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K-SOHYA POEM BLOG
私のBLOGは詩歌句の「短詩形」文芸に特化して編集している。 今はもう無くなったが、朝日新聞の大岡信「折々のうた」などの体裁を参考にして少し長めの記事を書いている。自作も多めに採り上げている。
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詩・奈々子に・・・吉野弘
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 ↑  岩崎書店  2009/12/19刊

──吉野弘の詩──(5)

      奈々子に・・・・・・・・・・・吉野弘

    赤い林檎の頬をして
   眠っている 奈々子

   お前のお母さんの頬の赤さは
   そっくり
   奈々子の頬にいってしまって
    ひところのお母さんの
   つややかな頬は少し青ざめた
    お父さんにもちょっと
   酸っぱい思いがふえた

   唐突だが
   奈々子
   お父さんは お前に
   多くを期待しないだろう
    ひとが
    ほかからの期待に応えようとして
   どんなに
   自分を駄目にしてしまうか
   お父さんは
    はっきり
   知ってしまったから

   お父さんが
   お前にあげたいものは
   健康と
   自分を愛する心だ

    ひとが
    ひとでなくなるのは
   自分を愛することをやめるときだ

   自分を愛することをやめるとき
   ひとは
   他人を愛することをやめ
   世界を見失ってしまう

   自分があるとき
   他人があり
   世界がある

    お父さんにも
    お母さんにも
   酸っぱい苦労が増えた
   苦労は
   今は
    お前にあげられない

    お前にあげたいものは
   香りのよい健康と
    かちとるにむづかしく
    はぐくむにむづかしい
   自分を愛する心だ
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この詩は、国語の教科書にも採り上げられて、娘の奈々子は、自分の学校の教科書には載らないのを希望したという。
幸い、違う教科書が採用されて安心したというエピソードがあるらしい。
これも有名な、よく知られた作品である。



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