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K-SOHYA POEM BLOG
私のBLOGは詩歌句の「短詩形」文芸に特化して編集している。 今はもう無くなったが、朝日新聞の大岡信「折々のうた」などの体裁を参考にして少し長めの記事を書いている。自作も多めに採り上げている。
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山田兼士詩集『孫の手詩集』・・・木村草弥
孫の手_NEW

──山田兼士の詩と詩論──(18)

      山田兼士詩集『孫の手詩集』・・・・・・・・・・・・木村草弥
               ・・・・・澪標2019/06/02刊・・・・・・・・

畏敬する山田先生が、標記の本を出された。
文字通り「孫」を詠んだ詩─娘さんが生んだ「ハル」という男の孫を詠んだ21篇の短詩から成る。
「ハル」というから女の子かと思うところだが、どうやら「ハル」というのは、この子の名前に因む「愛称」らしい。
嫁いだ娘さんの生んだ子、つまり「外孫」である。
横浜に住んでいて、毎日LINEで写真が送られて来る、という。
短歌の世界では「孫の歌は詠うな」と言われているが、「詩」の世界では、たくさんあるらしい。寡聞にして私は知らなかった。
さすがにフランス文学に精通した山田先生だけあって、この本に書かれている。

<孫のことを書いた詩はこれまでにもたくさんありますが、一冊がまるごと孫の詩というのは、私にはヴィクトル・ユゴー『祖父たる術』と金子光晴『若葉のうた』ぐらいしか思いうかびません。>

この本には、一冊そっくりではないが、孫を詠った詩が「前書き」や「挿入」の形で載っている。
谷川俊太郎、梶井基次郎、シュペルヴィエル、などである。

少し詩を引いてみよう。

      春の帰還       山田兼士

   三月 一七〇〇グラムで生まれ
   六月 四〇〇〇グラムで巣立って行ったハル
   八月 六〇〇〇グラムになって帰ってきた
   やあ大きくなったなあ
   と呼びかけたら ほほえむ
   と思ったのに 号泣された。

   ボードレールの善良な老婆なら
   絶望に泣くところだが
   二十一世紀の祖父はがまん強い
   しばらく遠目で目配せしあって
   一時間後には抱きあげていた
   おたがい 緊張気味ではあったが。

   十一月 木枯らしが吹いた
   明日はハルが
   三か月ぶりに帰ってくる
   体重計を用意して
   小春日和を
   待ち構えている祖父である。


       はるのたんじょうび      山田兼士

   おじいちゃんが ておしぐるまと
   えほんを おくってくれたよ
   たんじょうびの ぷれぜんとだって

   ておしぐるまは じきにおせるようになったよ
   あるくのにべんりだって すぐわかった
   えほんには 手のえがたくさんあって
   おかあさんは しゃしん? だっていうけれど
   ぼくの手ににてるのも にてないのもあって
   ずいぶんちいさな手もあるよ

         ・・・・・・

   はやくはなせるようになりたいな
   字もおぼえたいな
   ておしぐるまなしで
   あるけるようになりたいな
   はるはきょう 一さいになりました

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後の詩が巻末に載るものである。
予定より六週間も早く、早産の未熟児で生まれた孫なので、心配はらはら。
それだけに可愛いくて仕方がないのであろう。
この本に挿入される写真も、すべて山田先生によるという徹底ぶりである。その写真も、ぼかしてあってカット風で好ましい。
いかにも現代らしく、スマホやら、LINEやらを駆使した、でれでれの「おじいちゃん」丸出しの、微笑ましい一冊である。

ご存じのように、西欧詩の「ソネット」は、一篇が、4 4 3 3、または4 4 4 2 の行分けによって書かれる。
これは国によって違いがあるからだが、今回の詩の三分の一くらいが、見事なソネットになっていることを指摘しておきたい。

ご恵贈に感謝して紹介を終わりたい。六月の今では、 もう「歩き」だしたのではないか。    (完)


    

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