
↑ オータンの街の俯瞰

↑ オータン サンラザール大聖堂

↑ 西正面扉口のタンパン「最後の審判」1135年頃

↑ サンラザール大聖堂・展示室にある「眠るマギヘのお告げ」

↑ ロラン美術館にある「エヴァ」1120~1135年頃
──巡礼の旅──(18)再掲載・初出2013/09/12
オータン「サン・ラザール大聖堂」・・・・・・・・・・・・・木村草弥
オータン(仏: Autun)はブルゴーニュ地域圏ソーヌ=エ=ロワール県にある都市。オータンの住民はオーチュノワ(仏: Autunois)と呼ばれる。
オータンは歴史ある都市で、紀元前1世紀ごろにローマ帝国の初代皇帝、アウグストゥスの勅許によって建設された。
当時の名称はアウグストドゥヌム(Augustodunum, アウグストゥスの砦、の意)であり、現在の市名はこれが転訛したものである。
ナポレオン・ボナパルトと兄ジョゼフはこの地のリセの出身である(そのリセは現存する)。
1788年-1790年にかけては、シャルル・モーリス・ド・タレーラン=ペリゴールがこの都市の司教であった。
2002年の2月にはユルスリーヌ国際文化センターが開設されている。
サン・ラザールとは、「マグダラのマリア」の兄弟で、キリストが蘇生させたラザロのことである。
ここは、そのラザロの遺骨を祀っている。
この遺骨はアヴァロンにある同名の聖堂から盗まれたもので、当時はよくあったことだと言われている。
オータンにはかつて古代ローマの都市があり、遺跡も多い。
大聖堂の建築も古代ローマの遺跡を参考にしたと言われている。
ここでは建物よりも「彫刻」に注目したい。
主なものは冒頭に、続けて画像を出しておいた。
二番目に出した、西正面扉口のタンパン「最後の審判」1135年頃の彫刻だが、その中央に置かれる大きなキリストの足元に「ジルベルトゥスがこれを作った」という言葉が彫られている。
これは建築家であり彫刻家でもあった人物の署名と考えられている。
この世界の終わりにキリストが再び天から降臨し、すべての死者が蘇って裁きを受ける場面で、向かって左に天国、右に地獄が配される。
キリストのすぐ右では大きな天秤で死者の魂が計量され、天使と悪魔が「魂」を鑑定する。
賢明な読者であれば勘付かれると思うが、この「秤」というのは古代エジプト起源であり、それは十字架のイメージとともにキリスト教の中に入り込んできたものである。
また、それらの計量をめぐって聖ミカエルが悪魔と対峙しているが、後者の足首には蛇がまきついているのは「堕落の誘惑」を象徴する。
三番目に出した「眠るマギへのお告げ」では、クレープのような布団に包まれ一緒に裸で眠る東方からやってきた博士たちの一人の手に、天使が指先でそっと触れて、ヘロデ王のもとに帰らず別の道で帰るようにお告げをする。一人目覚めたマギの目は何を見ているのだろうか。
四番目の「エヴァ」の像は、かつて大聖堂の北扉口にあった浮彫の断片である。
左手で智恵の木の実をつかみ、右手を口に当て、今は失われたアダムに囁きかけている。智恵の木の枝には、これも失われた悪魔の爪が残る。
よく知られた『原罪』の場面である。エヴァの泳ぐような体勢は、横長の枠に彫られたというせいでもあるが、罪を犯した彼女が示す「悔い改め」の身振りでもある。
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私の短歌の作品の連作に「エッサイの樹」という一連があるが、これは、この教会の見聞を元にしている。
参照されたい。
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