
真実とはいかなる象(かたち)なすものか
檀(まゆみ)のまろき実くれなゐ深く・・・・・・・・・・・・・・木村草弥
この歌は私の第四歌集『嬬恋』(角川書店)に載せたもので2003年10月に開いてもらった出版記念会で光本恵子氏が採り上げていただいた歌である。
自選60首にも入れているので、出版記念会の光本氏の批評とともにWeb上でもご覧いただける。
この歌につづいて次の歌が並んでいる。
<生るは青く、熟すれば淡紅、裂ければ内に紅子三四粒>と檀を記す
*和漢三才図会
秋くればくれなゐ深く色づきて檀の喬木山をいろどる
檀(まゆみ)は錦木(ニシキギ)科の種類で、ヤマニシキギという。
学名をEuorymus Sieboldianus というが、ここにもシーボルトの名前が見え、シーボルトの命名か分類によるものと思われる。
写真②は春に花が咲いたところである。

「檀」というのは「真」「弓」の意味であって、すなわち弓をつくるのに最適の有用な木、ということである。信州などの寒い地方にも育ち、木目の緻密な木質なのであろうか。
光本氏の家の庭にも、この木があり寒くなると彩りが鮮やかだと話された。

写真③は外皮から赤い実が頭を見せたところ。場所によって違いはあるが、10月頃のことである。
私の二番目の歌に描いたのが、丁度その頃と言える。
「マユミ」は園芸用の栽培種でもなく一般的には、余り知られていない木といえようか。
写真は掲げないが「ウメモドキ」という木があり、上に引いた歌のつづきに、次の歌が載っている。
伊賀人の誇り高きぞ梅もどきのほてりの艶(ゑん)あり榊莫山邸
ウメモドキはモチノキ科の木で学名を Ilex serrata というが雌雄異株だという。
先に引用した「和漢三才図会」の文章のつづきには「・・・・その葉、秋に至りて紅なり」と書かれている。
マユミを詠った句を少し引いて終る。
檀の実割れて山脈ひかり出す・・・・・・・・福田甲子雄
檀の実圧し来る如く天蒼し・・・・・・・・望月たかし
真弓の実華やぐ裏に湖さわぐ・・・・・・・・杉山岳陽
檀の実まぶしき母に随へり・・・・・・・・岸田稚魚
日の逃げて風のみ急ぐ檀の実・・・・・・・・太田秦樹
旅にをり旅の日和の檀の実・・・・・・・・森澄雄
大工老いたり檀の実ばかり見て・・・・・・・・六角文夫
まゆみの実寄りくるものをいとほしむ・・・・・・・・きくちつねこ
檀の実ひそかに裂けし月夜かな・・・・・・・・菅原鬨也
西の山人居てまゆみの実を握る・・・・・・・・金子兜太
舞妓ゐて外にぎやかや檀の実・・・・・・・・渡辺純枝
ほほゑみを分かちたくなる檀の実・・・・・・・・平林孝子
泣きべそのままの笑顔よ檀の実・・・・・・・・浜田正把
岩峰に雲触れ流れ檀の実・・・・・・・・石原栄子
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