
几帳面な玉蜀黍だと思はないか・・・・・・・・・・・・・・・櫂未知子
トウモロコシは高さ2メートル程に伸び、夏の終りに茎の上に芒の穂のような雄花を咲かせ、葉腋に雌花穂をつける。
雌しべに花粉がつくと稔って、雌しべ穂は茶褐色の毛のように苞の先端に残る。
『和漢三才図会』には「蛮舶将来す。よつて南蛮黍と称す。その形状、上に説くところははなはだ詳らかなり。ただし、苞の上に鬚を出だす。赤黒色にして長さ四五寸、刻煙草に似たり。その子(み)、八月黄熟す」と記述しており、特徴をよく捉えている。
夏の終りの時期の北海道の名物で、実を焼いて露店などで売る秋の味覚の風物詩である。
写真①は畑の状態である。原産地はアメリカ大陸である。インカの民は、これを主要な食料源としている。

写真③は畑の状態だが、実の鬚が上端からはみ出ているのが見られるだろう。

この頃では実を採取するのが目的でなく、茎と葉を家畜の飼料として刈り込む品種のものもあるようだ。これを「デントコーン」という。
北海道に行くと、よく見られる。
家畜を養うには莫大な量の飼料が必要で、トウモロコシのほかに麦なども配合飼料として使われる。
日本は家畜用の配合飼料の完全な輸入国で、殆どをアメリカに依存している。
考えてみるとアメリカ大陸由来の植物が多い。ジャガイモ、トマトなどもアメリカ原産である。
昔はヨーロッパでは冷害による飢饉に瀕していたが、救荒作物としてのジャガイモの到来によって救われた、という。
掲出の櫂未知子の句は、きっちりと並んだ実の粒の様子を見事に捉えていて秀逸である。
以下、トウモロコシを詠んだ句を引いて終わりにする。
もろこしを焼くひたすらになりてゐし・・・・・・・・中村汀女
唐黍の影を横たふ舟路かな・・・・・・・・水原秋桜子
唐黍の葉も横雲も吹き流れ・・・・・・・・富安風生
唐黍やほどろと枯るる日のにほひ・・・・・・・・芥川龍之介
もろこしを焼いて女房等おめえ、おら・・・・・・・・富安風生
貧農の軒たうもろこし石の硬さ・・・・・・・・西東三鬼
唐黍焼く母子わが亡き後の如し・・・・・・・・石田波郷
海峡を焦がしとうもろこしを焼く・・・・・・・・三谷昭
唐もろこし焼く火をあふり祭の夜・・・・・・・・菖蒲あや
充実せる玉蜀黍を切に焼く・・・・・・・・本田青棗
中腰の唐黍焼きに昔あり・・・・・・・・石川桂郎
雷の遠く去りたる唐黍をもぐ・・・・・・・・横山丁々
唐黍と学生帽と一つ釘・・・・・・・・上野鴻城
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