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K-SOHYA POEM BLOG
私のBLOGは詩歌句の「短詩形」文芸に特化して編集している。 今はもう無くなったが、朝日新聞の大岡信「折々のうた」などの体裁を参考にして少し長めの記事を書いている。自作も多めに採り上げている。
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松林尚志句集『山法師』・・・木村草弥
松林_NEW

──新・読書ノート──

       松林尚志句集『山法師』・・・・・・・・・・・・・木村草弥
                ・・・・・・ふらんす堂2019/09/25刊・・・・・・・・・

この本が恵贈されてきた。松林氏については、このブログで何度か書いてきた。
松林尚志というのは、こういう人である。  ↓
 
1930年 長野県生まれ。慶應義塾大学経済学部卒業。
現代俳句協会、現代詩人会 各会員。
俳誌「木魂」代表、「海程」同人。
著書
句集 『方舟』 1966 暖流発行所 
    『冬日の藁』 2009 角川書店
詩集 『木魂集』 1983 書肆季節社 他
評論 『古典と正統 伝統詩論の解明』 1964 星書房
    『日本の韻律 五音と七音の詩学』 1996 花神社
    『子規の俳句・虚子の俳句』 2002 花神社
    『現代秀句 昭和二十年代以降の精鋭たち』 2005 沖積舎
    『斎藤茂吉論 歌にたどる巨大な抒情的自我』 2006 北宋社
    『芭蕉から蕪村へ』 2007 角川学芸出版
    『桃青から芭蕉へ 詩人の誕生』 2013 鳥影社
    『和歌と王朝』 2015 鳥影社 
    『一茶を読む やけ土の浄土』 2018  鳥影社   他

私が松林氏を知るきっかけになったのは 『日本の韻律 五音と七音の詩学』 の本を読んで「新短歌」誌に小文を書いたことによる。
この本が出たのが1996年であり、まだ私はブログをやっていなかったので、私の文章を今ここに引くことが出来ないのだが、以後、御著を恵贈されたりして今に至っている。

この本は主宰される俳誌「こだま」その他に載ったものを一冊にまとめられたのである。
略歴にも書かれているように兜太主宰「海程」にも籍を置かれていたようである。
その兜太も亡くなって、手元にある句を世に出す気持になられたようである。

先ず、この記事 →  「大井恒行の日日彼是」を読んでみていただきたい。

見出しになっている「汗冷める老人に席譲られて」の句は巻末の「平成二十九年・三十年」のところに載っている。
大井氏のサイトには金子兜太のこと、朝日俳壇の選者として金子の後任に高山れおな、が就任してことなどが引かれている。
私も高山れおな、のことは、このブログに載せたことがあるので親近感を持って読んだ。

松林氏は私と同じ年の生まれで、「目下は終活の日々です」と年賀状に書かれる状態で、私も同様の心境である。
子供たちが文芸には縁がないので、私が死んだら膨大な量の本も屑になってしまうので昨年、日本現代詩歌文学館などに蔵書を寄贈して書架は、からっぽになった。

前書きが長くなったので、そろそろ句集を見てみよう。
「あとがき」に

<前句集『冬日の藁』を出したのは平成二十一年で、そこには平成十四年までの句を集めている。
 ・・・・・平成十五年以降の句をまとめることとした。・・・・・ともかく705句をまとめることが出来た。
 ・・・・・私は詩を読むことから俳句へ入っており、無季を容認した滝春一先生のもとで学び、
 また金子兜太さんの「海程」にも加わって歩んできた。
 ・・・・・俳句も詩歌の一端を担うとすれば、やはり思いを陳べる表現志向も底流している筈である。
 ・・・・・兜太さんは、季語がなければならないと言った覚えはないとの言葉を残しており、最後の九句には無季の句が四句あった。・・・・・
 外題の「山法師」は、我が家の前に並木があり、初夏の季節になると清楚な白い花を咲かせ、
 ・・・・・この集には山法師を詠んだ句を幾つか載せている。そんなことから迷わず決めた。・・・・・>

と書かれている。煩を厭わず引いてみた。 では、私の目に止まった句を引く、

平成十五年・十六年
     *暖かさうなマダム羊が初夢に
     *冬桜耿之介書の独歩の詩
     *青山二丁目風縦横に茂吉の忌
     *森は若葉縄文土器と詩人のペン      村野四郎記念館
     *さかしらの猿も頬染む年酒かな
     *烏骨鶏梅より白し城守る           小田原城 
     *リュックには餡パン一つ山法師
     *一棒を食らひて海鼠涙せり

平成十七年・十八年
     *鶏鳴に覚めし初夢しばし追ふ
     *果汁壜残せし人の春逝けり          悼 伊藤陸郎氏
     *仮面土偶は蟷螂の貌ばつた飛ぶ
     *寒すばる金輪際をしやがむ君
     *芽木そろひ柔軟体操風まかせ
     *アイネクライネナハトムジーク柿若葉
     *弱冠にして若干は鶴の性
     *寒星をみしみし踏んで大熊座

平成十九年・二十年
     *花曇握り返さるる手に力
     *ベンチ三つ老人三人蝌蚪の紐
     *地の果てに灯台ありと来しが芒         銚子吟行
     *一月やはつしはつしと冬木の芽
     *虫眼鏡虫の目玉に睨まれぬ
     *寒禽のぎやーていぎやーてい鳴き去るも

平成二十一年・二十二年
     *指添へる弥勒の思案春の地震
     *会釈して去りしその笑み梅に浮く        悼 阿部完一氏
     *梅雨深し管を巻かれて磔に
     *寒の夜景眼にちりばめて高階に         傘寿を迎へし日
     *蛇泳ぐ池しなやかにめぐる女
     *さはやかや兜太に活を入れられて

平成二十三年・二十四年
     *雪のせて笑みおほどかや石仏
     *根こそぎの魔王の津波迫り迫る          東日本大震災
     *花終はり毛虫一匹宙ぶらりん
     *来春のことを話せり病む兜太と
     *洗はれて河床の石の聡き冬

平成二十五年・二十六年
     *気を楽にせよと声あり恵方神
     *起き上がり小法師のんのん春愁ひ
     *まぼろしの学徒の軍靴聴く寒夜
     *晩年は素のままがよし山法師

平成二十七年・二十八年
     *痛切に句を吐き逝けり冬の蝶          上間月吐氏を悼む
     *虫は蝶へザムザ氏は虫に変身す
     *原節子より智衆思へり花馬酔木          鎌倉
     *たひらげし秋刀魚の骨のきれいなり
     *冬晴れや無一物即無尽蔵

平成二十九年・三十年
     *冬灯尼僧の青き頭も光り
     *卒寿二人身近に逝きて春深し
     *陽炎や「折々のうた」幾年経し           大岡信氏逝去
     *寒卵コツンと割れておてんと様
     *青鮫の去りにし庭か梅白し             金子兜太師逝去
     
「帯」裏には「自選十五句」が載っているが、そこには収録されていない句を選んだ。
最近は「ただごと句」のような作品が多いが、私は俳句は作らないが、松林氏のような、こういうブッキッシュな、教養的な句づくりが好きである。
なにぶん句の数が多いので佳句を見落としたかも知れない。
雑駁な鑑賞に終始したことをお詫びする。 有難うございました。    (完)



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