   二つ三つ拾って
   リュックに入れた
   林道の松ぼっくりや
   浜辺の貝殻のよう

   旅の土産に気安く
   持って帰れるものではない
   那覇空港の手荷物X線検査で
   あえなく引っかかる

   「お客様
   これは機内には持ち込めません
   どちらで手に入れたものですか?」
   わたしは笑顔をつくり
   「山道で拾いました
   ネックレスにでもしようと思って」
   手荷物検査スタッフは真顔
   「そんなふうに加工できたら
   よかったのですが」

   標的の村に張りめぐらされた
   立ち入り禁止のフェンスの外側
   無造作に散乱していた
   カラ薬莢

   後始末なんて
   どこ吹く風!

   実弾ではないが
   持ち込み禁止の危険物
   大量に生産消費され
   再利用不可能
----------------------------------------------------------------------
この詩は、作者が持ち込もうとしたのではなく、そういう風潮を見聞して「批判的に」作品化したものと思われ、秀逸である。

作者の拘る「移動」とは離れるかもしれないが、作者が学んだという大阪文学学校のある谷町六丁目を詠んだ詩を引いておく。

     赤い十字架

   地下鉄「谷町六丁目」で降りて地上に上がる

   谷町筋と空堀商店街の交差点を過ぎると
   うどん屋の隣りに大阪文学学校の看板が目に入る
   「ひとはだれでも一冊の本になれる」

   ひと息入れて
   大通りをへだてた向い側のビルを見上げると
   壁に「〇〇教会」の太い文字
   てっぺんには赤い十字架!

   日本で見慣れた教会の白い十字架ではない
   だが、れっきとした教会の看板
   商店街に並ぶタコ焼き屋や居酒屋の
   赤ちょうちんにも引けをとらない

   ふとソウルの夜景を思い出す
   南山公園から見下ろすと
   市内いたるところに赤い十字架
   ネオンのようなあざやかさ

   なぜ赤いのか?
   友が言うように
   おびただしい血を吸いこんだ地の
   抑え込まれた記憶の残映か

   彼女は天使になってソウルの夜空を飛び回り
   赤い十字架の上に塩を撒く夢を見た

       ・・・・・・

   赤い火
---------------------------------------------------------------------------
日本帝国主義の犯した植民地支配の負の遺産に対する韓国人の「恨ハン」の表現として受容したい。
このように作者の詩は、鋭い社会性を多分に孕んだものである。
その意味で、島すなみ氏は特異な現代詩人と言えるだろう。
不十分ながら鑑賞の筆を置きたい。         (完)




   
コメント
コメント
コメントの投稿

管理者にだけ表示を許可する
トラックバック
トラックバック URL
トラックバック
copyright © 2018 Powered By FC2ブログ allrights reserved.