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K-SOHYA POEM BLOG
私のBLOGは詩歌句の「短詩形」文芸に特化して編集している。 今はもう無くなったが、朝日新聞の大岡信「折々のうた」などの体裁を参考にして少し長めの記事を書いている。自作も多めに採り上げている。
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根来眞知子詩集『雨を見ている』・・・木村草弥
根来_NEW

       根来眞知子詩集『雨を見ている』・・・・・・・・・・・・・木村草弥
                   ・・・・・・澪標2019/08/20刊・・・・・・・・

この詩集が贈られてきた。
この作者の名前には記憶があったので、私のブログを調べてみたら、あった。
はじめに書いておく。
日本詩歌紀行2.『滋賀・京都 詩歌紀行』という本(著者・日本詩歌句協会、発売・北溟社)というのがあった。 名前の通り、詩・歌・句の地名によるアンソロジーである。
私も要請があって3首の歌が載っている。
その中の「怖いもんって」という愉快な詩を2013/01/09に載せたことがあった。
ただ根来さんの名前「眞知子」を「真知子」と誤記していることをお詫びしたい。

根来眞知子さんは1941年生まれ。
京都市在住。
大阪大学文学部卒業。大阪文学学校23期生。
福中都生子「ポエム」から詩誌「叢生」を経て、現在は「現代京都詩話会」所属。
詩集『ささやかな形見』 『乾いた季節』 『夜の底で』 『私的博物誌』 『たずね猫』

この本の「あとがき」に、こう書かれている。
<私が第一詩集「ささやかな形見」を出版したのは詩誌「ポエム」(福中都生子主宰)に参加していた独身だった頃。
 昨年末にすみくらまりこさんのJUNPAから復刻版が出版されて、奥付の一九六六年刊という年号にいささか感銘を受けました。
 ・・・・・長い年月そんなにも詩のことを思っていても、詩の方は一瞥もくれないという時期もあり。・・・・・>

そういう長い詩とかかわった時間を持つ著者である。
根来さんの詩は平易で分かりやすい。
現代詩の、難しくて何が書いてあるのか、さっぱり判らない詩とは大違いである。
作品を引いてみよう。 まず、この本の題名が採られている作品である。

       雨を見ている       根来眞知子  

   私は雨を見ている
   降るとも見えぬ細かな雨
   私はその雨に濡れている庭を見ている
   草や木や石を

   まだ寒かったとき
   ほつほつ咲いて
   春の息吹を感じさせてくれた黄色い花
   蝋梅 連翹
   今見ればどの樹も皆緑濃い

   うっとりするピンクで
   大勢の人を驚かせ楽しませたしだれ桜
   これも今は幾筋もの
   緑濃い枝が滝のように垂れている

   濡れる飛び石のまわりの苔も
   しっとりふくらみ
   いまこの庭は
   次の季節に移ろうとしている

   思ってみる
   ゆっくり確実に
   いくつもの芽生え
   いくつもの成育
   そしていくつもの終焉
   この庭にも回ってゆく時

   うかつにあわただしく過ごせば
   気付かぬ季節の優しさ
   雨が光らせ風が動かす
   闌けてゆく季節の息吹

   私は雨を見ている
   雨に濡れていく庭の
   移ろう時を見ている
------------------------------------------------------------------------
少し長いが全部引いてみた。
題名に採っただけあって、この一連は根来さんにとって愛着があるのだろう。
ご覧のように、極めて平易で、何の難しいところもない。
この詩集一巻の様子は、ほぼ、こんな調子である。
この本は Ⅰ Ⅱ Ⅲ という章建てになっているが章名は無い。だから、いつ頃の作品で、製作時期の前後なども一切わからない。

今の季節に合わせて、こんな作品を引いてみよう。

        八月       根来眞知子

   そろそろお盆の用意をという頃に
   ふと思い出す一枚の古びた写真
   今はない父の生家の仏壇の上
   戦闘帽をかぷった若者
   南方で戦死したとだけ知っていた父の弟
   貧しい暮らしだったあの頃

       ・・・・・・・

   太平洋戦争の戦死者三百万人
   多くは戦死や病死 また玉砕という自殺であった
   と 知った時のやりばのない怒り
   二十歳そこそこの健康体だった叔父もまた

         ・・・・・・・

   戦争という愚かしさの激流に
   いやおうなくまきこまれていった叔父の無念
   そしてたくさんの若い兵士たちの無念
   が 立ちのぼる八月
   いやな月だ

           思い出     根来眞知子

   たっぷり水を湛えた池の底から
   ふつふつわく泡のように
   何の変哲もない土の中から
   ほつほつ現れる芽のように

   胸の奥深くから
   現れては消えまた現れ
   あっちにひっかかり
   こっちにたまり
   時にふと気に掛かる

   あれもこれも忘れに忘れたのに
   いまだに消えず残っている
   いとしいようなあれ
   とまどうようなあれ

   思い出ってやつは
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引いてみると、キリがないので、後ひとつ、今年の厳しい暑さを乗り越えるために、こんな詩を引いて終わる。 

            夏よ      根来眞知子 

   空が高くなり
   雲が薄くなり
   陽が穏やかになり

   寝付きが楽でぐっすり眠れて
   朝から体も良く動き
   そうだ
   爽やかな季節が戻ってくるのだ
   と気づくうれしさ
   さあ張り切ってみるかと一人つぷやく

   去りゆこうとしている
   夏よ
   おまえはいつからそこまで
   過酷な季節になったのだ
   焼かれるような暑さ それも連日
   たたきつけて降る雨 それも集中的に
   巨大台風の猛威 それもいくつも

        ・・・・・・・・

   肩をいからせるように去りゆく夏よ
          ・・・・・・・・

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まだ今年の夏は終わってはいない。
ヒロシマとナガサキの原爆への鎮魂の夏。
敗戦の日々の思い出の夏。
内外の為政者の「身勝手な」振舞いに対する「怒り」も、ふつふつと湧いてくるが、今日は根来さんの本を読んで、それらを、ぐっと抑えたい。
ご恵贈有難うございました。
私ほど老齢ではないが、もはや若くはないので御身ご自愛ください。        (完)



       
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