
──高島茂の句──再掲載・初出2009/04/21
急傾斜地崩壊危険蒲公英黄・・・・・・・・・・・・・・・・高島茂
■麦掛けて海の墓群あかるうす・・・・・・・・・・・・・・高島茂
■つつぢ燃ゆいつ狂ふても不思議なし・・・・・・・・・・・高島茂
■青蛙吸盤白く泳ぎけり・・・・・・・・・・・・・・・・・・・高島茂
2008年四月下旬、私の詩集『免疫系』の出版の打ち合わせのために上京した際に新宿西口の居酒屋「ボルガ」で、此処ゆかりの俳人の高島征夫氏と初めてお会いした。
語り口も爽やかな俳句結社「獐のろ」の主宰にふさわしい人だった。うち揃ったDoblogの友や装丁家・岸顕樹郎氏などとの話も面白かった。
その際、私は『嬬恋』を持参して一冊、名刺代わりに進呈したが、高島氏からはお父上・高島茂の遺句集『ぼるが』(平成12年・卯辰山文庫刊)をいただいた。
なお「高島茂」については何度も書いたが、リンクに貼ったところなどを読んでもらいたい。
いただいた句集『ぼるが』は平成11年8月3日に死去されるまで、平成元年からの俳句総合誌、結社誌、主宰誌などに発表されたすべての作品を高島征夫氏がまとめられたものである。

掲出した句集の「ぼるが」の文字は茂の筆跡から起こしたものである。
なお原文は漢字は「正」字体を採用されているのだが、私の勝手で新字体にさせてもらったので、ご了承いただきたい。
掲出句「急傾斜地崩壊危険蒲公英黄」は漢字ばかりを並べたものだが、これも「俳句」である。
下句は「たんぽぽ・き」と訓(よ)む。
ときたま、こういう句作りをなされているのを見かけるので、注意して観察されるといい。
例えば、こんな句がある。
<花辛夷月夜越前一乗谷・・・・・・・・倉橋羊村>
以下、ただいまの季節にまつわる句をいくつか引く。
急傾斜地崩壊危険蒲公英黄
青猫といふ紙あらば詩を書かむ
佐伯祐三のたましひの絵と五月は遇ふ
植田の水たつぷり畦にあやめ咲く
謎めきて新緑の山深まれる
をとこをんな宴のごとし田を植ゑる
かつと晴れ植ゑしばかりの稲の縞
新緑の鉄柵朱し雪崩止
お鷹ぽつぽすつくと五月の風を呼ぶ
星またたき蛾の吹入りし野天風呂
杉山の幽し萌えたつ羊歯を見よ
戦争の終らぬままに葱坊主
分校の生徒は五人金魚飼ふ
葱坊主木曾の石仏小さくて
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この句集に載る高島茂の写真である。
この句集に載るものは季節は一年にわたっているので、あとのものは、また季節の都度載せたい。
抽出した句については、特別に批評のコメントは書かないが、抽出すること自体が私の批評であることをお察しいただきたい。特に、冒頭に引いた三句は、趣き深い。
ご恵贈に厚く感謝申し上げる。
これを贈呈して下さった高島征夫氏も2009年に死去されて今は、もう亡い。嗚呼!
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